温泉クンの旅日記

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大津、あがり家(2)

2017-04-12 | 食べある記
  <大津、あがり家(2)>

 近江は、一概に接客がものすごくいい。
「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」は近江商人の信条である。
 長浜にB&Bで泊まったときに、夕方いったちょっと綺麗な居酒屋に入っていったら、申し訳ありませんが予約客でいっぱいですと断られた。それは残念、と出ていこうとする背中に、「お客さま、七時半からの予約席がありますのでその時間までよろしいようであればご用意しますが・・・」と、憎いというか嬉しい提案をしてくれたことが忘れられない。

「この店に来るのは十年ぶりくらいになるかなあ・・・」
 鯛の旨い刺身で一杯やっているうち気分がほぐれて、つい声をかけてしまう。



 瞬間、てきぱきと仕込みをしているマスターと、奥の厨房からわたしの座ったカウンター横を抜けてフロアーを忙しく出入りしていた奥さんの二人ともが一瞬固まって顔を見合わせた。
「それはどうも・・・」
 とモゴモゴいいながら、いかにも用ありげに厨房に消えた。

(あれ! なんかやってしまったか)
 そうか、十年前の旅では京都泊だったからこの店に来ているわけはないのだ。大津のすぐ先の石山に泊まって北野天満宮などの京都観光をしたわけだから四、五年くらい前が正しい。ひょっとしたら十年前はまだ開業していなかったかもしれない。オウンゴールみたな失言をしてしまってちょいと落ち込む。



「この『白菜塩昆布』、じつに美味しいですねぇ」
 ありがとうございます、奥さんの顔が輝いた。メニューでみつけたとき、これだと思ったのだ。つい最近<ゴーヤ塩昆布>を食べたことがあり、こいつが酒の肴として極上の一品として記憶に刻まれていたのである。



 白菜の代りにゴーヤを使ったのを食べたことがありますがあれもなかなかのものです、といったら二人が俄然興味を示して、ちょいと失点を取り返した気分になる。



 白菜塩昆布と辛いウィンナーなどを食べながら<ゴーヤ塩昆布>の話で、マスター夫婦が今度試しに作ってみますというくらい盛りあがったのである。



 運ばれてきたとき、盛られた白菜の量に食べきれるかと心配したが時間が経つにつれ、しんなりしてちょうどいいくらいの分量になって食べきった。なにしろ、このメニューで失点回復したわけだから残すわけにはいかない。





 白菜で腹一杯になってしまったので、楽しみにしていた揚げ出し餅は食べられそうにない。また来られるくらいに親しくなったことだし、最後は銀杏と日本酒で締めるとするか。
 栗東までは大津から十七分だから三十分以内にはチェックインできるだろう。そうだ、明日は帰る前に太秦の映画村でもいってみよう。


  →「大津、あがり家(1)」の記事はこちら
  →「本命麦代餅、対抗かつら饅頭」の記事はこちら
  →「北野天満宮」の記事はこちら

  →「太秦映画村(1)」の記事はこちら

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