温泉クンの旅日記

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越後湯沢温泉(1)

2014-03-23 | 温泉エッセイ
  <雪國の宿(1)>

 部屋の窓に広がる雪に鎧われた三国山脈の冬景色に息をのんだ。



 谷川岳を中心とした雪山が連なる驚嘆の眺めは、心に知らぬ間に積もった日常の煩わしい塵芥のようなあれこれを綺麗さっぱり吹き飛ばしてくれる。



 越後湯沢温泉には十回近く訪れている。数が多いのは、新潟に出張するたび帰りに途中下車して一泊したからである。温泉街に飲食店が充実しているので、片泊りで安く宿泊できるせいもある。
 今回選んだ、温泉街のはずれの高台にある老舗宿「雪國の宿 高半」もやはり片泊まりにした。それなのに景観がこんなにもよい部屋を割り当てられたのはいかにも幸運である。

 おっといけない、絶景の観賞はいつでもできるのだった。
 早速、浴衣に着替えると宿自慢の温泉に向かった。



「お六の湯」と呼ばれている男性大浴場である。
 広々とした浴場には、小さいのと大きいのと湯舟がふたつあった。いずれの浴槽からも贅沢に湯が溢れている。



 先客がいないのは、この時間まだスキー場に行っているからだろう。越後湯沢駅に降りたつ客のそのほとんどがスキーとかスノボー目当ての客のようであった。日本中が異様に盛りあがったソチオリンピックの影響もあるかもしれない。
 温泉好きなわたしには実に好都合、ありがたい状況といえる。



 宿の初代当主「高橋半六」が約九百年前に偶然に発見したといわれる、天然湧出のかけ流しの源泉そのままである。
 湯沢のほかの温泉のように源泉温度が高くないので、ゆっくり楽しめる湯温だ。
 湯量が豊富なので、三時間で湯が完全に入れ替わるそうだ。



 無色透明だが、とき卵をいれたような湯花が多くわずかに硫黄臭がするところから「卵の湯」と呼ばれている。

    菊の香や湧き出る水も不死不老

 昭和元年にこの宿を訪れた「不識庵」こと俳人上田聴秋が、この湯をこう詠んだそうである。あたりまえの「不老不死」と詠まないところがさすがに俳人だ。

 女性用の浴場には半露天風呂があるそうで、男女の入れ替えがないのはいかにも残念である。

 たっぷりの掛け湯をして切りあげた。
 読書室の裏側に無料の麦茶があったので、紙コップに注いで水分補給した。




  ― 続く ―


  →「越後湯沢、ぽんしゅ館」の記事はこちら
  →「南京玉簾」の記事はこちら

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