君たちはどう生きるか、吉野源三郎著
80年前の戦前に書かれた名著です。
そんな昔に書かれた本を読んでみても、人の在り方などや社会の問題は変わらないのだと、新鮮な驚きがありました。
人が生きることは、時代が変わっても変わらない。
時代が変わって文化や文明は進歩するかもしれないが、根本的な人はたぶん変わらない。
最近、また読まれるようになったのは、当然のことでしょう。
最近リバイバル・ヒットしているそうです。
この本の内容に関係ないことですが、映画化、漫画化にあたって出版側ともめごとがあるようです。
書かれたのが80年前なので、著作権は発生しないと考えたのでしょうか。
遺族がいらっしゃるのだから、きちんとした対応が必要でしょう。
粗筋は、、、。
コペル君とその友達と、叔父さんとのやりとりでお話が進んでいきます。
コペル君は中学二年生の設定で、この本が書かれた当時、1930年代では中学校に進学できるだけでエリートだったそうです。日本も世界もキナ臭い戦争の時代に向かっていた。それで、なおさらに民主主義とヒューマニズムを大事にしたい、という思いがあったのでしょう。
コペル君の友達は
水谷君(家柄の良い上品な子)
北見君(がっちりした体形の、一途な子)
浦川君(家がお豆腐屋さんで、家業の手伝いの油揚げを作っている)
油揚げ事件
クラスの子たちが、浦川君が毎日持ってくるお弁当の中身が油揚げだということに気が付きからかっていた。何人かのクラスの子が、浦川君を馬鹿にしたので、北見君が怒り飛びかかっていった。仲間を馬鹿にされて怒った北見君がいた。その後、浦川君が何日も学校を休んでいたので、2人で家に遊びに行ったら油揚げを揚げている浦川君がいた。学校を休んだのは、病気じゃなく家業が忙しくて手伝っていたからだ。その当時では、浦川君のお豆腐屋さんに住み込みで働いている若者がいた。浦川君のお豆腐屋さんは下層階級じゃなく、浦川君は家業を手伝っているけど、お豆腐屋さんに住み込みで、さらに体ひとつで働いている人がいることに、コペル君は気が付いた。さらに、浦川君はコペル君と同じ世代だけど、彼は世の中に何かを生み出している生産者だと教わった。コペル君はまだ学生で勉強中で、ある意味で消費者、受益者の立場だけなのだと教わった。
だから、コペル君は働かないでいられる有難い立場なのだと。有難いという意味は、あることが難しく、めったにあり得ないということだよと。生産者じゃない立場は、社会的には珍しい立場なのだよ。だから、有難く感じて勉強に励みなさい!
雪合戦事件
水谷君、北見君、浦川君とコペル君は、学校の中で仲良しグループだった。北見君が上級生ににらまれて制裁を受けそうになったら、4人で北見君を守ろうと指切って約束した。その日が来た。北見君が上級生に殴られたときに水谷君や浦川君は、北見君に並んで上級生の前に立った。遠くで見ていたコペル君は怖くなって、駆け付けることができなかった。終わって3人が肩を寄せ合って帰っていくのを、コペル君は遠くで見送るしかできなかった。
その日を境にコペル君は体を壊して学校を休業していた。あの時にどうして皆のところに駆け付けられなかったのかと、毎日反省していた。指切りして約束したことを、裏切ったことを、どう許してもらおうかと悩んでいた。それで謝りの手紙を書くことにした。それで北見君、水谷君、浦川君が許してくれるかわからないけど、謝りの手紙は(言葉)は必要だと!
人は、「しまった」と考えたり、後悔することで、その後同じような後悔をしないで済むことがある。それが正常な成長なのだ。
国王は、国王の座を追われたら、国王でなくなったことに不幸を感じる。だけど平民が国王でないからと言って不幸は感じない。痛みがあるから、普通じゃないと感じられる。痛みがなかったら、普通じゃないということに気が付かない。みじめだと思うのは、人は本来みじめであってはいけないから、みじめさを感じるのだ。
ナポレオン事件
ナポレオンがいつの時代の方なのか、私の中ではあいまいだった。だいたい第一次世界大戦のころの方だったようだ。つまり1800年あたりが時代背景。
20代のころは一兵卒だったものが、35歳にはヨーロッパを収めるくらいの皇帝にまで出世した。もしかして、時代がナポレオンを必要としていたのだろう。時代を変革しなきゃいけない時に現れたのが、ナポレオンだったということ。ヨーロッパは貴族社会で小さく分割されていて、国の運営も貴族たちが取り仕切っていた。それを、貴族じゃなく議員制にまで変革させるきっかけをナポレオンは作った。つまり、ナポレオンは時代から求められて登場したものだ。世の中に英雄と言われる人たちがいるけど、みな時代が呼び寄せた方たちだ。時代に逆らって、英雄になった者はいない。
ほかにも、いろいろ面白くて身近なエピソードで、人の在り方を説いていく。子供向けだけじゃなく、大人だって、もしかして社会的に地位のあるような人こそ、読んでほしい内容が満載です。
子供の生活を大人が解説していくスタイルで話は進んでいく、ユニークなストーリー展開です。それに暗い話じゃないし、軽い内容ですが、「ある・ある・よくあることだ」と面白く読みました。
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