■ バブルは需要超過で発生する ■
現在の日本株市場や世界の金融市場がバブルかどうか意見の分かれる所でしょう。
一番古いバブルは1637年に発生したオランダの「チューリップバブル」だと言われています。オスマン帝国から輸入されたチューリップの球根に高値が付き、人々は変った花が咲く球根を競い合って買ったといわれています。当時高値が付いた花の中には、モザイク病ウィルスに感染して花に斑模様が出ていたものも多かったのですが、それがウィルス病だと知られていない当時は、「変り咲き」として高値で取引された様です。バブル崩壊後は価格は100分の1になってしまいました。
チューリップバブルの発端は一部の愛好家達の間で珍種が高値で取引された事に始まり、そこに投機資金が流入して相場が一気に釣りあがります。「チューリップの球根は儲かる」という噂が庶民にも広がると、人々はなけなしのお金を叩いて、安いチューリップの球根から投資を始める様になり、チューリップの球根の価格は右肩上がりに上昇します。
この様に「右肩上がりに価格が上昇」し続ける間は、誰が投資しても儲かる状態で、噂が噂を読んで市場は過熱し、バブル状態になって行きます。
「チューリップバブル」はチューリップの球根という「現物」が投資の対象でした。チューリップの球根は増やすのが難しく「供給量」に制約があるので、投資による「需要」が拡大すると、需給バランスが崩れて値段が跳ね上がります。
この様に、かつて発生したバブルは急激な需要の高まりに供給が伴わないことで発生する現象っでした。日本の平成大バブルも似たようなプロセスで発生します。「土地は儲かる」という噂が噂を呼んで、地価が暴騰しました。
ただ、チューリップにしても土地にしても、実際の需要には限界があり、どこかで現実離れした価格に人々が気付くタイミングが在ります。そこで価格低下が発生すると、我先に売り抜けようとする為に、価格は実需のレベルまで急速に低下します。或いは、勢い余って適正価格以下にオーバーシュートします。
■ 資金供給が作り出すバブル ■
かつてのバブルが実需の拡大をキッカケに発生しのに対して、昨今のバブルは資金供給の拡大が作り出す傾向が強くなっています。
平成大バブルの原因も半分は資金供給サイドに有りました。円高不況を克服する為に日銀は金利を引き下げます。その結果、低利の資金の運用先として不動産市場に資金が流入します。その根底には日本の社会が成熟期に入り「誰もが持ち家を手に入れられる環境」が整った事で、しっかりした実需が存在していた事もバブルの成長を助長します。投機目的のバブルは金利や資金供給の変化に敏感で、プチバブルで崩壊する事が多いのですが、実需に裏打ちされたバブルは大バブルに発展しやすいのでしょう。「ちょっと値下がった今が狙い目」という意識がバブルを拡大します。
日本の平成大バブルは最初は住宅市場で発生しますが、その後、都市部の再開発やリゾート開発へと拡大して行きます。銀行は土地担保さえ取れれば収益性の怪しい開発にもジャンジャンと資金を貸し出しました。市場の過熱感が指摘されるに至り、日銀は重い腰を上げ、1990年に「総量規制」を導入してバブル崩壊を引き起こします。
1)景気刺激の為に金利が引き下げられる
2)成長する市場が存在し、資金がそこに集中する
3)しばらく低利の資金供給が継続され、バブルが成長し始める
4)バブルが需給の適正から大きく隔たるレベルまで成長する
5)低利の資金昇給が断たれ、バブルが崩壊する
■ 債券金融システムの発達が生み出したリーマンショック ■
アメリカのITバブルも80年代のアメリカの不動産バブル崩壊からの影響を受けています。この(プチ)バブル崩壊の影響を打開する為に金利が引き下げられていたことと、「ITという新しいビジネスへの期待感」がITベンチャー企業への過剰投資となってバブルを生み出しした。しかしITバブルも2000年代初頭に崩壊します。
ITバブルによって失速した経済をテコ入れする為にFRBは再び金利を下げます。この当時、日銀も世界で唯一量的緩和を実行しており、低金利の資金が過剰に供給される体制が出来上がります。これらの資金は債券市場を通してアメリカの住宅市場に流入し、サブプライムローンの拡大に繫がって行きます。
1)ITバブルの崩壊後FRBは金利を低めに誘導していた
2)日銀は量的緩和を遂行中で、円キャリートレードの形で金融市場に低金利の資金が流出
3)CDOなど流動性の高い金融商品が発達し、緩和マネーの受け皿になっていた
4)債券を元にしたCDOなどの商品の原料になる「債権」が不足していた
5)債券不足を補う為に金融機関はサブプライム層にまで積極的に資金を貸し付けた
ここら辺までが「資金供給過剰」が生み出したバブルです。
リーマンショックがさらに巨大化したのは、金融商品の発達という原因もありました。
6)金融機関が貸し付けた資金はフレディーマックなどが買い取りMBSに加工した
7)MBSに格付け会社が高い格付けをする事でリスクが見え難くなった
8)MBSはCDOなどに加工される事で小口化され流動性が飛躍的に高まった
9)CDS(クレジットデフォルトスワップ)によってこれらの金融商品のリスクヘッジが進んだ
10)投資銀行がヘッジファンドなどに多額の資金を貸し出した。
11)ヘッジファンドは過大なレバレッジを掛けて儲けを拡大していた。
これらの複合的要因によってリーマンショック前のバブルはパンパンに膨れ上がります。
■ FRBと日銀の資金供給が減少してリーマンショックは起きた ■
バブル発生のメカニズムはバブル毎に異なります。しかし、その崩壊のプロセスはどれも低金利の資金の供給が減少した事で起こります。
リーマンショックはサブプライム層の住宅ローンが焦げ付いた事で起こります。サブプライム層のローンは最初の5年程は金利が低く抑えられていましたが、その後は金利が跳ね上がります。
1) サブプライム層の金利は5年で急上昇する
2) 低金利でのローンの借り換えが出来れば破綻しない
3) FRBの利上げでサブプライム層のローンの借り換えが出来なくなる
4) 日銀の量的緩和終了も資金供給量の点から金利上昇を引き起こす
5) サブプライム層がローンの借り換えが出来ない為に住宅を手放す
3) 中古住宅市場で供給が過剰になり住宅価格が低下する
4) 住宅価格が右上がりになる事で新たな担保で借金をする前提が崩壊する
5) サブプライム層のローンが完全に崩壊する
サブプライムローンには5年目に金利が上昇するという時限爆弾が装備されていましたが、金利が低ければ借り換えを繰り返す事で破綻を先延ばしに出来ます。平成の大バブル崩壊後の日本はゼロ金利を維持する事で、銀行は不良債権を処理しました。しかし、アメリカでは金利が上昇に転じていたので、サブプライムローンの存続性は失われたのです。
■ 現在の世界経済はバブルか? ■
現在の世界経済がバブルかと問われれば、私的には答えはYESです。ただ、バブルにかつての勢いが無いので、バブルという認識からかけ離れた「静かなバブル」が進行しています。
先進各国は成長の限界に達しており実体経済需要は著しく低下ています。その為、住宅市場など特定な市場で庶民の資金を巻き込んだ巨大なバブルは形成し難い状況です。
一方、目を世界に転じれば、中国やアジア諸国、BRICs諸国に世界中から投資資金が流入しており、これらの国では明らかなバブルが発生しています。中国の不動産バブルは報道などで一般の人も知る所ですが、シンガポールやマレーシアなどでも高層ビルが幾つも建設され、さながらバブル期の東京を見ている様な状況が続いて来ました。
結果的に対外債務は対GDP比で、シンガポールで400%、マレーシアで65%にまで拡大しています。これらの投資を支えているのは、世界に溢れる過剰な金融緩和マネーです。そして、チャイナマネーも相当量流入しています。これらの新興国市場はバーナンキショックの例を見るまでも無く、金利の上昇に非常に脆弱です。
■ アメリカの芳しく無い経済指標が拡大する世界バブル ■
FRBは利上げのタイミングを米雇用統計やその他のアメリカの経済指標で計っています。しかし、アメリカ国内の成長力は弱いので、資金は金融市場を通じて新興国に投資されています。利上げのタイミングが遅れれば遅れる程、新興国はバブルの度合いを高めて行きます。
同様にアメリカの社債市場は、投資マネーの流入によって既にバブル状態になっています。社債市場は一般投資家が自由に参加できないので、バブルは株価よりも認識し難くなっています。国債市場も動揺で、既に国債金利は限界まで低下(価格は上昇)していますが、一般の人は金利低下を好感して危険を察知出来ません。
■ 金融緩和バブルはいずれ崩壊する ■
このブログの読者の皆さんが一番知りたいのは「金融緩和バブルがいつ崩壊するのか」という事でしょう。
ただ、それが分かれば今頃私はこんなブログを書かずに、億万長者になるべくこっそりと投資に勤しんでいる訳で・・・・。
ただ、過去の例を参考にするならば、FRBの利上げから2年以内に金融緩和バブルは崩壊するはずです。FRBの利上げ幅は小さなもので、利上げペースも非常にゆっくりでしょうから、利上げを無事に乗り切ってしまえば、市場は安心してしばらくはバブルを膨らめるでしょう。
但し、条件としては低利の資金供給が拡大し続ける事が重要で、FRBの穴は日銀とECBが補うことになります。ただ、日銀は異次元緩和の目標に2%のインフレ達成を掲げていますので、円安が進行し、原油価格が上昇に転じれば景気回復を伴わずとも2%のインフレ率を達成してしまう可能性も有ります。但し、「安定的に2%を維持する」という保険は掛けていますが・・。
FRBが利上げに入る中でこれ以上日銀に追加緩和をさせる為には、日本の経済が失速する必要が有ります。消費税10%引き上げがこの為に仕掛けかと私は妄想しています。
さらには、日本株の暴落も、日銀の追加緩和の理由になるかも知れません。「株価と経済を刺激する為には更なる緩和が必要だ」という大合唱が市場から沸き起こりそうです。(日銀がこれに答えるかは疑問ですが、少なくとも出口は確実に遠のきます。
この様に考えると、FRBの利上げから2年位はバブル崩壊は避けられるかも知れません。ただ、市場で話題になり始めている2017年問題(バブル崩壊10年周期説)も有りますし、BISが自国国際のリスクウェイトを変更する可能性を匂わせているのも不気味です。
私を始め悲観的な方は、「今で無いけど将来において緩和バブルは世界的規模で崩壊する」と予測しています。いえ、ほとんどの市場参加者が同じ考え方をしているので、過熱感の無いバブルが膨らんでいるのでしょう。皆さん、非常口のサインをチラチラと確認しながら取引を続けているのでしょう。
■ 過熱感を伴わないバブル ■
もう一度最初の質問に戻ってみます。
「現在の世界経済はバブルか?」
答えはやはりYESです。
ただ、現在のバブルは供給サイドで発生している為に需給の急激な変化を伴いません。市場は過熱感を伴わずに、静かに静かに沸点に近づいているのです。それまでは、小さな泡が生まれては直ぐに消えて行きます。
「突沸」という現象をご存知でしょうか。
フラスコに水を入れ、下から過熱してゆくと、ある衝撃で突然水が沸騰してフラスコから噴出す減少です。これは、水温の上昇がゆるやかに進行している為に水は100℃近くの温度でも沸騰するキッカケを失い、少しの振動などが原因で一気に沸騰する現象です。
私は現在の世界経済の状況に似ていると感じています。臨界点に近づいているのに、変化がゆるやかな為に誰もが安心して危機感を抱かない・・・。もう、充分に茹でガエルにはなってしまっているので、既に避難している人以外は昇天は確実なのですが・・・。
はてさて、「ちょっとのショック」が何なのか・・・これが分かればやはり億万長者になれるでしょう。
「東京直下で巨大地震が発生」などという誰も予期出来ない事態も「ちょっとのショック」のひとつなのでしょう。既に茹でガエルになっている私達に逃げ場は無いのかも知れません。(投資をしていなくても、日本国債の暴落などという事態からは殆どの人は逃げられません)
・・・・あれれ、最後はNEVADAブログになっちゃった・・・。