■ 「三橋教」という「邪教」の教義 ■
「三橋教」の信者やその周辺の「おかしなリフレ論者」が信望する教義は以下の3点でしょう。
1) インフレになれば全てが解決する
2) 「自国通貨建ての内国債は破綻しない」のだから国債はいくら発行しても構わない
3) 「国の借金は国民の資産」だから財政赤字の拡大は問題無い
本日はその第一の教義「インフレになったら全部解決しちゃうんだからね!!」に注目してみます。
■ リフレ論が想定する「良いインフレ」 ■
中途半端なリフレ論者は「インフレになれば全てが解決する」などと口にします。しかし、リフレ論で前提としているインフレは「良いインフレ」です。
「良いインフレ」とは、需要が拡大して物価が上昇する事を意味します。リフレ政策が「良いインフレ」を実現するプロセスは次の様に説明されます。
1) 何等かの要因で実需が潜在需要を下回っている
2) 通貨供給量を拡大する事によって貨幣現象として強引にインフレを引き起す
3) 将来的に物価上昇を予測した消費者は「今の安いうちに買っておこう」とする
4) 消費が高まる事で経済が活性化して物価上昇と賃金上昇の好循環が生まれる
安定したインフレが達成されれば経済に次の好循環が生まれます
1) 実質金利 = 名目金利 - インフレ率
2) 名目金利がゼロでも、インフレ率が上昇すれば実質金利はマイナスになる
3) 実質金利をゼロ以下に下げる事で企業の投資意欲を高める
■ 「潜在需要」は存在するのか? ■
ここで問題になるのが「潜在需要」です。リフレ政策の前提は「潜在需要」がそれなりに存在する事です。
「潜在需要とは消費に見合う所得や資産を有しながらも、実際の消費に結びついていない需要」と定義されるかと思います。
ここで注意が必要なのは潜在需要と「需要の先食い」とは別物だという事です。消費税増税前の駆け込み需要は、需要の先食いなので、増税後の需要は低下します。長期的に見れば需要はイーブンとなります。
「潜在需要」は「貯蓄や投資に回されているお金を今使う」事によって喚起されます。
しかし、現在の日本の様に年間1%ずつ労働人口が減少し、社会福祉コストが1兆円ずつ増加する社会では、基本的に需要は減少するのが当たり前です。潜在需要が多少顕在化した所で、安定したインフレを達成するまでに需要を高める事は容易ではありません。
そもそも、需要(消費)の中心世代はカツカツの生活を余儀なくされているので、消費は常に最大化されています。それでも「なけなしの余裕から貯蓄をす」る人も多いはずです。将来の子供の学費や住宅購入を考えれば当然と言えます。この世代は、将来的な物価上昇などでは消費を拡大しません。所得が多少増えても、それは貯蓄に回されます。
一方、資産を多く持つ老人は元々消費性向が低く、さらに日本の財政を考えると、貯金をして将来に備える方が多いでしょう。この世代はケチなので、物価が上昇すれば財布の紐を硬くします。
まあ、半分冗談みたいな書き方になってしまいましたが、現在の日本にリフレ論者が想定する様な規模の潜在需要が有るとは思えません。これは先進国各国に共通する問題です。
■ 現在のインフレは「悪いインフレ」として経済の足を引っ張っている ■
リフレ論者の多くは「異次元緩和以降日本のデフレ傾向は収まり、インフレが達成されているでは無いか」と反論するでしょう。
しかし、異次元緩和後のインフレ率の推移は、ほとんど原油価格の推移に連動しています。円安の進行で輸入物価や原油価格が上昇して国内物価は上昇に転じますが、原油価格の低下で上昇率は下がってしまいました。
http://d.hatena.ne.jp/abz2010/20150321/1426931389よりお借りしました。
上のグラフは原油価格の影響が二か月後に物価に反映すると想定して、消費者物価指数を二か月ずらして原油価格と比較したグラフです。ほぼ相関が有る事が分かります。
結局異次元緩和で実現したインフレの多くが、円安による原油価格や輸入物価の上昇が原因であった事が分かります。これは景気回復の結果のインフレでは無いので「悪いインフレ」として経済の足を引っ張ります。
私の仕事仲間は「最近景気が酷いね」という話で持ちきりです。異次元緩和でインフレは発生したのに景気は回復していない様に思えます。これって・・・「スタグフレーション」じゃね?!