■ 日本に「司法の独立性」は存在するのか? ■
社会科では「国会は国権の最高機関」だと教わります。一方で「最高裁判所」は国会を監視する事で「三権分立」が成り立つとも教わります。
今回の安保法制の改正ですが、「集団的自衛権」は明らかに「憲法9条」に違反します。これは、ほとんどの憲法学者がそう解釈するはずで、彼らの立場からすれば「集団的自衛権を認めるならば、先ず憲法を改正する事が先決」となります。
しかし、しかし衆参両院で自公が安定多数を占める状況下では、「閣議決定」の内容が、形ばかりの審議を経て国会決議で決定されてしまいます。
この様な「国会の暴走」に対しては「最高裁判所」が「違憲判決」を出して阻止する安全装置が日本には有りますが、「一票の格差問題」を例に取るまでも無く、最高裁判所の「違憲判決」は軽視されています。
そもそも、「違憲判決」は安保法制が制定された後、国民の誰かが裁判を起こさなければ判決すら出ませんし、判決までには時間も要します。その間にも集団的自衛権が国会で認められた事実に基づいて、日本はアジアの集団保障体制に積極的に組み込まれて行くでしょう。
そもそも、「最高裁判所」が政治から完全に独立しているかは疑問が多く、最高裁判所の裁判官の審査は衆議院選挙と同時に行われますが、過去、これによって罷免された裁判官は一人も居ません。何故ならば、国民は最高裁判所の裁判官がどんな思想の持ち主かなどは知る由も無く、さらに国民審査は「×印」を付けるという「精神的に抵抗の有る方法」によって行われるので、結果的に罷免される事は100%起こり得ないのです。
今回の安保法制の改正は、憲法学者の多くが認める様に明らかに「違憲」ですが、はたして最高裁判所は今後起こされるであろう裁判で「違憲判決」を出すのでしょうか・・・「司法の独立性」が問われる事になります。(私は興味深々です)
■ 国会は国民を代表するのか? ■
そもそもの問題として、議会制民主主義における国会が国民の意見を代表するのか現状ははなはだ疑問です。
現在の衆議院選挙は「小選挙区制度」が採用されています。この制度では小選挙区で当選するのはトップの候補者だけです。候補者は「党の公認」を得られなければ、党の選挙組織を利用出来ないので落選します。
要は小選挙区制度においては「党の公認を得る事」が当選の絶対条件であり、その為には「党の執行部には絶対服従」である必要が有ります。この事実は小泉政権下でも郵政選挙で白日のものとなります。「郵政民営化に反対」した「抵抗勢力」は自民党の公認を得られずに無所属で立候補します。これに対して自民党執行部は「刺客」と呼ばれる議員を擁立しましました。
この様に現在の小選挙区制度においては議員は国民の意見を代表するのでは無く、党の執行部の意見を代弁する存在と化しています。
■ アメの政策で、ムチの法案を通す詐欺 ■
「政党支持は国民が自主的の選択するのだから、選挙によって国民の意思は国会に反映される」という主張もあるでしょう。
しかし、アベノミクスを観察すると次の事が分かります
1) 経済対策としてのアベノミクスを掲げて選挙を戦う
2) 金融緩和やバラマキ政策は選挙受けが良い
3) 公約では人気取りの政策と一緒に、安保法制改革や構造改革などを混ぜておく
4) 選挙で票を獲得した後に、国民が支持していない政策も公約として遂行する
アベノミクスで国民の多くが支持したのは「デフレ脱却」という経済政策でした。しかし、安倍政権は国会で安定多数を獲得すると、TPPや安保法制、構造改革といった国民が支持しているとは言えない政策を次々に実行に移して行きます。
本来は国民が「詐欺だ!!」と叫び声を上げ、内閣支持率がダダ下がりになるはずなのですが・・・アベノミクスの経済政策の効果が出ている様に報道され、「株価操作」で株高になって人々に利益が出ている間は、安倍政権批判の声は盛り上がりません。特に資産価値上昇の効果は資産を沢山保有している高齢者に恩恵を与えます。選挙の支配層である高齢者の支持が失われない限り、安倍政権は強引な政策運営や国会運営が可能となります。
■ 何故今、南沙問題がクローズアップされるのか? ■
先月頃から「中国による南沙諸島の岩礁の埋め立て問題」が米国によって急激にクローズアップされています。安倍政権も「アジア(日本)のシーレーン確保の為には由々しき問題」とG7で大きくフューチャーしています。
南沙諸島や西沙諸島での中国と周辺地域の紛争などは今に始まった話ではありません。それは今何故こんなにもクローズアップするかと言えば、その目的は安保法制改正への援護射撃以外には考えられません。
案の定、自民党支持者に関わらず、戦争の記憶に囚われていない若い世代の間にも、シーレーン確保の為には「集団的自衛権」を認める事も構わないのでは無いかという空気が漂っています。
■ 集団安全保障体制に移行する海洋アジア諸国 ■
安倍政権が強引なまでに「集団的自衛権容認」に突き進む理由は、東アジア、東南アジア地域(海洋アジア)における集団安全保障体制の確立に日本も参加する為でしょう。
アメリカは財政的な理由からも、世界の多極化の推進の動きからも、東アジア地域から軍を撤退させて行く方針です。これは「米軍のトランスフォーメーション」という政策として継続的に実行されています。海兵隊はハワイ-グアムラインまで後退します。
米軍が抜けた穴は海洋アジアの国々が集団で補わなければなりません。特に海洋進出を露骨に示す中国やロシアに対抗するには、各国個別では歯が立ちません。
中露を始めとする大陸アジアの集団安全保障体制は上海条約機構として既に実効段階に入っています。これに対抗する海洋アジアの集団安全保障体制が無ければバランスが取れません。海洋アジアの集団安全保障体制の確立は、世界の経営者のグランドデザインの一環なのでしょう。
既に自衛隊とフィリピン海軍の交流が発表されるなど、この地域での軍事協力は急ピッチで進められるでしょう。
■ 韓国と台湾はどうするのか? ■
気になるのは韓国と台湾です。
台湾は経済的には中国との関係が強まり、半ば中国の一部と化しています。ただ、シーレーンという意味において台湾が大陸アジア側に付くとバランスが大きく崩れます。多分、台湾は海洋アジアの国家群に付くと思われます。
一方韓国は大陸と陸続きで、軍事衝突の危険性の大きな地域です。ここで朝鮮戦争の様なリアルな戦争が発生する可能性は否定出来ず、その為に在韓米軍が韓国から撤退して米中や米ロの直接交戦を避ける手段が選ばれたのだと思います。
韓国一国で中露を相手にする事は不可能で、日韓関係が悪化した状況で韓国を救う事に日本国民は熱心にはなれないでしょう・・・。ですから韓国は大陸アジアの勢力圏に呑まれて行くと思われます。地政学的にもこの方が自然です。
■ 世界のグランドデザインの変更の前に国民の意見など無視される ■
この様な世界のグランドデザインの変革の前に、国民の声などは無いに等しいのですが、マスコミなどを使って「あたかも国民が望んだ」という演出が成されるはずです。
その為には尖閣紛争や、南沙諸島海戦、西沙諸島海戦などという分かり易い危機も演出されて行くのでしょう。
「安保法制改正」問題は「憲法問題」に矮小化される様にマスコミを始め誘導が始まっていますが、その裏にある大きな目的が報道される事は無いのです。そして、国民は国会という茶番でお茶を濁される事になります。