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出口戦略は難しい・・・最後は国債金利の上昇で終わる

2013-11-15 10:07:00 | 時事/金融危機
 

■ 金融緩和を継続するであろうFRB ■

FRBの次期議長のイエレン氏が上院委員会の公聴会で証言しましたが、基本的には金融緩和を継続する様です。

1) 株式市場はバブルという程の状況では無い
2) 金利引き上げまでには数年掛かるかもしれない
3) 潜在的失業者をカウントしたら失業率は10%に近い

ここら辺が目に留まりました。

イエレン氏は失業問題の専門家ですから、失業率の回復をかなり重視すると思われます。これは緩和継続が長引く要因にもなります。

一方で、緩和縮小の原因になるのが金融市場や株式市場のバブル発生ですが、イエレン氏は、現状のアメリカ株式は株価収益率から見てももバブルの域には達していないと判断しています。

■ バブル崩壊はいつも金利の引き上げで発生してきた ■

「バブルの崩壊」には必ず原因があります。

大抵の場合、中央銀行の金利の引き上げがバブル崩壊の引き金を引きます。
バブルの生成要因が、過剰な資金供給にあるのですから、これが絶たれれば当然バブルは弾けます。

サブプライムローン危機の直前、FRBのグリーンスパン議長は、「住宅市場はバブルとは言えない」と発言し、金利の引き上げを行いませんでした。

今となっては殆どの専門家が、当時「住宅バブル」が発生していたと認識しています。多分、FRBもバブルであると認識はしていたのでしょう。ところが、FRBは金利を引き上げればアメリカの住宅バブルが弾ける事も理解していたはずです。ですからFRBは金利を引き上げるにも引き上げられない状況だったと考えられます。

では、誰がサブプライムローン破綻の引き金を引いたかと言えば、それは日銀でした。当時、日銀は世界で唯一「量的緩和」政策を実行していましたが、ゼロ金利下の日本では資金需要が弱く、円キャリートレードによって日銀マネーはアメリカに吸い寄せられていました。この日銀マネーの金利が上昇した為に、サブプライム層のローンの金利が上昇し、ローンを払えない人達が続出したのです。

現在、アメリカの住宅市場は低空飛行中ですので、バブルは発生していません。その代わりとして、緩和マネーは株式市場と新興国市場、そして商品市場などに流れ込んでいました。

■ 金利の引き上げや、量的緩和の縮小で崩壊する相場を「バブル」と呼ぶのでは無いか? ■

5月にFRBン緩和縮小が予測されるや否や、先ず新興国から資金が引き揚げられました。これで新興国市場の株価が急落します。日本の株価も5月で頭打ちになりました。さらに、新興国の景気悪化は消費の減衰を招き、商品市場からの資金逃避も引き起こしました。

それらの逃避資金の行き先が、米株式市場となったので、ダウ平均は史上最高値を更新しています。16000ドルを一つの目標として、米株式市場は強気な相場が続いています。

「現在の米株式市場の相場は、FRBの緩和縮小までは崩れない」というコンセンサスが形成されているので、債券市場の資金も株式市場に集まってきている様です。国債金利が世界的に上昇しています。(日本だけは下落していますが)

FRBは「株式市場はバブルでは無い」と発言していますが、史上は金融緩和が縮小されたら「株式市場は暴落する」と誰もが思っています。既に、この時点で米株史上はバブルであると言えます。何故ならば、資金供給が縮小して崩壊する相場こそがバブルだからです。

■ 出口の外には崖しか無い ■

出口戦略を成功させるには、量的緩和意外に株式や商品に投資する理由が必要です。要は、「景気が力強く回復して、相場が上昇する」と人々が信じる事が必要なのです。

「アベノミクス」は「期待による景気回復」にチャレンジする政策でした。しかし、1年が経過した現在は、「根拠の乏しい期待」で市場が踊るには限界がある事が明確になっています。

日本株はリーマンショックや311の影響で不当に安くなっていましたので、その値が適正水準に戻った所で、日経平均の上昇は止まったとも言えます。含み損が解消した時点で、株を買い上げる動機が薄れてしまいました。

では、アメリカ経済はどうでしょうか?アメリカで景気回復が本格化するには二つの条件があります。

1) 資産市場が値上がりする事
2) 住宅市場が回復する事

アメリカは日本に比べ個人の資産運用が活発なので、資産価格の上昇はアメリカ人の消費を活性化させます。又、住宅市場の波及効果の米経済に占める割合は大きいので、住宅市場の回復は景気回復に不可欠です。

さらには、アメリカでは住宅の値上がり分に新たな担保価値が生まれますから、住宅な値上がるとそれを担保として車など大型の消費が活性化します。

FRBはQE3でMBSと長期国債を買い上げていますが、これは長期金利を引き下げる事で、住宅ローンを組み易くする狙いがあります。

しかし、その長期金利がズルズルと上昇しています。10年債が4%、30年債が3%の金利に向けて上昇中です。FRBと米国政府はどうにか金利上昇を抑制したいのですが、多分、市場参加者達は、テーパリングが始まる前に、株式市場で利益を出そうとしている様です。

この様に非常に不自然な形で米株式市場の値上がりが継続しているので、QE3のテーパリングが始まると市場が判断した時点で、米株市場は下落に転じます。これが暴落となるのか、大幅な下落に留まるのかは運としか言い様がありません。サーキットブレーカーが発動しますから、とりあえずは止まるのですが、売り一色になった場合は、FRBがさらなる緩和拡大を発表して市場を支えるしか手はありません。

結局、実体経済の回復無くしては、QE3は縮小できないのです。

■ QE3が永続化した場合、バブルは弾けるのか? ■

ではFRBがQE3の出口戦略を当分諦めた場合、バブルは崩壊するのでしょうか?
多分、市場は延命を期待して、なかなかバブルは崩壊しないはずです。

「なーんだ、大丈夫じゃないか・・・」

リフレ論者達はこう考えるでしょう。

しかし、その場合、米国の長期金利に上昇圧力が強まると思われます。
現在は金融市場が吸収しているのでアメリカのインフレ李は低いのですが、やはり量的緩和に出口が無いと分かった時点で、将来的なインフレを市場は予測します。それも、悪性のインフレを予測し始めるでしょう。

既に現状の米長期国債金利の上昇が、リスクプレミアムを見込んでいるとも言えます。10年債の金利が4%を超え、5%、6%と上昇していったならば、(米国債の値段の下落)、リーマンショック後の低金利の米国債は含み損が拡大して行きます。米国債の保有者達は、日本国債を保有する日本の銀行の様には律儀では無いので、米国債の危機が意識されれば米国債が売却され、金利は急激に上昇するはずです。

・・・これでジ・エンド。

■ 量的緩和の永続化は、必ず国債の金利上昇で終焉するだろう ■

日本もアメリカも量的緩和を行き着く先は、長期国債の金利上昇では無いでしょうか?

それを見越して、日本では2015年から国債の時価評価が停止され、アメリカではボルガールールによて、銀行の米国債保有が強力に後押しされます。

2014年の前半位までは、FRBのテーパリングばかりが市場の心配事ですが、テーパリングが不可能と思われた時点で、問題の本質が国債金利に移るのでは無いでしょうか?


これって、いわゆる「国債バブル」ってヤツじゃないか・・・・。


まあ、当たらない事では有名な人力予測なので、強気の人達には「福音」に聞こえているかも知れませんが・・・。