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低金利の罠(3)・・・リーマンショックを生んだ低金利

2015-06-16 01:00:00 | 時事/金融危機
 

■ コナンドラム? ■



http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2008/2008honbun/html/i1210000.html より

2000年から2003年にかけて米国は度重なる危機に見舞わせれます。

2000年 「ドットコム」バブル崩壊
2001年 同時多発テロ
2002年 不正会計問題
2003年 イラク攻撃開始

この間、FRBのグリーン・スパン議長は政策金利を1%に据え置いて経済の回復を図ります。2004年に入ると米経済の回復が確実になり、政策金利は1.5%に引き上げられました。

ところが、FRBが政策金利を引き上げても米国10年債の金利は低いままで推移しました。これをしてグリーン・スパン議長は「コナンドラム(謎)」と呼びました。

■ 日本と中国の米国債購入が長期金利を抑制していた ■



グリン・スパンが「コナンドラム」と呼んだ現象の原因は意外にも単純でした。この時期、日本と中国が大量に米国債を購入していたのです。

2004年8月、イラク派兵によってドル安が進行し、当時117円/ドルで安定していた為替レートが105円/ドルまで跳ね上がります。

これに対して日銀は1日1兆円ずつ、40日にも渡り継続的に円売りドル買い介入を繰り返します。中国も同様に元安を維持する為に為替介入をしていたはずで、これが米国の10年債金利を抑制していました。

米国10年債金利の抑制の効果は、米国の市中の長期金利を抑制する効果として現れます。その事によって米国住宅市場は活況を呈し、ついにはサブプライム危機を生み出す住宅バブルへと発展して行きます。

■ 円キャリートレードの資金の流入 ■



2004年の日銀の介入以降、円相場は120円台(円安)で推移します。

日銀は2001年3月19日から2006年3月9日まで量的緩和を実施していたので、日本国内の金利が米国内の金利に比較して低く、2004年にFRBが金利を上げて以降、日米金利差が拡大したので、円を調達通貨とした円キャリートレードがリーマンショックまで続きます。この間、為替市場では「円売りドル買い」が活発に行われたので、円相場は120円台で安定します。

円キャリートレードの資金は金融市場で運用され、サブプライムローンを支えるリスクマネーの供給元の一部となっていました。

■ グロバル化した世界では、他国の低金利が米国のバブルを生みだす ■

発達したグロバル金融市場を有する世界では、どこかの国の低金利は、どこかの国でバブルを生み出します。

これも「低金利の罠」の一つなのです。

アメリカが利上げに成功しても暫くは、日銀もECBも出口戦略に辿り付く事は出来ません。出口を求めて彷徨う2年~3年の間に米国内や金融市場がバブル化するというのが、市場関係者の大方の見方かと思います。

ただ、その前にFRBの利上げで躓く可能性も有るので、債権金利がジリジリと上昇しているのでしょう。誰かが売り抜けている・・・。

市場関係者は長期金利の上昇を固唾をのんで見守っています。これが一過性の金利上昇では無く、長期的なトレンドと判断された場合、低金利でリスクを積み上げた市場は一気に崩壊します。