■ 貧者の核兵器 ■
「シリアの化学兵器が何故これ程までに問題視されるのか?
化学兵器が非人道的だからじゃないか!!」と仰る方は、思考停止しているかも知れません。
戦場による「殺傷」を目的とするならば、銃撃や爆撃による「殺戮」も、化学兵器による「殺戮」も結果はあまり変りません。
ただ、化学兵器はオーム真理教でも製造が出来る様に、肥料に使用される原料が手に入れば、比較的簡単に、そして安価に製造出来、そして「殺傷」効果は高い事を特徴としています。
それ故に、化学兵器は「貧者の核兵器」とも呼ばれています。
国家間の力の大小は「軍事力」に依存します。
核兵器を保有する国は、容易に侵略を受ける事はありません。さらに「核兵器による恫喝」により国際的な発言力も強化する事が可能です。その最たる存在が米ロ中であり、あるいはイスラエルとも言えます。
一方で核兵器の保有を許されない国や、あるいは経済的、技術的に核保有が不可能な国は、その代替として「化学兵器保有」で、自国の安全保障を確保しようとします。もし、攻撃されたら、化学兵器を使用するぞという「化学兵器による抑止力」の実効性は低くはありません。
実際に核兵器を保有するイスラエルへの対抗手段が、シリアの化学兵器搭載可能な地対地ミサイルです。
■ 化学兵器の放棄は、侵略戦争へのハードルを下げる ■
シリアは国連の提案を受けて、化学兵器の放棄を進める事になりそうです。
シリアに先立って化学兵器を放棄した国があります。
イラクです。
イラクは湾岸戦争後、国連の決議に従い「大量破壊兵器」を放棄します。化学兵器の廃棄、及び工場の破棄を国連主導で進めました。
・・・その結果はどうなったでしょうか?イラクは「存在しない大量破壊兵器」の嫌疑を掛けられて、アメリカを始めとする多国籍軍に国土を蹂躙されました。
地上進行した米軍は、化学兵器を使用される憂い無く地上戦を行なう事が出来ましたし、イスラエルに化学兵器を搭載したミサイルを打ち込まれる心配も要りませんでした。
この様に、「貧者の核兵器」とも言える「化学兵器」の抑止力を失う事は、戦争へのハードルを下げる事になります。
■ イランとの緊張緩和や、イラクへの譲歩などは何を意味するのか? ■
イランに穏健派の政権が誕生した事で、犬猿の仲であったアメリカとイランの外相が会談するという雪解けが始まっています。イラン革命や、イラン大使館人質事件を契機に冷え切っていた両国の関係改善は、中東の安定の為には良いニュースと思えます。
一方の核開発の放棄は、中東の軍事的バランスを変化させます。
一見、融和に見えるアメリカとイランの融和ですが、核開発を放棄させた後に、アメリカが手の平を返す事は充分に予想出来ます。
■ 素直に見れば、戦争屋とそれに対抗する勢力の抗争 ■
一般的な陰謀論では、中東情勢の変化を、「軍産複合体(戦争屋)」が失敗して、それに対抗する勢力(銀行屋)が中東情勢をコントロールし始めたと見ている様です。
しかし、私は中東は「武器の在庫セール」だけの目的で動いているとは考えられません。戦争と経済は不可分です。
「銀行屋」は、経済的なメリットがあれば躊躇無く戦争というカードを切って来ました。一見、k緊張緩和が始まったかに見える中東情勢ですが、どもそう簡単に事は運ばないのではと・・・。
シリアやイランを巡る情勢の背後を妄想して止まない、今日この頃です。
<追記>
シリアの化学兵器が中東の戦争抑止に役立っている事をマスコミは報道しません。
1) シリアが大掛かりな軍事侵攻を受ける
2) シラアはイスラエルに化学兵器搭載の地対地ミサイルを発射し市民を無差別に攻撃する
3) 逆上したイスラエルが核ミサイルでアラブ諸国を攻撃する
若干短絡的ですが、想定し得る筋書きです。
ですから、化学兵器の武装解除が大規模ば軍事行動の前に必要なのでしょう。