■ 低すぎる金利では実態経済を回復出来ない(低金利の罠) ■
極端な低金利下では実態経済への投資リスクが金利に見合わないので、緩和資金は資産市場に集中します。
こうして実態経済でのインフレが達成される前に資産市場がインフレを起こします。これが現在の世界の状況です。そしてインフレがさらに加速するとバブルとなります。
実態経済に投資するよりも資産市場で運用する法が資本効率の高い経済ではバブルは周期的に発生し、そのたびに崩壊の規模を拡大してゆきます。
■ 静かな不動産バブル ■
問題は資産市場のバブル化を防ぎながら実態経済のある程度のインフレが達成できるかですが、現在の日本の様に為替が下落する場合は輸入物価の上昇の形でインフレの達成が可能です。この場合、輸入価格の上昇は実態経済にとってマイナス要因ですから景気は回復せずに物価が上昇します。但し輸出企業は利益が拡大しますが、残念ながら日本の外需依存度は高度成長期程は高くありません。
結果的に国内に低金利に見合うリスクの投資先が見たらず、土地担保を有する者か、大企業に対してのみ低利で資金が貸し出されます。
異次元緩和の資金は地価の回復を促しましたので、昨日のクローズアップ現代の様に土地を担保として銀行と不動産業が結託して需要に見合わないアパートやマンションの建設が拡大しました。これはすでバブル状態で、大手デベロッパーの経営破たんが噂されています。
■ 日本株はバブルなのか ■
株価は秋の郵政三社の上場までは維持されるでしょうが、そこがピークだと読む投資家は多いと思います。日銀の追加緩和予測に依存する日本株は、日銀の追加緩和の可能性が低下すれば一気に下落に転じるはずです。ですから日銀が異次元緩和の出口政策を模索する2016年前に外国人投資家は売り抜けを図るはずです。
「平成大バブルの時は4万円まで上昇したから日本株は未だバブルでは無い」という方もいらっしゃるでしょう。当時の日本は銀行と企業が株を持ち合いしていたので、市場で流通する株式の量は現在より非常に少なかったのです。間接金融が主体の時代ですから、企業の資金調達で株式の比率は高くありあませんでした。現在は当時と比べ何倍もの株が流通しています。出来高を比較すれば一目瞭然です。
市場規模が拡大し流動性も高くなっているので、日本株が過熱気味になったとしてもバブル当時の4万円などという株価を達成することは不可能でしょう。現在の株高は円安を補完したものだとすれば18000円程度が妥当に水準かと思います。それ以上は「期待」による水増しです。
2万円の日経平均がバブルかと言えば、これも微妙で、日経平均に影響を与える銘柄を外国人投資家と日銀やGPIFが集中的に買い上げて作り出した平均株価です。トヨタやファーストリテイリング、ソフトバンクなどいくつかの株はバブル状態ですが、多くの銘柄は妥当な水準で取引されているのでしょう。
■ アメリカ株はバブルか? ■
アメリカも似たり寄ったりで、ダウが意図的に買い上げらています。あるいはアップルなどIT関連株が集中して買われています。
FRBのイエレン議長は利上げを前にして「株価は高すぎる」と牽制しています。利上げで株式市場が暴落する事を避ける為にリスク市場の過熱に水を差しているのでしょう。しかし、市場関係者は利上げ前までに思い切り株価を引き上げて売り抜けることを狙っていますから、イエレン発言で下げた分は、「雇用統計を好感」という理由を見つけて戻しています。
もっとも昨今の米株は「良い経済指標」が出ると利上げが意識されて下がる傾向にあったので、雇用統計の改善で株価上がるのは最近の動きに逆行しています。要は、売り買いの材料になるならばネタは何でも良くなっているのです。
これは明らかにゲーム状態で株価は既に実態経済から乖離しています。これをバブルと呼べるかとどうかは微妙ですが、FRBが相当利上げを上手に行わないと株価が暴落する危険をはらんでいます。
ただ、FRBと主力投資家達はインサイダーと言えなくも無いので、暴落するもしないも「世界の経営者」の腹積もりひとつなので、予測などしても無駄だというのが陰謀論的な思考です。
■ 既にバブル化している社債(ジャンク債)市場と国債市場 ■
金融経済が異常に発達した現代において平成大バブルの様な実態経済や不動産のバブル化を経ずして金融市場はバブル崩壊を起こします。
金融拡大の燃料は「債権」ですが、リーマンショックではアメリカの住宅債権が燃料の役割を果たしました。これはアメリカの住宅バブルという「目に見えるバブル」を伴っていたので、住宅バブル崩壊を予測していた人は少なくありません。ただ、そのタイミングを正確に言い当てる事が難しいのと、金融市場への影響の大きさを予測した人は多くはありません。
現在のバブルの燃料は何かと見回した時、それは異常に高値になっている債権であると言えます。要は「金利が低すぎる債権」です。
ずばりジャンク債を始めとする「社債」と「国債」です。
特にアメリカでは金利の安い社債を発行して自社株買いをするスキームが広がっていますから、社債市場の金利上昇は即座に株式市場に悪影響を与えます。
国債のリスクも低すぎる金利です。BISが制度変更を匂わせて牽制していますが、ドイツ国債の金利が上昇に転じるなど、金利上昇の傾向が見え始めています。日本国債も5年債金利がマイナスになった事をきっかけにトレンドが変化しています。
■ FRBは出口に辿り着くだろうが・・・きっと金融バブルは崩壊する ■
現在の金融市場を支えているのは「低利の緩和マネー」です。市場は金利上昇に極端に脆弱になっているので、緩和マネーの縮小を恐れています。
直近の金利上昇要因はFRBの利上げです。ただ、私はこれは無難に出口に到達すると思います。イエレン氏というよりはフィッシャ副議長がしっかりと根回しをして利上げに踏み切るでしょうから、市場は意外に動揺する事無く利上げを受け入れると思われます。これはバーナンキ前議長のテーパリング開始の時に似ているでしょう。
今年後半に利上げが行わるのであれば、夏ごろにリスクオフの動きが一度あって、過剰なリスクをふるい落とすイベントが仕掛けられるのでは無いかと思います。
問題は、利上げが実施されてからの金利上昇のペースです。これは米国債金利とのにらめっこになるでしょう。米国債金利を抑制する為には、米国債が魅力的である必要があります。
そこで仕掛けられるのがユーロ危機や日本の景気低迷ではないかと邪推します。ユーロ危機は火種が南欧債に仕込まれていますし、日本は消費税10%で景気減速は既にプログラムされています。ECBや日銀がさらなる追加緩和に追い込まれる時、資金は利上げを順調に進めるアメリカへと吸い寄せられて行きます。
全て順調の様に見えるのですが・・・・アメリカが景気回復でリスクテイクを拡大すればする程、金融市場の脆弱性は拡大して行きます。
どこかでブラックスワンが準備されているはずですが・・・それが何かが分からない。だからブラックスワンなのですが・・・。