温泉クンの旅日記

温泉巡り好き、旅好き、堂社物詣好き、物見遊山好き、老舗酒場好き、食べ歩き好き、読書好き・・・ROMでけっこうご覧あれ!

博物館・網走監獄(2)

2020-03-22 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <博物館・網走監獄(2)>

 網走刑務所が世間に広く知られるようになったのは、高倉健の主演でヒットした映画「網走番外地」に負うところが大きい。その後、シリーズ10作、新シリーズ8作もがつくられた。
 日本映画はあまり観ないわたしでも題名くらいは知っていた。ただその題名「網走番外地」が、網走刑務所の所在地が「網走市字三眺官有無番地」で地番の付いてない無番地だったことによることを知るのはずっと後のことだ。

 

 この舎房は明治45年(1912年)から昭和59年(1984年)まで七十年以上現役だった。
 舎房の広さは3坪の雑居房と、 1.5坪の独居房である。独居房は雑居房の半分の広さを一人だから楽そうに思えるが、起きている時間は正座だったそうだからキツイ。
 別に、屋外に懲罰の際に使った独立独居房もある。規則違反者を罰するため、窓の無い真っ暗な部屋に閉じこめ、食事を減らし、反省させた。

 冬の寒さも過酷で、外はマイナス30度の極寒、廊下に設置されたマキストーブだけではとても暖をとれなかった。

 

 ひとが集まればそこには自然と序列というものが発生する。殺人や強盗などの凶悪犯は一目置かれるし、痴漢などの性犯罪者はバカにされていじめられた。
 地獄の沙汰も金次第という。
 江戸時代、罪人は大牢に入れられると隠したツル(金)を牢名主に差しだし待遇向上を図った。
 刑務所でもそれは同じ。ある程度の金を持って入所しないと不自由する。また官物支給品以外の本や雑誌とか日用品を買って、与えたり貸したりして影響力のある受刑者に「貸し」をつくることもできる。なにしろ作業報奨金を貯めても月500円からいいとこ1,000円、最高でも3,500円くらいなのだ。

 

 雑居房の廊下側の壁はブラインド方式の「斜め格子」で、等間隔にすき間を置きながらつくられているので、廊下側からは舎房の中は見えるが舎房からは廊下を挟んだ向かいの舎房の中が見えないようになっている。囚人たちの交流を妨げ、管理をしやすくする設計である。

 

 穴を掘って逃げられないように廊下の下は厚いコンクリート、その上にレンガを敷き詰められている。
 昭和の脱獄王と呼ばれる白鳥由栄は26年間で4回も脱獄、なんとここ網走刑務所も脱獄したことがあったそうだ。

 

 舎房のなかだがさすがに団体、カップル、グループ客と恐ろしく混んでいた。

「浴場」、入浴することは受刑者にとってもっとも楽しみな時間だ。温泉好きだからわたしも興味があった。

 

 刑務官の号令のもと、15人ずつ、脱衣に3分、入浴3分、洗身3分、上がり湯3分、着衣3分と時間が決められていた。
 脱衣から着衣まで15分、効率よく入浴しなければならないから忙しない。現在は一日おきだが、そのころの監獄則で6月から9月までは月5回、他の月は1回と定められていた。

 

 浴場で一目置かれるのは、背中に背負った倶梨伽羅紋々(くりからもんもん)である。
 入れ墨(刺青)の手法は器具を使う「洋彫り」と手で彫る「和彫り」がある。彫る絵により両方組み合わせるなど彫り師によりその手法は千差万別だ。器具による彫りは痛みが少なく、手彫りは費用もかかり激痛を伴うため暴力団などには和彫りが一種のステータスになっている。
 刺青者でも公衆浴場では入浴可能である。公衆浴場でもある道後温泉以外、たいていの温泉は「入れ墨お断り」だ。でも、わたしは山梨と青森の温泉で遭遇して怖い思いをしたことがあったのである。

 

 囚人たちが精魂こめて建てた「教誨堂」。
 ここは、僧侶や牧師が囚人たちに精神的、倫理的、宗教的な指導を行い更生に導くために設置されたそうだ。

(あちこち探したが喫煙場所はみつからなかったな・・・)

 
 
 早々と入口ゲートに戻ってきてしまった。このゲートは、刑務所の農場だった広大な「二見ヶ岡農場」旧正門を再現したものである。
 喫煙所で一服すると、目の前にある食堂へ歩いた。ここでは現在の網走刑務所の受刑者が食べているメニューを「監獄食」として提供している。

 

 昔のではなく現在の監獄食で、米七麦三の飯と味噌汁、ホッケなどの焼き魚、副菜のセットと聞いている。いわゆる「くさいメシ」というやつ。

 

「すみません、今日の昼は修学旅行の団体貸切で・・・」
 先を歩く家族が入口で断られているのを聞いて、いいや坂の上のオホーツク流氷館へ行こう、と決めてわたしは踵を返すのであった。


   →「博物館・網走監獄(1)」の記事はこちら
   →「網走、流氷館と流氷の見える駅」の記事はこちら
   →「蔦温泉」の記事はこちら
   →「xxx温泉」の記事はこちら


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 博物館・網走監獄(1) | トップ | 阿寒湖温泉、朝の風景(1) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ぶらり・フォト・エッセイ」カテゴリの最新記事