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ん、楽しかった…♪

2019-01-15 09:47:56 | Weblog
『なんてやつだ』 野口卓箸 集英社文庫、読み終りました。
面白い、というより楽しいという方が相応しいような気がします。
一話完結の話が五本。
主人公の信吾。
老舗料理屋宮戸屋の若旦那、大店のお嬢さんに一目惚れされてそのお嬢さんが恋煩いするくらいだから美形だわね。
身の丈五尺六寸ってことは168cm、当時においてはスラリとした長身でもある。
商家=料理屋の跡取り息子としてきちんと教育も躾もされているから折り目正しい。
商人としての諸々も身に付けているから真面目だけど洒落も通じる。
とくればそりゃもう理想的なお坊ちゃまよね。
その上、棒術・柔術・剣術・鎖双棍などを体得しているとなれば、非の打ち所がない
ただね、信吾さんには秘密がある…、それは“声”が聞こえるってこと。
犬や猫、鳥や虫などと話しが出来る、生き物たちが助言をくれる。
危険を知らせてくれたり、いい話があったときに背中を押してくれたり。
この生き物と話しが出来るっていうところがファンタジーよね。
自分を襲って金を奪おうとした浪人を返り討ちにした挙句、その浪人と友達になってしまう。
信吾と話していると調子が狂う…、なんてやつだ…。
マムシとあだ名される岡っ引きの権六親分も
なんてやつだ、信吾…
タイトルの『なんてやつだ』がこれ。
夜中に泥坊に入った万作には金を分けてやり、賭け将棋でのっぴきならないことになってしまった太三郎を救いと、いろいろと活躍する信吾さんだけど、派手な大立ち周りがあるわけじゃないの。
どちらかというと将棋会所の席亭として穏やかに話をしているだけ。
痛快時代劇って感じじゃないところがいい
信吾さんの父正右衛門さん、弟の正吾、将棋会所の本来の家主である甚兵衛さん、巌哲和尚様、そのほか将棋会所の名もなき常連さんたちと、脇を固める登場人物もみんないい人。
権六親分ですら、本当はいい人。
なかには賭け将棋を仕掛ける佐助のような悪党もいるけど、こいつは敵役だから。
そうそう、甚兵衛さんちの飼い猫の黒介が信吾さんを警戒しないことに甚兵衛さんが驚くと、
あたぼうよ、兄弟だもんな
と黒介の声が信吾さんには聞こえます。
あ、こりゃ好いや、と笑っちゃいました。
夜中、泥坊が狙ってるぞと注進してくれたのは、黒兵衛という黒猫でした。
生き物の声が聞こえる、生き物と話しが出来るというファンタジーに違和感を感じない。
穏やかで楽しい作品でした。
コメント
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