■ マレーシア航空機を現場空域に誘導したウクライナの管制 ■
先日、「ウクライナで撃墜されたマレーシア航空機は燃料を節約する為に危険空域を飛行した」と書きました。確か紛争地帯の上空を飛行ルートに選ぶ事は危険を伴います。
一方で、マレーシア航空機が撃墜された時、その近くをウクライナ軍のスホーイ25が2機飛行していた事をロシアは事件当初からレーダーの記録と共に指摘しています。
さらには、ドイツ紙Wahrheit für Deutschlandが、マレーシア航空のボーイング777型機を撃墜したとみられるウクライナのスホイ25のパイロットから話を聞くことに成功したとする記事を掲載した。パイロット達は、スホーイ25の30mm機関砲でマレーシア航空機を銃撃したと語っています。匿名のインタビューなので信憑性は定かではありません。
ネットでは「実用上昇限界が7000mのスホーイ25が10000mを飛行するマレーシア航空機を追撃する事は不可能だ」との指摘が散見されますが、この場合の実用上昇限界とは「30m上昇するのに1分掛かる」限界高度の事で、スホーイ25の到達高度は10000mを超えています。
一方、ウクライナの管制官はマレーシア航空機に対して「通常の飛行プランよりも2000フィート(=約600メートル)も低く飛ぶよう指示」しています。
1) 10000m付近に予めウクライナ空軍のスホーイ25が2機待機
2) ウクライナの管制官がマレーシア航空機に高度を下げる様に指示
3) ウクライナ空軍のスホーイ25が30mm機関砲でマレーシア航空機を銃撃
ロシア政府は「スホーイが撃墜した」とは言っていませんが、「民間航路である現場空域にスホーイ25が飛行していたのか理由を明らかにせするべき」と主張しています。同時に、「事件当時ウクライナの上空を飛行していたアメリカの偵察衛星の写真を公開するべき」とも指摘しています。
ロシアはスホーイ25による追撃の可能性を事件当時から匂わせています。
■ 親露派の交信はいつの物なのか? ■
ロシアの指摘に対してウクライナ保安庁が提示しているのは、親露派の交信を傍受したとされる記録です。
「マレーシア機撃墜:親露派の関与「捏造」…ロシア側が反論」毎日新聞 7月20日
http://mainichi.jp/select/news/20140721k0000m030104000c.html より引用
<引用開始>
前略
国営テレビによると、ウクライナ保安庁が公開した交信記録をロシアの専門家が分析したところ、複数の音声をつなぎ合わせて編集したものと断定。武装集団メンバーが「撃ち落とした」と言うのは前日の16日に親露派が撃墜したウクライナ軍のスホイ攻撃機を指し、マレーシア機墜落後に現場から「民間機だ」と伝える交信を合成したと伝えた。
親露派が撃墜に使ったとされる地対空ミサイル「ブク」の車両を東部国境からロシア領に移動させている場面としてウクライナ当局が公開した動画映像についても、露国営テレビは映像に出てくる広告の看板などからウクライナ政府軍が管理下に置くドネツク州西部で撮影されたものと報じた。
後略
<引用終わり>
ブークミサイルは白煙状の航跡を残し、それは20Km以上離れた場所からも視認される様です。事件の当時、ブークの航跡の目撃証言は無く、また、もし航跡が存在したならばアメリカは偵察衛星の写真を公開するだけで、スホーイによる撃墜の可能性を否定出来ます。しかし、アメリカはこれを提示する事が出来ません。
■ ウクライナ軍が撃墜したとすれば目的は何か ■
もし仮にマレーシア航空機をウクライナ軍が撃墜したとすれば、その目的は何だたのでしょうか?
この事件以来国際世論は親露派をテロリスト扱いし始めました。
しかし実際には親露派は撃墜現場を丁寧に保全し、乗客に死体は腐敗しないように冷蔵貨物車で保管しています。ボイスレコーダーやフライトレコーダーも保管していました。オランダは親露派の対応に対して感謝の意を示しています。これらの事は日本や欧米のマスコミではあまり報道されれいません。
ウクライナ軍は親露派をテロリスト扱いし始めた国際世論を利用して「テロリストを制圧する」という名目で、親露派の拠点であるドメツク州での攻撃を激化させています。一般市民が街に残っている状況で街を包囲し、攻撃しているのです。
国債世論はウクライナ軍の攻撃に対して批判的ではありません。「テロリストを攻撃するのは当たり前だ」という空気が醸成されているからです。
■ 結局、欧米とロシアの対立、そして地政学的リスクが残った ■
私は陰謀論者ですが、今回の事件はアメリカとロシアの共同謀議だと推測しています。ロシアもアメリカもお互いを非難しつつ、決定的は証拠を突きつけていません。
結果的にロシアはウクライナの親露派への積極的な支援を手控えているので、ウクライナ軍はドメツクで軍事行動を拡大しています。一般市民の犠牲者が増えたところでロシアは重い腰を上げてウクライナに軍を展開すると予想されます。こにれよってウクライナの内戦は膠着状態になり、欧米とロシアの溝は決定的に深まります。
ソビエト崩壊後、欧米とロシアの融和ムードが続いていましたが、アフガン侵攻と同様に、ウクライナ侵攻(?)によって、欧米とロシアやそれを支持するであろう中国や途上国との溝が深まって行きます。
■ アメリカ国債の金利上昇を抑制する地政学リスク ■
時同じくしてイスラエルとハマスの戦闘が起きています。世界はここに来て急にキナ臭くなっていますが、7月後半からヨーロッパを始めとしてリスクオフの動きが発生しています。
市場が暴落する様な落ち込み方ではありませんが、バブル化していた南欧債から、ドイツやアメリカ国債へのシフトが発生しています。
アメリカはテーパリングによって、米国債(長期債)のメインフレーヤーたるFRBが米国債の買い入れをこの10月にも終了します。米国債の金利が上昇しやすい状況にあって、地政学リスクによるリスクオフの動きは、米国債金利の上昇を抑制します。
この様な動くは、リーマンショック直後にはイスラエルがガザに侵攻したり、イラン危機が強引にクローズアップされるなど、米国債に金利上昇圧力が掛かるたびに繰り返されています。
今回のウクライナ問題に関しては、アメリカとロシアの阿吽の呼吸の様なものを感じるので、米国債支援、エネルギー価格の吊り上げ、今後の世界のブロック化への布石などの目的を持った共同謀議が遂行されているのでしょう。
■ 表面的対立は「興行」 ■
「世界共同謀議」という究極の陰謀論の視点に立つと、ウクライナ問題や尖閣問題などは全く別の姿を見せてきます。
今回のウクライナ危機もアメリカのシンクタンクである「ランド研究所」が筋書きを書いている様ですが、表面的な対立はプロレスの様なもので、一種の見世物に過ぎません。
大国同士が結託している事が公になれば、世界の人々は自分達の政府を全く信用しなくなります。ですから、多くの国の利害が対立していると思わせておいて、実は世界は裏では繫がっているほうが、色々を利益を最大化しやすくなります。
「対立」というプロレス興行を打っておけば人々はそれに熱狂し、一部の者達が利益を独占している構造を見逃してしまうのです。
ただ、「世界」は70余年の間、曲りなりにも世界戦争を回避してきているので、「世界の経営者」は私欲に溺れる悪意の存在とは私には思えません。ただ、それらしく世界を「運営」する中で、多くの悲劇が生み出され続けています。それとて、より大きな悲劇を防ぐ手段だとすると・・・・。
陰謀論者の戯言ではありますが、一見不合理に見える世界の動きは、意外にも合理的なのかも知れません。