■ 地下空間は石原元知事の指示だった? ■
東京新聞より引用
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016091502000132.html
<引用開始>
--前略--
専門家会議は〇七年五月、ベンゼンで土壌が汚染されていた豊洲市場の地下利用について「有害物質が建物内に入る恐れがあるため、地下施設は造らない方がいい」と指摘。〇八年五月十九日、土を入れ替えて盛り土にする方針を決定した。
しかし、石原氏は〇八年五月三十日の都知事の定例会見で、海洋工学の専門家がインターネットで「もっと違う発想でものを考えたらどうだ」と述べていると紹介。土を全部さらった後、地下にコンクリートの箱を埋め込み「その上に市場としてのインフラを支える」との工法があると「担当の局長に言った」と説明していた。
当時は、六百七十億円と見込まれた汚染対策費が一千億円を超えるとの見方も出ていた。石原氏は五月十六日の会見で「もっと費用のかからない、しかし効果の高い技術を模索したい」と説明。五月二十三日の会見では専門家会議の座長が「新しい方法論を試すにはリスクが高い」と述べたことについて、「その人の専門性というのはどんなものか分からない。いたずらに金かけることで済むものじゃない」と反論した。
二カ月後の七月、専門家会議は敷地全体を盛り土にするよう都に提言した。都は翌月、工法を検討する別の有識者の「技術会議」を設置。その会議で、地下空間を設けて駐車場などに有効利用する公募案を候補の一つに選んだ。この公募案は委員の反対で不採用になったが、「浄化作業のため」とする都の別の提案で地下空間案が設計に反映された。土壌対策費は最終的に八百五十八億円となった。
--後略--
<引用終わり>
どうやら地下空間の採用された経緯が明らかになって来ました。
多くの方は上の様な報道を見て「悪いのは石原だ!!」と怒り心頭かと思います。しかし、建築業界に居る私にしてみれば、敷地全体を4.5mで盛土する方がナンセンスな話で、減額案として同等の安全性が確保される案を模索する事はプロジェクトとしては当然のプロセスだと思います。
■ 地下ピットの高さは最低でも2.0mは必要だろう ■
「専門委員会」は「有害物質が建物内に入る恐れがあるため地下施設は作らない方が良い」と提言しています。この為、都は地下に予定していた場内の作業用車両の駐車場を地上に移しています。
「専門委員会」の方々も素人では無いので建物の地下に「地下ピット」が必要な事位は理解していますから、「地下施設」とは「人が出入りできる空間」と解釈するのが妥当でしょう。当然、建屋の地下の盛土の量は地下ピット分薄くなる事は想定していたでしょうが、厚いコンクリートの床が被覆となるので、汚染物質が1Fフロアに漏出する事は無いと普通は判断します。
写真で見る限り、充分な耐震性を持たせた1Fの床を支える梁の高さは1m程度は在りそうです。写真で分かる様に、地下ピット内には配管類が沢山有ります。マンションなど地下ピットの高さが取れない建物では、配管を梁下に通せない場合が在ります。そこで梁に穴を予め開けておき、配管を梁に貫通させます。この穴を「ボイド」と呼びます。
ボイド「穴」を開けると梁の強度が下がりますから、事前に強度への影響を考慮してボイドの位置と穴を決める事が重要になりますが、建築現場では工事の過程でボイドの数が足りなくなったり、或いは、設計と違う配管ルートが出てきて追加のボイドを開ける事が有ります。その都度、強度的な検討をし、鉄筋を切らない位置をX線で探ったりします。
ただ、地下ピットの高さが十分に確保出来る場合は配管類を梁の下に設置します。ワザワザ梁の強度を下げてボイドを設置する必要も無くなり、さらに、配管類のレイアウトの自由度も、その変更の自由度も格段に向上するからです。上の写真で見る限り、豊洲市場の建屋の地下配管類は梁を回避して梁下で取りまわされています。これは合理的です。
さらに、排水などの配管は、水が自然に流れる様に「勾配」を持って設置されます。市場の様な大きな建物では、排水パイプの取り回しの距離も長くなるので、「水勾配」を付ける為の高低差も当然大きくなります。排水パイプが梁下ギリギリに設置されていないのは、「水勾配」が付いている影響です。
さらに様々な配管が交錯するので、をれを立体的に交差させる為に、配管や配線は梁下より下がって設置されます。
こうして考えると、梁の高さ1.0m程度と、少なくとも0.5mの梁下の配管スペースが必要になり、その下を人が通る様にする為には、地下ピットの高さは最低でも2.0mは必要になるでしょう。
これが人が普通に立って歩ける高さにする為には、3.0mが必要。そう考えると建物下の盛土の厚さは1.5m~2.5mという事になります。
■ もし仮に建屋の下も4.5mの盛土をしたら建物が地下ピット分高くなる ■
今になって「専門委員会」の先生や「技術委員会」の先生が、「建物の下にも4.5mの盛土が必要だ」と発言していますが、そうなると豊洲市場の建物は少なくとも現在よりも地下ピット分、高さが高くなり、1Fのフロアーレベルも現在より地下ピット分、少なくとも2.0m高くなってしまいます。
様々な大型、小型車両やフォークリフトが行きかう市場周辺ですが、そこがスロープになると大変不便です。なるべく建屋の周囲に平坦な場所を確保する為には、建屋周辺も2.0mに近い盛土がさらに必要になります。これはナンセンスです。
■ 盛土用土の量を減らし、工期を短縮するには地下は空洞の方が合理的 ■
「豊洲の盛土は外から持ち込まれた」と思っている方も多いかと思いますが、実は汚染土を浄化して利用しているものも多い。
「技術委員会」はこの浄化方法を検討する会議です。彼らが決めたのは次の内容です
1) ベンゼンだけに汚染された土壌は、バクテリアにベンゼンを分解させる
2) ベンゼンとシアン化化合物に汚染された土壌は高音で土よ焼く
3) 重金属で汚染された土は、水で洗浄する
などなど・・
あれだけ広大な敷地を2.0m掘り返し、その土全てを適当な除染作業をするのですから大変な作業量と工期を必要とします。さらに敷地全域をさらに外部から持ち込んだ盛土で2.0m被覆するとコストも膨らみます。
そこで、建物の地下を空洞とすると、コストと工期の大幅な短縮が出来ます。
1) 建物の場所の掘削を優先して行う
2) 建物地下の土壌をap.+2.0まで除いたら、下の地盤の液状化対策と基礎工事を開始
3) 建物部分の土壌は除染処理をして、建物以外の敷地の盛土に利用する
建物地下を空洞とする事で、工期も盛土の費用も大幅に短縮出来ます。これは現場から見れば合理的な方法です。
唯一の問題は「専門家委員会」が「地下空間の利用は好ましく無い」としている点ですが、地下ピットはいつも人が居る訳では無いので、問題は無いはずです。仮にベンゼンなどが充満しても、喚起装置を付、排気を活性炭などでフィルタリングすれば良い。簡単な装置で実現可能です。
■ 「技術委員会」も建物下に盛土が無い事は知っていた ■
上の図面は「第18回・技術会議」に提出された「土壌汚染対策工事完了状況のまとめ」と題された資料です。
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/siryou/gijutsu_siryou/#kaigi16
上記ページの第18回の会議の添付資料で確認できます。
この会議において「技術会議」のメンバーは建屋の敷地のレベルがAP.+2.0となっている事に誰も質問をしていません。(AP.+2.0とは盛土が無く、砕石層のレベル)
「技術会議」のメンバーは当然、現場の竣工確認もしているでしょうから、建屋の場所にぽっかりと穴が開いている事を見逃すはずが無い。
「我々は知らされていなかった」と怒って見せた技術会議のメンバーは当然、建屋の下に盛土がされない事を承知していたのです。彼らは嘘を付いていたのか、あるいは目が節穴で、図面の数値も現場の穴も見えなかったのか・・・後者とは考え難い。
■ アホらしい・・・揚水システム稼働前の盛土工事 ■
問題は青果棟地下の砕石層の上の水ですが、これは雨水だとしても、砕石層の下の地下水と水の循環が起きている可能性が有ります。
どうして水が溜まっているかと言えば・・・引き渡し以降に台風などで大量の雨が降ったから。本来なら揚水システムが地下水位をAP+.1.8mに管理するハズですが・・何と、揚水システムが稼働するのは開場に合わせた11月から。
http://ebagency.jp/blog/?p=4655
これ程バカらしい事は有りません。豊洲の盛土は砕石層によって地下水と遮断されているはずですが、実は11月までは雨で地下水面が上昇する度に、除染したはずの盛土の下部は地下水面に接していたのです。そこから毛管現象で盛土の上の方まで地下水は上昇して来ます。
せっかく苦労して除染した土壌は、揚水システムが稼働するまで、再び汚染されていた可能性が高いのです。これは、過剰な安全性を求めた「専門委員会」が砕石層のレベルをAP.+2.0と不必要に低い位置に設置してしまった結果に起きた事です。これをAP.+1.0程度にしておけば、多少の地下水位の上昇で盛土は地下水に触れる事は無かったかと・・・。
本来ならば、土の下で分からなかった事ですが、青果棟の地下が砕石剥き出しだった為にバレテしまった・・・。これ、共産党のお手柄と言うか・・・。
仮に青果棟の地下の水に汚染が見られた場合は、敷地全体の盛土が汚染だれている可能性が有り、ボーリング調査でそれが確認されたら、それこそ豊洲移転は延期されかも知れません。
共産党の都議達は、パンドラの箱を開けてしまったのかも知れません。
■ 小池知事の筋書通りに行くかどうか・・・ ■
小池知事とその周辺は、石原知事の指示で地下の箱構造が進められた事を事前に知っていたは可能性が有ります。要は勝算があってケンカを仕掛けた・・。
情報開示が的確にされていれば、コスト削減として都民の理解も得られたであろう計画変更ですが、環境派の抵抗を恐れてディスクロージャーを怠った為に大問題になってしまいました。
これによって、小池知事は都政を牛耳って来た一部勢力を「粛清」する事に成功すると同時に、東京都の官僚達に「私に逆らったらどうなるか」という強烈なトラウマを残す事に成功しています。これで東京都の官僚達も小池氏に逆らう事が出来なくなりました。
ここまでの筋書を誰が書いたのか・・・小泉元首相の飯島秘書官の様なキレ者が付いているのでしょう。
これで、青果棟の水に問題が無ければ、「安全宣言」を出して11月豊洲移転が実施され、小池氏の大勝利。
しかし、もし青果棟の水に汚染が検出されたら・・・そして敷地全体の汚染が問題視される様になったら、小池氏は爆弾の導火線に火を着けてしまった事になりそうです。
■ 小池氏の本当の狙いは「東京特区」 ■
先日、小池知事と竹中平蔵氏らが、内閣府地方創生推進局「国家戦略特区シンポジウム」なるものに出席されていた様です。
http://hashimotostation.blog.fc2.com/blog-entry-3166.html
私は元々小池知事と、彼女を担ぎ上げた勢力の狙いは「東京特区」にあると考えています。豊洲問題で東京都の官僚の首根っこをしっかり押さえ、今後は様々な改革を実施して行く事でしょう。本当にケンカのやり方が上手い。(これはシナリオを描いている誰かがキレ者なのですが)
小池劇場・・・三文芝居は庶民に受ける
私個人としては「東京の特区化」は「都市国家の戦いの時代」には不可欠と考えるので、反対ではありません。ただ、都民が「小池劇場」に踊らされて、知らず知らずの内に東京が特区かされる事に悲しさを覚えています。
ただ、民主主義は「衆愚主義」ですから、まともに民主主義を実行していたのでは、改革など出来ません。既得権は富裕層のみならず、貧困層にもあるからです。選挙民は決して既得権を手放さず、さらなる権利を要求します。
東京が世界でも魅力ある都市で在り続ける為に・・・規制改革は不可欠ですが、それで誰もがハッピーになれる訳ではありません。個人の努力と能力無くして幸せはやって来ないのは、世の理です。
・・・尤も、誰が一番得をするかと言えば、海の向こうの方々なのでしょうが・・・。