<横浜駅のカレー屋さん>
横浜駅で、連れもなく独りで昼メシといえば、莫迦のひとつ覚えのように「龍王」にいって焼きそばを食べてしまう。いまだにワンコイン以内で旨いからである。だから龍王にいけばいつかは焼きそばを食べているわたしに逢える。(まあ少しも逢いたくないだろうが)
ダイヤモンド地下街に、もう一軒「龍」の字がつく狭い中華料理屋があって、その昔はどちらも利用していたのだが、いまは職人がいいのだろう味が安定している龍王しか足がむかない。
東京駅ではカレーライスの「アルプス」とか坦々麺の「鳳鳴春(ほうめいしゅん)」とか旭川ラーメンの「番外地」、博多うどんなど些少のバリエーションがあるのに、横浜駅ではひとつだけというのも悲しい。
そこでカレーライスを食べることにした。カレーライス好きの友人が連れのなかにいたとき、たまにつきあった店である。
「カレーハウス リオ」は創業五十年を超す、横浜ではそれなりに知られている店だ。あのココイチよりもずっと古い。
場所はジョイナスの地下二階、わかりにくければ市営地下鉄の切符売り場を目指せばそのすぐ脇にある。もとは地下一階にあったはずが移転したようだ。
入ってすぐ左に券売機があり、二十人くらい座れるL字型のカウンターと、六人掛けくらいのカウンター席がある。
メニューは多いが迷わずに一番安いポークカレーの食券を購入した。六百円也。たしかついこの間までぎりぎり五百円台だったような気がするが、移転とリニューアル費用を載せたのか。まあ、それでも横浜駅なら安いほうだろう。
「お味は中辛でよろしいでしょうか」
L字型の中を若い女性が歩いて食券をとりに来てわたしに訊いた。ベースの味が「中辛」だが、「甘口」、「大辛」、「激辛」にも無料で変更できる。
「ええ、中辛でいいです」
わたしの正面、厨房の壁にリオのカレーの詳細な説明が書いてあった。
カレーソースに入っているスパイスだが、キャラウェー、カルダモン、シナモン、クローブ、クミン、セージ、ローレル、ナツメグ、フェヌグリーク、ガーリック、ジンジャー、赤唐辛子、オニオン、ターメリック、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、フェンネルの17種類。
またカレーソースの三大特徴として「ダシ」は主に鶏ガラ、鶏肉からでココナッツミルクを加えていて、「クセ」がない。「甘み」は人参、林檎、マンゴチャツネなどで出しているのでしつこくない。「ルー」を作る時に小麦粉を控えめに十分に煮込んでいるので舌ざわりがサラッとしてなめらかである。
カレーのスパイスや特徴をこれだけバラシテも、調合の量や順番やら煮込み具合寝かせ時間など秘伝の製法は絶対真似できないぞという自信の現れなのだろう。
待つほどもなくカレーが運ばれてきた。
カウンターの上には福神漬けとらっきょが用意されている。わたしの好みはらっきょ派なのだが、この店のせいかもしれない。
特徴に書かれたとおりの味だ。クセがなく舌ざわりがサラッとしてなめらかだ。その割りに辛味がしっかりしているだけでなく深みもある。
「激辛で」
隣に座ったおじさんが言った注文に思わず反応してスプーンが止まってしまう。一瞬化石化したのはどうやらわたしだけではないようだ。まるで鮨屋でみんなが安い「並」の握りを食べているのに「特上」を頼まれたような気分である。
ぜひ、激辛のカレーを食べる一瞬をみてみたい。咳こんだりしたら最高に面白い。玉のような汗をかいて涙目になるのもまさに自業自得・・・わたしはカレーを食べるスピードを落とした。
激辛のカレーが運ばれてきて、鰈なみの横眼を使って隣のおじさんを注目する。
皆の静かなる注目も気にせずに、激辛カレーを平然とパクパク食べる猛者のおじさんに肩すかしを喰らわされた一同は、黙々と食べきり次々と席を立つのだった。
期待を裏切られたわたしは、店を出て地上に上がるとハマボール裏に向かった。
コメダコーヒーに行ってなんとなく気分転換に一服することにしたのだ。
→「横浜駅、穴場メシ」の記事はこちら
→「アルプスのカレーライス」の記事はこちら
→「鳳鳴春の坦々麺」の記事はこちら
→「東京駅で博多うどん」の記事はこちら
横浜駅で、連れもなく独りで昼メシといえば、莫迦のひとつ覚えのように「龍王」にいって焼きそばを食べてしまう。いまだにワンコイン以内で旨いからである。だから龍王にいけばいつかは焼きそばを食べているわたしに逢える。(まあ少しも逢いたくないだろうが)
ダイヤモンド地下街に、もう一軒「龍」の字がつく狭い中華料理屋があって、その昔はどちらも利用していたのだが、いまは職人がいいのだろう味が安定している龍王しか足がむかない。
東京駅ではカレーライスの「アルプス」とか坦々麺の「鳳鳴春(ほうめいしゅん)」とか旭川ラーメンの「番外地」、博多うどんなど些少のバリエーションがあるのに、横浜駅ではひとつだけというのも悲しい。
そこでカレーライスを食べることにした。カレーライス好きの友人が連れのなかにいたとき、たまにつきあった店である。
「カレーハウス リオ」は創業五十年を超す、横浜ではそれなりに知られている店だ。あのココイチよりもずっと古い。
場所はジョイナスの地下二階、わかりにくければ市営地下鉄の切符売り場を目指せばそのすぐ脇にある。もとは地下一階にあったはずが移転したようだ。
入ってすぐ左に券売機があり、二十人くらい座れるL字型のカウンターと、六人掛けくらいのカウンター席がある。
メニューは多いが迷わずに一番安いポークカレーの食券を購入した。六百円也。たしかついこの間までぎりぎり五百円台だったような気がするが、移転とリニューアル費用を載せたのか。まあ、それでも横浜駅なら安いほうだろう。
「お味は中辛でよろしいでしょうか」
L字型の中を若い女性が歩いて食券をとりに来てわたしに訊いた。ベースの味が「中辛」だが、「甘口」、「大辛」、「激辛」にも無料で変更できる。
「ええ、中辛でいいです」
わたしの正面、厨房の壁にリオのカレーの詳細な説明が書いてあった。
カレーソースに入っているスパイスだが、キャラウェー、カルダモン、シナモン、クローブ、クミン、セージ、ローレル、ナツメグ、フェヌグリーク、ガーリック、ジンジャー、赤唐辛子、オニオン、ターメリック、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、フェンネルの17種類。
またカレーソースの三大特徴として「ダシ」は主に鶏ガラ、鶏肉からでココナッツミルクを加えていて、「クセ」がない。「甘み」は人参、林檎、マンゴチャツネなどで出しているのでしつこくない。「ルー」を作る時に小麦粉を控えめに十分に煮込んでいるので舌ざわりがサラッとしてなめらかである。
カレーのスパイスや特徴をこれだけバラシテも、調合の量や順番やら煮込み具合寝かせ時間など秘伝の製法は絶対真似できないぞという自信の現れなのだろう。
待つほどもなくカレーが運ばれてきた。
カウンターの上には福神漬けとらっきょが用意されている。わたしの好みはらっきょ派なのだが、この店のせいかもしれない。
特徴に書かれたとおりの味だ。クセがなく舌ざわりがサラッとしてなめらかだ。その割りに辛味がしっかりしているだけでなく深みもある。
「激辛で」
隣に座ったおじさんが言った注文に思わず反応してスプーンが止まってしまう。一瞬化石化したのはどうやらわたしだけではないようだ。まるで鮨屋でみんなが安い「並」の握りを食べているのに「特上」を頼まれたような気分である。
ぜひ、激辛のカレーを食べる一瞬をみてみたい。咳こんだりしたら最高に面白い。玉のような汗をかいて涙目になるのもまさに自業自得・・・わたしはカレーを食べるスピードを落とした。
激辛のカレーが運ばれてきて、鰈なみの横眼を使って隣のおじさんを注目する。
皆の静かなる注目も気にせずに、激辛カレーを平然とパクパク食べる猛者のおじさんに肩すかしを喰らわされた一同は、黙々と食べきり次々と席を立つのだった。
期待を裏切られたわたしは、店を出て地上に上がるとハマボール裏に向かった。
コメダコーヒーに行ってなんとなく気分転換に一服することにしたのだ。
→「横浜駅、穴場メシ」の記事はこちら
→「アルプスのカレーライス」の記事はこちら
→「鳳鳴春の坦々麺」の記事はこちら
→「東京駅で博多うどん」の記事はこちら
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます