■ 空売り規制の緩和は株式市場の正常化 ■
金融庁は5日から、株式市場の空売り規制を緩和しました。
空売りとは、手元に持っていない株を証券会社から借り手売る取引です。何故これで儲かるかと言えば、売った銘柄の株価が下落した場合、下がった株価で株を買い戻す事で利鞘が稼げるのです。当然、証券会社には株の借り賃を払いますので、それなりの下落幅が無ければ利益は出ません。
ヘッジファンドなどは、空売りを取引に組み込む事で、株価上昇局面だけでなく、下落局面でも利益が出る投資をしています。リスクをヘッジしているのです。
リーマンショック後、世界的に株式市場が値下がりしたので、各国は株価下落を加速させるから売りを一部規制しました。アメリカなども金融株の空売りを規制しました。
日本では51単元以上の信用新規売り注文を、直近公表価格以下(成行注文も含む)で発注することは、金融商品取引法施行令により禁止されていました。
1) 株価上昇時は51単元以上のと取引でも直近公表価格以下での売り注文が可能になる
2) 株価下落時は、51単元以上の取引では直近公表株価以下及び同額での売り注文は
従来通り禁止。
3) 当日基準価格から10%以上低い価格で約定が発生した場合、トリガー抵触となり、
従来通りの空売り規制が適用される。
こんな感じの緩和内容となっています。
相場が上昇する局面での、51単元以上の空売りが解禁されたという事になります。
「空売り規制解禁」と聞いて、海外のヘッジファンドに売り浴びせられて日経平均が暴落し易くなるのでは?と心配しましたが、一応歯止めは掛かっている様です。
■ 株価が一進一退する局面で利益を拡大するヘッジファンド ■
空売り規制緩和を受けて、東証の取引が活発化したとの報道もありました。29%が空売りだとか・・。
最近の株価は一進一退を繰り返していますから、株価上昇局面で空売りを仕込んで、下落局面でしっかり儲けを確保出来ます。昨年11月以降の上昇一直線の相場では、空売りを仕掛けたところで、買い圧力に負けてしまいますから、相場が安定したので空売りで利益を出し易い状況になったとも言えます。
ここからは、ヘッジファンドお得意の、「上げたり、下げたり」という誘いで、個人投資家から利益を上手く抜いて行くのでしょう。一方で、日本の個人投資家達もかなり慎重になっているので、おいそれとは誘いに乗らない気もします。
意外と株価下落局面で買い支えに入る年金資金や日銀マネーが狙われるのかも知れません。
■ 世界的な景気減速で円高圧力が高まっている ■
昨年11月からの日本株の上昇は、円安に助けられてきました。
ところが、世界的な景気減速が顕著になったので、ECBが金利を引き下げています。内外金利差が縮小するので、円高になる可能性が高くなります。
円高局面では日本株は売られ易くなるので、ダウなどが劇上げしない限り、日本株はズルズルと値を下げ易くなるというのが市場の大方の見方でしょう。
ユニクロ、マクドナルド、ワタミなどの企業業績も振るいません。アベノミクスで浮かれたのは、塩漬け株が値上がりした富裕層だけで、一般的な人達は、むしろ物価上昇の影響で生活が苦しくなり始めています。(公共事業関係の業者は儲かっていますが・・・)
■ 世界的に閉塞感が高まって行くでしょう ■
Twitterの上場がニュースになっていますが、Facebook同様に、上場後直ぐに株価は下落するでしょう。
ダウは緩和マネーの流入で、鉄火場となっていますが、実体経済の悪化をどこまで無視し続けられるのか?既に、金融市場自体、実体経済とのリンクが相当緩くなってきています。
アメリカの雇用統計や経済統計に反応している様な報道のされ方をしていますが、景気悪化の兆候を好感するという滅茶苦茶な状態。QE3のテーパリングの見通しにしか反応していません。
何だか、非常に末期的というか、閉塞的状況になっているので、しばらくはこの状態が続いた後に歪みが何処かで噴出しそうな感じがします。
メディアも市場関係者も、肌身では不穏な空気を感じているのでしょうが、彼らはそれを無視するしかありません。一部の賢い人達が早々に危機対応を済ませているのでしょうか?
リーマンショックから5年以上経過し、世界は一見平穏に見えますが、大きな歪みがエネルギーを蓄えています。経済危機は地震と同様に、いつ、何処で発生するか分かりません。狼少年と呼ばれようと、私は「気をつけて!!」といい続けるだけです。
市場は短期に反応しますが、経済の大きな潮流は変える事は出来ません。