人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

景気の回復感を伴わないバブル・・・超低金利下でのバブルの姿

2015-05-12 08:17:00 | 時事/金融危機
 

■ 低すぎる金利では実態経済を回復出来ない(低金利の罠) ■

極端な低金利下では実態経済への投資リスクが金利に見合わないので、緩和資金は資産市場に集中します。

こうして実態経済でのインフレが達成される前に資産市場がインフレを起こします。これが現在の世界の状況です。そしてインフレがさらに加速するとバブルとなります。

実態経済に投資するよりも資産市場で運用する法が資本効率の高い経済ではバブルは周期的に発生し、そのたびに崩壊の規模を拡大してゆきます。

■ 静かな不動産バブル ■

問題は資産市場のバブル化を防ぎながら実態経済のある程度のインフレが達成できるかですが、現在の日本の様に為替が下落する場合は輸入物価の上昇の形でインフレの達成が可能です。この場合、輸入価格の上昇は実態経済にとってマイナス要因ですから景気は回復せずに物価が上昇します。但し輸出企業は利益が拡大しますが、残念ながら日本の外需依存度は高度成長期程は高くありません。

結果的に国内に低金利に見合うリスクの投資先が見たらず、土地担保を有する者か、大企業に対してのみ低利で資金が貸し出されます。

異次元緩和の資金は地価の回復を促しましたので、昨日のクローズアップ現代の様に土地を担保として銀行と不動産業が結託して需要に見合わないアパートやマンションの建設が拡大しました。これはすでバブル状態で、大手デベロッパーの経営破たんが噂されています。

■ 日本株はバブルなのか ■

株価は秋の郵政三社の上場までは維持されるでしょうが、そこがピークだと読む投資家は多いと思います。日銀の追加緩和予測に依存する日本株は、日銀の追加緩和の可能性が低下すれば一気に下落に転じるはずです。ですから日銀が異次元緩和の出口政策を模索する2016年前に外国人投資家は売り抜けを図るはずです。

「平成大バブルの時は4万円まで上昇したから日本株は未だバブルでは無い」という方もいらっしゃるでしょう。当時の日本は銀行と企業が株を持ち合いしていたので、市場で流通する株式の量は現在より非常に少なかったのです。間接金融が主体の時代ですから、企業の資金調達で株式の比率は高くありあませんでした。現在は当時と比べ何倍もの株が流通しています。出来高を比較すれば一目瞭然です。

市場規模が拡大し流動性も高くなっているので、日本株が過熱気味になったとしてもバブル当時の4万円などという株価を達成することは不可能でしょう。現在の株高は円安を補完したものだとすれば18000円程度が妥当に水準かと思います。それ以上は「期待」による水増しです。

2万円の日経平均がバブルかと言えば、これも微妙で、日経平均に影響を与える銘柄を外国人投資家と日銀やGPIFが集中的に買い上げて作り出した平均株価です。トヨタやファーストリテイリング、ソフトバンクなどいくつかの株はバブル状態ですが、多くの銘柄は妥当な水準で取引されているのでしょう。

■ アメリカ株はバブルか? ■

アメリカも似たり寄ったりで、ダウが意図的に買い上げらています。あるいはアップルなどIT関連株が集中して買われています。

FRBのイエレン議長は利上げを前にして「株価は高すぎる」と牽制しています。利上げで株式市場が暴落する事を避ける為にリスク市場の過熱に水を差しているのでしょう。しかし、市場関係者は利上げ前までに思い切り株価を引き上げて売り抜けることを狙っていますから、イエレン発言で下げた分は、「雇用統計を好感」という理由を見つけて戻しています。

もっとも昨今の米株は「良い経済指標」が出ると利上げが意識されて下がる傾向にあったので、雇用統計の改善で株価上がるのは最近の動きに逆行しています。要は、売り買いの材料になるならばネタは何でも良くなっているのです。

これは明らかにゲーム状態で株価は既に実態経済から乖離しています。これをバブルと呼べるかとどうかは微妙ですが、FRBが相当利上げを上手に行わないと株価が暴落する危険をはらんでいます。

ただ、FRBと主力投資家達はインサイダーと言えなくも無いので、暴落するもしないも「世界の経営者」の腹積もりひとつなので、予測などしても無駄だというのが陰謀論的な思考です。


■ 既にバブル化している社債(ジャンク債)市場と国債市場 ■

金融経済が異常に発達した現代において平成大バブルの様な実態経済や不動産のバブル化を経ずして金融市場はバブル崩壊を起こします。

金融拡大の燃料は「債権」ですが、リーマンショックではアメリカの住宅債権が燃料の役割を果たしました。これはアメリカの住宅バブルという「目に見えるバブル」を伴っていたので、住宅バブル崩壊を予測していた人は少なくありません。ただ、そのタイミングを正確に言い当てる事が難しいのと、金融市場への影響の大きさを予測した人は多くはありません。

現在のバブルの燃料は何かと見回した時、それは異常に高値になっている債権であると言えます。要は「金利が低すぎる債権」です。

ずばりジャンク債を始めとする「社債」と「国債」です。

特にアメリカでは金利の安い社債を発行して自社株買いをするスキームが広がっていますから、社債市場の金利上昇は即座に株式市場に悪影響を与えます。

国債のリスクも低すぎる金利です。BISが制度変更を匂わせて牽制していますが、ドイツ国債の金利が上昇に転じるなど、金利上昇の傾向が見え始めています。日本国債も5年債金利がマイナスになった事をきっかけにトレンドが変化しています。

■ FRBは出口に辿り着くだろうが・・・きっと金融バブルは崩壊する ■

現在の金融市場を支えているのは「低利の緩和マネー」です。市場は金利上昇に極端に脆弱になっているので、緩和マネーの縮小を恐れています。

直近の金利上昇要因はFRBの利上げです。ただ、私はこれは無難に出口に到達すると思います。イエレン氏というよりはフィッシャ副議長がしっかりと根回しをして利上げに踏み切るでしょうから、市場は意外に動揺する事無く利上げを受け入れると思われます。これはバーナンキ前議長のテーパリング開始の時に似ているでしょう。

今年後半に利上げが行わるのであれば、夏ごろにリスクオフの動きが一度あって、過剰なリスクをふるい落とすイベントが仕掛けられるのでは無いかと思います。

問題は、利上げが実施されてからの金利上昇のペースです。これは米国債金利とのにらめっこになるでしょう。米国債金利を抑制する為には、米国債が魅力的である必要があります。


そこで仕掛けられるのがユーロ危機や日本の景気低迷ではないかと邪推します。ユーロ危機は火種が南欧債に仕込まれていますし、日本は消費税10%で景気減速は既にプログラムされています。ECBや日銀がさらなる追加緩和に追い込まれる時、資金は利上げを順調に進めるアメリカへと吸い寄せられて行きます。


全て順調の様に見えるのですが・・・・アメリカが景気回復でリスクテイクを拡大すればする程、金融市場の脆弱性は拡大して行きます。

どこかでブラックスワンが準備されているはずですが・・・それが何かが分からない。だからブラックスワンなのですが・・・。

<再録>ヨーロッパへのエネルギー覇権競争・・・シリア・ウクライナ・ギリシャ

2015-05-08 04:58:00 | 時事/金融危機
 

先ずはロイターのこの記事を読んで下さい。

「プーチン氏がギリシャ企業に資金供給用意、ガスパイプライン延長で」2015.05.08ロイター

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0NS1U820150507


<引用開始>

[アテネ/モスクワ 7日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は7日、ロシア産天然ガスをトルコに運ぶパイプライン「ターキッシュ・ストリーム」をギリシャ国境まで延長する計画について、プロジェクトに参加するギリシャ企業に対し資金供給を行う考えを示した。

ギリシャのチプラス首相が4月にロシアを訪問した際も申し出たが、この日チプラス首相と行った電話会談であらためて資金供給の方針を伝えたとしている。ロシア政府が明らかにした。

ロシアは昨年12月、欧州の反対を理由に、東欧向けにロシア産天然ガス運ぶパイプライン「サウスストリーム」を急きょ中止。その後ターキッシュ・ストリームに着手した経緯がある。

ロシアはこのターキッシュ・ストリームをトルコとギリシャ国境付近まで延長することでガスのハブ拠点を構築し、そこから南欧各国へ供給する構想を抱いている。

<引用終わり>






<再録  2015.1.7 人力でGO>



■ ウクライナとギリシャ問題はパイプライン? ■

EUから見捨てられそうになっているギリシャですが、中露との繋がりが深まりつつあります。

シリア問題も、ウクライナ問題も、ギリシャ問題も、その根本的な原因として、ヨーロッパへの石油やガスのパイプラインの問題に行き付きます。

シリアやトルコは中東からヨーロッパに繋がるパイプラインの通過点として重要です。
ギリシャはロシアから南欧に伸びるサウス・ストリーム・パイプラインの中継点です。



さらにギリシャはイラン、イラク、シリアを経由してギリシャに伸びるイスラムパイプライオンの建設予定地です。シリアのアサド大統領はこの計画を2011年に承認していますが、シリアの内戦の原因はこのパイプラインに有るとも言われています。

イランの天然ガスはトルコを経由してヨーロッパに供給されていまたが、イラン制裁でトルコがこのパイプラインを閉鎖していました。しかし、イラン制裁が緩和されたので、現在このルートは復活していると思われます。

トルコはギリシャと歴史的に対立しており、トルコのEU加盟はギリシャが阻止していました。今回ギリシャがユーロから離脱しそうですが、中露にそそのかされてEUからもから離脱した場合、トルコがEUに加盟すいるハードルは大きく下がります。

現在のウクライナとギリシャで起きている事は、ヨーロッパへのエネルギー供給の覇権争いであると私は邪推しています。

房総「素掘りトンネル」の旅・・・月崎-飯給

2015-05-08 03:51:00 | 自転車/マラソン
 




■ フルリジットMTBで養老渓谷へGO!! ■

iPoneの天気予報の雨予報に騙されてなかなか自転車で出動出来なかったゴールデンウィーク。5月5日は午後からは晴れる様なのでようやく出動。帰省中の娘とダラダラしていたら出遅れてしまい10時半に家を出ます。本日は行楽帰りの車が渋滞しそうなので、ドブ板の上の走行も覚悟で、クロモリ・フルリジットMTBのラレー君が相棒です。目指すは養老渓谷。

本日はブロックタイヤのMTBですから林道走行が可能です。養老渓谷から大福山を経由して、出来れば少しダートも走りたい。



養老渓谷へは3時間半で到着。メーター読みの平均時速は24Km/h。結構向かい風だったので、既に足は使い切った感じ。右ひざから下が攣ってます・・・。本日の養老渓谷駅前は新緑ハイカー達で大賑わい。

ここからは山道タイムです。先ずは大福山に登ります。養老渓谷側から大福山に登ると、最初に劇坂が現れます。斜度は部分的には15%を超えていそうです。ここをエッチらコッチラ乗り越えると少し坂は緩やかになり、新緑の山道を満喫出来ます。

本日はブロックタイヤのMTBなので道が少し荒れている月崎方面へ下ります。

■ 房総には「素掘りトンネル」が沢山残っている ■

月崎の駅を過ぎて、房総清澄ラインに合流する手前を走行中にチラリと「素掘りトンネル」らしき物が見えました。あわてて引き換えします。



実は岩盤の柔らかい房総半島には「素掘りトンネル」が沢山残されています。得に小湊鉄道の月崎周辺は集中しています。



こちらの「永昌寺トンネル」は明治31年に作られたとあります。「観音堀」という工法で断面が将棋の駒の様な形をしています。



内部はコンクリートの吹き付けはされておらず、岩がむき出しです。



反対側の出口です。なぜかこちら側はコンクリート・ドームになっています。多分崩落の危険があるのでしょう。トンネルを抜けると一気に山の中の雰囲気。イタチが道の脇の藪の中を走って行きました。

■ 小湊鉄道と並走 ■





しばらくすると道は小湊鉄道の線路と並走します。小湊鉄道に乗っている時、飯給と月崎の間は山の中を走っているのですが、トンネルを抜けた時に線路脇に道が見えて不思議だったのですが、この道だったのですね。





道は一応舗装されていますのでロードバイクでも走行可能ですが、舗装が荒れているのでMTB気分を味わえます。(ハンドルはドロップですが・・・)



しばらくすると2つめのトンネルが出現。こちらはアーチ形状です。短いので照明は付いていません。





こちらはツルリとした表面をしています。岩というよりは土に近い感じです。



しばらく進むと農家が有られます。田植えをしたばかりの田圃の畔道にキジが居ます。ケーン、ケーンと盛んに鳴いて縄張りを主張します。



竹林の中に庚申塚らしきものを発見。その先に第三のトンネルが現れます。



このトンネルも観音堀です。



トンネルの先で小湊鉄道の踏切を渡ります。



線路内に草が生えているのが、なんとも田舎のローカル線らしくてたまりません。



やはり単線は絵になります。



林道は飯給駅の近くで終点になります。真っ直ぐ直進すると農家が並ぶのどかな道になります。農作業の御婆さんが、「どこから来たの?今日は天気が良くて最高だよ」と声を掛けてくれます。子供の日なので鯉幟や幟が青空にはためいています。里見駅の手前で小道の旅は終わりです。ここからは通い慣れた養老清澄ラインを上総牛久方面に戻ります。



里見駅ではちょうど小湊鉄道の汽車(ディーゼル)が停車中。線路脇の藤棚が満開でした。



里見駅のちょっと先に「巧徳庵」というお蕎麦屋さんがあります。食べログなどの評価が高いので気になっていまいた。ちょうどお腹が空いたので、入ってみることに。



子上がりというか、民家の座敷に絨毯を敷いてテーブルとイスを配した店の作りで、靴を脱いで座敷に上がります。窓から小湊鉄道が見えるというのが売りみたいで、いろいろとディウプレーされています。「鉄ちゃん」の心をクスグル演出です。



3時前という事で、客は私を含めて3人。土日のお昼時は混雑する様なので少し時間をずらすと良いのかも知れません。お店は老夫婦二人で切り盛りされています。

名物は「鴨そば」なのだそうですが、天丼定食を注文します。

!!!蕎麦、美味しいです!!!

更科蕎麦ですが、これなら天丼では無く、盛りそばでも良かったかも知れません。もっと蕎麦を食べたい感じです。(天丼も普通においしかったです)

食べログでしらべたら、「上天盛り蕎麦」の天ぷらが素晴らしいのだとか。季節の野菜を中心に二皿も出て来るらしい。次はそれにしよう・・・。

ここから先は一路浦安へ。大多喜街道は案の定の渋滞。ドブ板走行になったのでMTBで正解でした。八幡宿からの国道は追い風で一気にスピードに乗ります。浦安到着は19時半。走行距離は152Kmでした。

ブロックタイヤのMTBで150Km走ると、「ガッツリ走った」充実感に浸れます。ラフに走れるので、この距離ならばロードより楽しいです。



日銀の出口戦略は実現するのか?

2015-05-07 08:58:00 | 時事/金融危機
 

■ 2016年にずれ込みそうな日銀のテーパリング ■

日銀の異次元緩和の目的は「2%のインフレ率の達成」です。

1)「ゼロ金利の罠」が発生している状況では金利はゼロ以下にはならない
2)実質金利をゼロ以下にするにはコンスタントに適度なインフレの達成が必要
3)異次元緩和は通貨を大量発行する事で通貨価値を意図的に棄損してインフレを達成する
4)国内の需要は限定的の為、主に為替市場の円安効果により輸入物価が上昇する

出だしこそ順調に見えた異次元緩和ですが、「円安のひと段落」と「原油価格の下落」でインフレ率達成が先延ばしされる事が確実となりました。原油価格が回復し始めたので2016年度中に日銀の目標は達成されるかも知れません。

■ 日銀はテーパリングに踏み切れるか ■

極端な量的緩和など非伝統的金融政策の難しいのは「出口」です。

1)物価目標を達成する前に市場は日銀のテーパリングを意識する
2)緩和マネーの減少を予測して資産市場で資金の逆流が発生する
3)株価が大きく下落したり、不動産価格が下がったりする
4)資産市場が「バブル状態」にある場合には「バブルの崩壊」を引き起こす可能性が有る

リーマンショックの遠因の一つに日銀の量的緩和の縮小があったと言われています。資産市場がバブルに近い状態では、日銀が「出口」と口にしただけで市場は過敏に反応します。

■ 実態経済の回復を伴わないインフレ目標の達成 ■

仮に2016年度中にインフレ率が目標の2%に達したとしても、その原因が輸入物価の上昇というコストプッシュインフレである限り、実態経済の回復は限定的です。実際の現在の日本の世帯消費はマイナスを更新し続けており、国民は消費を手控えて物価上昇に対抗しています。実質所得が低下しているので当然とも言えます。

リフレ論者の多くが、「実質所得の上昇はインフレの達成からしばらくして始まる」と説明します。輸出企業を中心に雇用と所得が改善しているので政府は「雇用は改善している」と説明しますが、平均所得は低下しています。

要は、正規社員より非正規社員の増加ペースが高いので、雇用の質が低下しながら雇用者数が増加しているのです。企業は輸入原材料のコストアップを吸収する為に固定費を削らざるを得ず、それは賃金や雇用に悪影響を与えます。

現在、原油価格下落の影響で、企業は一息付く状況ですが、既に原油価格は上昇に転じて60ドル/バレルに近づいています。70ドル当たりで落ち着くとは思われますが、原油安の恩恵も限定的となります。

この様に2016年度中に日本の実態経済が回復して、その結果需要が拡大して2%のインフレ率が達成される見込みは高くは有りません。

■ 日銀はゆるやかに国債の購入量を減らしてみる ■

いずれにしても2%のインフレ目標に到達した場合、日銀はゆるやかに国債の購入額を減らす必要に迫られます。異次元緩和を継続した場合、財政ファイナンスの疑いが濃厚になるからです。そうなれば為替市場で円が売られ、円安が加速し、物価上昇のペースが2%を上回る可能性が有ります。

現在、新発国債のほぼ全量に匹敵する額を市場から買い入れている日銀の存在は「池の中のクジラ」です。そのクジラが方針を変えるのですから、うまくやらないと国債市場はパニックを起こします。

最初は購入国債を月額5000億円減らす程度かもしれません。5000億円程度なら金融機関の有り余る資金で十分消化できるはずです。こうして、毎月日銀は市場お様子を伺いながら徐々に国債の購入額を減らして行きます。

■ 日銀の当座預金金利の維持は、テーパリングの為? ■

金融機関は日銀の当座預金に退蔵していた資金で国債を購入するはずです。その為には国債金利が日銀の当座預金金利よりも低い事が必要になります。政府の財政じ状況を鑑みるに、いたずらに国債金利は上げたく無いはずです。さらに、国債金利が上がるり出すと、金融機関が手持ちの金利の低い国債を手放して金利上昇が加速する可能性も否定出来ません。

ですから、日銀は国債金利を低位に維持しながらも国債市場に資金誘導を図るでしょう。その為には日銀の当座預金金利の引き下げが一番効果的でしょう。

こうして民間銀行は短期国債を中心に日本国債の買い入れ量を増やして行くはずです。長期国債は当分は日銀が中心になって買い入れるものと思われます。

■ 償還期限を迎えた国債もしばらくはロールオーバーするだろう ■

出口戦略や、金融政策の正常化というと、日銀が手持ち国債を市場で売却するイメージが有ります。しかし、テーパリングを終了するまでは日銀の市場での国債売却は有りえません。

その間にも日銀の保有する国債で償還期限を迎える物があるはずです。テーパリングで非常に微妙な国債需給の状況下で、政府が借換債を市場で売却する事は難しいと思われます。そこで、日銀はしばらくの間、借換債を直接引き受ける事になると思われます。

■ 消費税増税の不景気と、国債市場の需給安定で国債金利を抑え込む作戦 ■

リフレ論者の脳内イメージでは、「出口戦略」が始まる時は景気回復が本格化した時だと思います。しかし、アメリカの例を見ても、実態経済の回復のスピードは極めて緩慢で、実質成長率がゼロに張り付きそうな状況です。

多分、2016年以降、オリンピックという多少のカンフル剤はあったとしても、日本全体としては景気回復は緩慢なはずです。これは資金需要の不足から市中金利を抑制するので、結果的に日本国債金利を低位で安定させる事が可能となります。

2016年後半からは消費税増税が意識され始めるので、多少消費が改善しますが、消費税が10%に引き上げられる2017年4月以降の消費は悲惨な事になりそうです。その影響はしばらく続きますので、金利は低位で推移するはずです。

金融機関の米国債程度しか運用先が無いので、日本国債市場で資金運用を続けるはずです。

■ 円安によって維持されるゆるやかなインフレ ■

問題は、年々1兆円ずつ福祉コストが増大し、景気が大幅に改善する見込みは無いので税収は40兆円から50兆円の間で推移するであろう事です。消費税増税で多少の時間稼ぎは出来ますが、いずれ財政の増加はそれをも飲み込んでしまいます。法人税が減税されれば、消費税増税の効果は相殺されてしまいます。

仮に2016年からテーパリングが始まるとして、いつまで日本の財政は持つのか・・・?

日銀と財務省の用いている手段は明らかな「金融抑圧」ですが、継続条件は二つあります。

1)ある程度のインフレ率が継続する事
2)日本国債金利が十分低く抑えられている事

異次元緩和以来、インフレ率の上昇は円安による輸入物価の上昇によってもたらされているので、150円代に向けてゆるやかに円安が進行していると都合が良いのでしょう。アメリカが利上げに成功すれば150円代の円安も現実味を帯びて来ます。

■ 問題はBISの制度変更と、2017年問題 ■

私達にはハッピーでは有りませんが日本国債の継続性は2020年頃までは問題が無さそうです。ここら辺は日銀も財務省も周到です。

ただ、問題はBISの制度変更と、2017年問題です。

BISが仮に自国国債をリスク資産する制度変更をするとすれば、その運用開始は2019年以降です。この時、日銀が順調にテーパリングを進め、消費税増税も実施されていれば日本国債の格付けをAA以上に維持する事で、日本の金融機関はリスクゼロで日本国債を保有し続ける事が可能です。多分、これは実現すると思います。

問題は2017年問題です。
これは、ブラックマンデー以降、ITバブル、サブプライムショックとアメリカ経済が10年周期でバブル崩壊を繰り返している事から、次のバブル崩壊を2017年とする経験側的な予測ですが、アメリカが利上げに成功した場合、起こらなくも無い事象だと思われます。

■ 日本国債の継続性よりも、米国バブルや中国のバブル崩壊に注意すべき ■

私は日頃から「日本国債暴落」の危機を煽っていますが、それでも5年後、10年後に日本国債が暴落するとは考えていません。むしろ日銀と財務省は景気と為替を上手にコントロールして日銀のテーパリングを長期化させ、財政ファイナンスを細く長く継続すると思われます。

しかし、怖いのは米国発の経済危機の再発や、中国のバブル崩壊でしょう。

こちらは日銀や財務省ではコントロール不能で、その影響はリーマンショック以上に深刻です。「中央銀行の非伝統的な金融施策を持ってしても崩壊は再発した」という事実は、通貨の信用を大きく損なうものとなるはずです。

なぜならば、次なる量的緩和の効果に誰も期待出来なくなるからです。

多分、日銀も財務省もある程度はこうなる事を予測していると思われます。そしてその対策として、日本の金融機関の国債の残存年数を極端に圧縮する指導をして行くのでしょう。


その後の事は・・・野となれ山となれ・・・。
問題は2020年のオリンピックがどうなるのか・・・。
上手く行けばによっては景気回復の足がかりとなるのかも知れません。


最後は希望的観測となりましたが・・・いずれにしても今のままでは日本の人口動態が悪すぎます。TPPも絡んで、外国人労働者の受け入れが急ピッチで現実化するのでしょう。ここでもオリンピック需要による建設業界の人で不足が追い風になりそうです。


陰謀論的には、まんざら悪く無いシナリオです。

この映画を見ればテロとの戦争が分かる・・・『あの日の声を探して』

2015-05-06 13:41:00 | 映画
 







■ 今、絶対に見るべき映画 ■

新宿武蔵野館で上映中の『あの日の声を探して』はチェチェン紛争を舞台にしたフランス映画です。

両親をロシア兵に殺され、赤ん坊の弟を抱えて村から逃げた9歳の少年ハジ。EUの人権委員会の職員としてチェチェンの惨状を世界に伝えようとするフランス人女性キャロル。街角で大麻を吸っている所を逮捕され軍に強制入隊させられた19歳のロシア青年。この3人」の体験を通して、チェチェンで起きている「テロとの戦争」を克明に描き出しています。

ストーリーや内容はあえて書きません。
「今、絶対に見るべき映画である」事だと確信しています



■ チェチェン紛争とは何か ■

チェチェンは旧ソビエト連邦の一員でしたが、イスラム教徒が多くロシア人とは歴史的に対立してきました。ソビエト崩壊後の1991年、チェチェンは一方的に独立を宣言しますが、エリツィン大統領はこれを認めず1994年12月に軍を派遣します。これに対してチェチェンに集結したアルカイーダを始めとするイスラム兵士らは果敢に抵抗し、ロシア軍は撤退を余技無くされます。これが第一次チェチェン紛争。

1999年にモスクワでアパートが爆破され百数十名が死亡します。この犯人はチェチェンの独立派とされ、プーツィン首相は9月にロシア軍のチェチェン投入を決定します。これが第二次チェチェン紛争、この映画の舞台です。

チェチェンの村々に侵攻したロシア兵はテロリストの尋問と称してチェチェン人の暴力を振るい、時に虐殺します。チェチェンの村々の男性の多くが銃を手にしてロシア軍を攻撃して来るので、ロシア軍にとってはチェチェンの男達は全員テロリストに見えるのです。そしてそれを庇う女子供もテロリストの協力者にしか見えません。

第一次チェチェン戦争当時、ソビエト連邦の崩壊によってロシア軍は人員が不足していました。チェチェンに投入されたのは軍隊経験も無い多くの若者でした。短い訓練の後、銃弾が飛び交う戦場にいきなり突っ込まれた彼らにとっては、銃を撃って抵抗して来るチェチェン人は恐怖の対象だったのです。

こうして多くの村で多くのチェチェン人達が殺され、多くの難民が村を後にします。


■ アメリカの「テロとの戦い」と同質のチェチェン紛争 ■

チェチェンの惨状に世界が黙っていた訳では有りません。しかしプーチンはチェチェン紛争は「テロとの戦い」だと主張します。

チェチェン独立派は、ロシア国内で度々テロ事件をぽ越していました。そして当時、アメリカはアフガンやイラクで「テロとの戦い」を遂行中だたたので、911に端を発するアメリカの「テロとの戦い」と何が違うのだと開き直ったのです。

これは独立運動を「テロとの戦い」にすり替える詭弁以外の何物でも有りませんが、一応ロシア連邦を正式には離脱出来ないチェチェンはロシアの国内問題だと主張する事も可能です。

一方、アメリカは「テロ」を口実にアフガニスタンやイラクなど全くの他国を攻撃しているので、プーチンに言わせれば、「アメリカの戦争が許されるのならば、ロシアの戦争が許されない訳が無いと」となるのでしょう。確かにその通りではあるのですが・・・。

結局、イラク、アフガニスタンで起きている事と、チェチェンやグルジア、そしてウクライナで起きている事は全く同質の事なのです。

ロシアの場合は・・・
1)ロシアの安全保障や資源獲得に不可欠な地域の独立を認めない
2)独立運動を「テロ」と称して軍事的に制圧する
3)テロリストは自国の自由を勝ち取ろうとする人々
4)テロと戦うのは貧しいロシアの若者達

ウクライナ紛争は構図が逆になります。ウクライナのロシア系住民がウクライナ人からテロリストとして敵視されています。ただ、ロシアは自国の利益の為にウクライナのロシア系住人を支援しています。戦っているのはウクライナの人々同士です。

アメリカの場合は・・・
1)アメリカの安全保障や資源獲得に不可欠な地域の利権を手に入れようとする
2)他国の政権に「テロリスト」のレッテルを張り攻撃対象とする
3)実際には911などのテロを実行したのが誰かは???
4)テロリストは自国の自由を勝ち取ろうとする人々
5)テロと戦うのは貧しいアメリカの若者

ISIL(イスラム国)との戦いは構図が複雑です。ISILは元々アメリカの仕込みですが、彼らはアメリカと敵対するアサド政権などを弱体化しつつ、アメリカに空爆の口実を与えています。

■ メディアが見落としてしまう「リアルな人々」の存在感 ■

『あの日の声を探して』という映画が素晴らしいのは「正義」を保留にして「事実」を見つめようとしている点です。

映画監督がこの映画を撮る動機の一つに「チェチェンにおけるロシア軍やロシア政府の蛮行を告発する」という目的があるはずです。しかし、彼はこの「分かりやすい正義」をひとまず保留します。

戦争に翻弄される少年、戦争を前にあまりにも無力な女性、戦争の狂気に取り込まれる青年の姿を淡々と追う事で、チェチェンで起きている事をありのまま視聴者に提示しようと試みています。

戦争は国と国との利権の衝突で発生しますが、戦場ではそんな事は何ら関係有りません。銃弾や爆弾を避けて今日を生き延びる事、敵に撃たれる前に撃ち殺す事。単純なルールが人々を支配し、その総体として「戦争」が遂行されて行きます。

メディアやジャーナリズムは往々にして「正義」に訴えようとします。自分が「正義」の側に立つ事で彼らは人々の共感を得、そして力を得るからです。

しかし実際の戦場では「正義」なんぞは犬に食わせた方がましです。「生き延びる」事が全てだからです。ジャーナリズムが「正義」を旗印とする限り絶対に伝えられないのが「戦争の真実」なのかも知れません。

このギャップを埋めようとするジャーナリストも多く居ます。戦場に飛び込んで人々の生活を必死に伝えるカメラマンやレポーターは少なくありません。ただ、彼らの必死のレポートもニュースネットを通して伝わる間に「正義」に塗りたくられてしまいます。

『あの日の声を探して』はフィクションです。シナリオが有り、舞台セットが有り、俳優達が演じています。決してジャーナリズムでは有りません。しかし、「演じる」事で「戦場とそれに関する人達を再構築」しようとする行為は、慎重に「正義」の存在を回避しようと試みまています。ただひたすら、そういう状況に陥った時に人はどうするのかをシミュレートします。ただ、この作品が「ドキュメンタリー的か」と問われれば答えはNOです。ヨーロッパ映画の積み重ねてきた「語法」に極めて忠実な作品です。映画としての完成度は極めて高いものがあります。

折しも、NHKの杭ローズアップ現代の「やらせ事件」が注目を集めています。真実を伝える為には「現実の映像」は説得力が足りないので、昔からこの様な演出はニュースやドキュメンタリーでは常套的に使われています。私達は「現実」と錯覚しながら出来の悪いフィクションを日常的に見せられているのです。同じフィクションの土俵に立った時、この映画の完成度は圧倒的とも言えます。

映画というフィクションは現実を伝えるジャーナリズムを超える瞬間を手に入れる事もあるのでしょう。その稀有な例として『あの日の声を探して』は必見では無いでしょうか。



ちなみに大学1年の娘と一緒に観ました。映画が終わった後目を涙で腫らしていました。若者は感受性が強いなと思いながら「泣いたの?」と聞いたら、「隣のオバサンなんて号泣うだったよ!!」と言いました。私が泣けなかったのは心が純粋で無いから・・・・?

劇場は映画が好きそうな中高年と、若干の若者で立ち見が出る状況でした。