本日紹介する作品は以前から実家から伝わる数多き漆器の中のひとつです。以前にまとめて投稿されていましたが、今整理が進んできているので実家から伝わる漆器を少しずつ紹介しています。今回の年末の帰省で整理した作品のひとつです。
再投稿 濤ニ千鳥罅塗黒塗膳 50客揃
(4箱分割収納)杉箱
幅303*奥行302*高さ103
本漆器の表面の革のような状態、つまり漆の表面にひびが入ったような文様ですが、これを作り出す技法を罅塗(ひびぬり)というらしいです。
漆の技法の分類では変塗(かわりぬ)りの一種とのこと。細かなひびを表面に作った塗り方で、塗りが適度に乾燥した時に、卵の白身に水を混ぜたものを刷毛で塗り、乾燥の差によって亀裂が生じた上に漆を塗って蝋色仕上げをするもので、なかなか見られない塗りなのでとても貴重とされていますが、難易度については不明です。
当方でも亡くなった家内の実家の仏壇も、製作元にて打ち合わせしてこの技法で濃い緑色にて仕上げています。当方の宗派である禅宗の曹洞宗では真塗(黒塗)の仏壇はNGらしいので、そのような色に仕上げました。
本作品にある「波千鳥」の蒔絵の文様は、絵になるような調和のいいもの、組み合わせの良いもののたと波間を世間にたとえて「ともに荒波を乗り越える」という意味から夫婦円満、家内安全などの縁起のよい文様とされています。
また「千鳥」と「千取り」の語呂合わせから勝運祈願、目標達成の意匠としても最適とされます。
黒の配色ではありますが、上記の意味合いから結婚式などの祝い膳や正月の膳にも最適な器です。
秋田杉で作られた四つの収納箱に10客+10客+16客+14客=50客の揃いであります。当方の実家は秋田杉を扱う材木店でしたのでこのような保存箱は実家で作ったものがたくさんあります。実家では日頃から使われた器のようですが、痛みはほとんどなく丁寧に保管されています。
漆器の器は丁寧さが保存状態の良さにかなり影響します。たとえばネズミなどに喰われた跡のあるものなどは価値がほとんどなくなります。
当方の作品は昭和初期?頃の作と思われますが、包装紙にある輪島の「奥田五右衛門」という漆器店は現存するようです。この作品が輪島の「奥田五右衛門」という漆器店のものかどうかは解りませんが・・。
ともかく今ではこのような器はあまり見たりません。大事に保存してゆくべきものなのでしょう。ただあっても使わないといってフリーマーケットに出品する方が多いようです・・。どんどん日本の漆器を使った優品は消えていきますね。現代はほとんどが中国製の漆のようで、嘆かわしいことです。