■ 米国でもスケールメリットを狙ったソフトバンク ■
ソフトバンクが米携帯電話会社3位のスプリント・ネクステルを買収してから1年余り。
米国の携帯電話業界は上位4社のシェアが大きく、べライゾン・ワイヤレスとAT&Tモビリティーが2強。その半分の契約者数でスプリント・ネクステルとTモバイルUSが追う形でした。
2位と3位の溝は大きく、スプリント・ネクステルは高速通信の整備が遅れた為に利生者の流出が続き赤字を連続して計上していました。ソフトバンク買収後は積極的に高速通信網を整備していますが、利用者の流出に歯止めが掛かるには今しばらく時間が必要な状況です。
ソフトバンクのスプリント・ネクステル買収には???な点が多いのですが、どうやら孫氏は初めからTモバイルの買収を念頭に置いていた可能性があります。そうで無ければ、スプリントの経営改善が完了する前にTモバイルを買収する様な事はしないはずです。
2弱を統合してベライゾンとAT&Tとスケール的に対等に渡り合える第三の勢力を創る事で、業績が低迷していたスプリントとTモバイルの業績を急回復させる事が狙いだったのかも知れません。
■ 米の規制当局を説得出来なかった ■
スプリントとTモバイルの統合によって、より消費者にメリットのあるサービスを展開する事を孫氏は考えていた様です。これは、日本におけるソフトバンクの常套手段です。要は、アメリカの携帯電話サービスに低価格競争を持ち込もうとしたのです。
一方規制当局は、携帯業界が3強に絞られる事で競争が減少し、消費者にデメリットをもたすと判断した様です。多分、これは表向の理由で、ソフトバンクが仕掛ける低価格競争が過当競争お生み出して業界全体が疲弊する事を恐れたのでは無いでしょうか?
いずれにしても、スプリントによるTモバイルの買収計画は一旦棚上げになった様です。
■ スプリントの経営を再建できるのか? ■
スケールメリットという孫氏の戦略が頓挫した今、スプリント社が契約者の流出に歯止めを掛ける為には、高速通信網の整備と、低価格でサービスを提供する事しか方法はありません。しかし、これは利益を削る事になり、スプリント社の経営は改善しません。
各社高速通信網を整備しつつある現在、「ソフトバンクだけがiPhoneを扱っている」といった魔法の杖が無い限り、将来的にもスプリント社の経営の改善は望みが薄いでしょう。
■ 孫氏はハメられたのでは? ■
今回のTモバイルを巡る顛末は、バブル時代に三菱地所がロックフェラーセンターを買収した時の事を想起させます。
1989年に三菱地所はロックフェラーセンターを買収します。
これは、アメリカの富の象徴を日本人が買ったという事で、随分と攻撃されました。
ところが、三菱銀行はその後のバブル崩壊で、
結局、半額でロックフェラーセンターを手放しています。
買い取ったのは、ロックフェラーです。
実は、ここにはこんなトリックがありました。
<2chより>
1.バブルの時、不動産高騰で絶好調の三菱地所がNYのロックフェラーセンタービルを買収。
因みにその時アメリカ人は「アメリカの魂を買った」とかなんとか言ってジャパンバッシング。
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2.NYが新しい法律「NYの不動産やテナントビルの売買や賃貸は元の持ち主の許可を得ないと勝手に行ってはならない」を施行
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3オーナーなのに好きに売れない、テナントも入れられないで三菱地所涙目。家主の権利の大部分は何故かロックフェラーが保持。
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4.折しもプラザ合意で人為的にドルをドンドン下げ、ロックフェラービルの価値も下落。2年で買ったときの半額に。三菱地所超涙目
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5.バブル崩壊の足音が迫る中、さすがの三菱地所も持ちこたえられ無くなったところを、ロックフェラーが買い取りを打診。
背に腹は替えられず半額で売るハメに。三菱地所超々涙目
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6.先の法律を適用すればロックフェラービルの権利は旧オーナーの三菱地所が持つはずだが。その法律は買い戻した直後に無かったことに
三菱地所超々々涙目
<引用終わり>
結局、ロックフェラーは労せず多額の資金を手にいれたのでした。
これに似た事例は数多くありました。
その後、アメリカは詐欺同然の金融改革で、不死鳥のごとく復活します。
今回もソフトバンクがスプリントの買収を決定した時、円高は最高水準でした。実際に買収した時期は円安に振れていましたが、ソフトバンクは為替予約によって円安リスクを回避しています。
しかし、Tモバイルの買収を却下された為に、スプリント社を回復軌道に乗せる事が難しくなりました。
どうもソフトバンクはアメリカに嵌められた感じがします・・・。
■ 国内の通信事情の利潤率は低下して行く ■
国内では大手3社がiPhoneを扱う様になり、ソフトバンクの優位性は既にありません。さらに、スマホの通話料金の固定サービスが始まるなど、価格競争が激化しています。これでは、従来の様な利潤を確保する事は難しくなります。
さらにスプリント社が赤字を脱却出来なかった場合、ソフトバンクは要らぬお荷物を背負ってdocomoとauと渡り合う事になります。
■ これ以上早くペダルを漕ぐ事は可能なのか? ■
ソフトバンクは巨大な有利子負債を抱えています。今までは事業に陰りが見えると大型買収を繰り返して急場をしのいで来ました。要は自転車操業を繰り返しているのです。
ソフトバンクはスプリントの業績が悪化した場合、さらに大きな買収案件を見つける事が出来るでしょうか?・・・・多分、その可能性は低いはずです。
「自転車操業の極意はペダルを思い切り回す事だ」をモットーにこれまで拡大を続けて来たソフトバンクですが、今回の買収失敗が躓きの始まりとなるのか、それとも逆境を蹴散らして新たな発展を遂げるのか、ソフトバンクからは当面目が離せません。