ライノウイルス:風邪ウイルス2倍 「ライノ」 10歳未満感染リスク
その他 2021年3月27日 (土)配信毎日新聞社
新型コロナウイルスの流行下で、風邪の原因となる「ライノウイルス」の感染リスクが10歳未満の子どもの間で例年の2倍以上に上昇したと、河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)らの研究チームが発表した。コロナ対策でインフルエンザの感染が減ったことが影響したと考えられるという。
ライノウイルスは鼻や喉などの上気道に炎症を起こすウイルス。肺炎などの合併症で重症化する場合もある。研究チームは2018年1月~20年9月、横浜市の医療機関で採取された新型コロナ以外の呼吸器疾患患者2244人(うち10歳未満1119人)の検体を解析し呼吸器疾患を起こすウイルスについて調べた。
その結果、横浜市で20年2月に新型コロナの感染者が報告されて以降、10歳未満の子どもからインフルエンザウイルスはほとんど検出されなかったが、ライノウイルスの検出率は例年の2倍以上だった。10歳以上ではいずれのウイルスも検出率が低下した。
一般的に、あるウイルスに感染すると、免疫が活性化して別のウイルスに感染しづらくなるため、インフルエンザ流行時期にはライノウイルス感染が少ない傾向がある。チームの高下恵美・国立感染症研究所主任研究官(ウイルス学)は「新型コロナ感染対策によってインフルエンザが流行しにくくなり、結果的にライノウイルスに感染しやすい環境が整った。特に幼い子どもはライノウイルスへの免疫がないために、感染しやすいと考えられる」としている。
新型コロナやインフルエンザはウイルスの表面に「エンベロープ」と呼ばれる脂質でできた膜があり、アルコール消毒液などで壊れて不活化しやすいが、ライノウイルスはエンベロープを持たず、アルコール液が効きにくいという。高下主任研究官は「せっけんを使った手洗いはライノウイルスにも有効だ。子どもを感染から守るためにも、アルコール消毒に加えて十分な手洗いを心がけてほしい」と話す。【岩崎歩】