篁牛人・・、大倉集古館で最近開催された展覧会を観に行ってから、ちょっとファンになっていましましたので、手頃で入手できる作品を見かけるとつい入手してしまいます。この作品で3作品目ですが、市場に出回るのは人気のある渇筆の画風を控えた放浪時代の作品のようです。
高士観瀑図 篁牛人筆 その3
紙本水墨淡彩軸装 軸先木製塗 誂箱
全体サイズ:横455*縦2030 画サイズ:横325*縦1330
傑作と思われる放浪後の作品は、まとまって保管されているようですので、どうしても市場に出回るのは放浪時代とそれ以前の作品になるようです。
本作品は放浪時代の終わり頃の作と思われます。いずれにしろ篁牛人が活動していた富山市からの入手です。
本作品は越前和紙には描いていないようですが、渇筆の作品と言えますね。色を使い始めていることや、落款と印章から昭和30年代の作ではないかと推定しています。
放浪時代とは昭和24年頃から15年間ほどで、多くの「売るための絵」を篁牛人は描いています。生活が困窮し、渇筆を描くための麻紙の購入ができずに基本的に渇筆画の制作を中断しています。
放浪をたびたび行なっており、まるで釧雲泉のような生活ですが、この頃には画号として「牛人」と共に「牛山人」を画号のひとつして用いています。
渇筆の技法のヒントは小杉放菴の水墨技法に倣ったとされています。一時期、色を使った作品が水墨画のあとに顕著になりますが、放浪後には突然変異のように画風を変えて「渇筆」を主体とした代表作となるデフォルメされた人物、動物、樹木を主とした水墨画にその後は移行します。
本作品中の落款と印章は下記のとおりです。
入手後に確認した図集からの落款と印影は下記のとおりです。この印章は放浪が終了する頃からよく押印されているようです。落款は放浪後のものと近似しているようです。入手時は資料を確認しいている時間的な余裕などないので、直感での入手となります。資料と比較しないと納得できない蒐集家ではこのタイミングを逃すことになりますね。
箱に記されているのは本人によるものかもしれませんが不明です。
それほど素晴らしいとは言えないでしょうが、その後の篁牛人の傑作を前兆を思わせる作品だと思います。
前回紹介した下記の作品と対で展示室に飾っています。
水墨山水図 篁牛人筆 昭和20年代
紙本水墨淡彩軸装 軸先木製 誂箱
全体サイズ:横660*縦2030 画サイズ:横525*縦1325
こちらは南画そのものの作風ですね。
この後、当方ではさらに篁牛人の作品を入手していくことになります・・。