著者は宮沢賢治
この本の中に「注文の多い料理店」の他に9つの短編集が入っています。
①どんぐりと山猫
②狼森と笊森、盗森
③注文の多い料理店
④烏の北斗七星
⑤水仙月の4日
⑥山男の4月
⑦かしわばやしの夜
⑧月夜のでんしんばしら
⑨鹿踊りのはじまり
どれも独創的で、子供の夢の中のような世界を描いている。だけど子供の世界と思っているのが大間違いで、意外に世の中の普遍的なことじゃないかなーと。
この中では、私は「どんぐりと山猫」「注文の多い料理店」「山男の4月」がベスト3とでもしましょうか、、、。
水仙月の4日、狼森と笊森は宮沢賢治の農民をみる視線の優しさがいいけど、この3つは意表をつかれるというか、発想が尋常じゃないから惹かれます。
「どんぐりと山猫」は山の中でどんぐりたちが、どんぐりの中で誰が一番えらいかでもめていました。山猫の裁判官はどう裁くか悩んでいたので子供の一郎をよんだ。
いわく、大きいのがえらい、長いのがえらい、先がとんがったのがえらい、重いのがえらい、丸いのがえらい、、、とけんけんごうごう。
そこで一郎が「ばかで、めちゃくちゃで、てんでなっていなくて、あたまのつぶれたようなやつが、いちばんえらいのだ」と。
すると、あれほど蜂の巣をつっついていたような騒ぎが、シーンとしてしまったと。
それからいろいろあるのですが、大筋はこんなもの。
山男の4月は
山男の前に支那人があらわれ「あなた、支那反物よろしいか。六神丸たいさんやすい」。「買わない、それかまわない、ちょっと見るだけよろしい」と言いながら、山男はけっきょく支那人にだまされて、魔法をかけられて小さな箱の六神丸にされてしまう。最後になんとか元の体に戻るのだが、人が良く、断れないでだまされる人の心理を童話風に面白く書いています。
これも、こんなことはありえないことですが、似たようなだましは世の中にいっぱいあります。はたから見ると、何でーーーと思えることでも、当事者はころっとなるんです。
宮沢賢治の童話はメルヘンチックな子供むけだけと考えるようだと問題あり。視点や展開が意表をついていたり、登場人物が子供であったりするが、実際、世の中はこんなもんじゃないかな。だから普通と言うのが、あんがい意地悪だったりして、そうでなかったり、、、生きていることは面白いのだ。
ブックオフで105円。作家泣かせだが、ブックオフはちょっぴり世界を変えた。本は財産でもあるけど、本の財産である本質は、書かれている世界観や知識であると明示した。
105円で気持ちがこんなに豊かになるんだもの、、、「価値」とは何かと考えさせられます。