魔人ハンターミツルギさんがアメリカで骨折して、その時の気分を芝居にしたのがこの作品です。転んでもただでは起きない、彼らしい。どんなことでも、ネタにする。その心意気たるや。でも、この芝居のどこを見ても、「骨折」という事実が反映されていない。何のための経験なのか、とあきれてしまう、くらいに骨折が意味をなさない。それって、別の意味ですごい。ミツルギさんは、今回、タイトルにだけ、骨折という痛い体験を使っ . . . 本文を読む
先日、安藤尋監督の『海を感じる時』を見て、感じた違和感はなんだろうか、とその事が気になっていた。原作である中沢けいの小説を読んだ時の気分にも似ている、と思った。原作を読んだのは、今から30年以上前の話だ。そんな昔のことをどうして憶えているのか、というと、あのざらざらした気分がとても不快だったからだ。こんな小説、きらい、と思った。まだ10代の頃で、主人公の男女が自分と同世代、同じ時代を生きていると . . . 本文を読む
あまりふしぎじゃないんですけど。というか、いろんな意味でふしぎな映画ではある。なぜ、この企画を取り上げたのか。どうしてこういう映画になったのか。そちらが映画よりずっと不思議なのだ。
これは大人のファンタジー映画を目指した作品なのだろうけど、作りが少し甘すぎる。サユリストのための映画になったのがつらい。永遠のマドンナ吉永小百合。そこには異論はない。だが、そんなことを言いたいがためにこの映画を作 . . . 本文を読む
ゲームの映画化らしい。宣伝では『劇場版 零』というタイトルになっていたけど、スクリーンではちゃんと『零』だけになっていた。少女たちが神隠しに会う、というストーリーはピーター・ウィアー監督の『ピクニック・at・ハンギングロック』を思わせる。そんな映画なのだ。それだけに、この終わり方は惜しい。少女たちの時間を描くダークファンタジーであり、パッケージングは「ホラー映画」にしてあるが、安里監督のねらいは . . . 本文を読む
リー・ユーの映画は見ていて、きつい。でも、目が離せない。手持ちカメラによる映像はドキュメンタリータッチということよりも、不安定で見ていて、気分が悪くなる。でも、そんなカメラが追いかける彼らから目が離せない。3人の男女が主人公だ。彼らに部屋を貸すことになったひとりの中年女性がもうひとりの主人公になる。価値観も、背景も違う両者が衝突しながら同居する。
2009年、中国の古都四川省、成都市が舞台と . . . 本文を読む
『ストロベリーショートケイクス』『スィートリトルライズ』の矢崎仁司監督の新作なので、
緊張感のある映画になっている。スクールカーストを描く。10年後と高校3年の頃を並行して描く。あの頃と今だ。主人公の3人の少女とその後の3人。(宣伝ではふたりのキョウコの対比でお話が進行するようになんているが、実はもうひとりの女の子がキーマンになっている)
教室の女王である響子は、転校生の今日子から名前を奪った . . . 本文を読む
原作が出たとき、読んだ。壮絶な話だった。あまり海外文学は読まないのに、なぜ、これは読んだか、忘れていた。今回、映画化を知って、今頃なぜ、これが映画になるのか、不思議に思った。あの嫌な気分がよみがえってきた。きっと嫌な映画に違いない、と知りつつも、劇場に行ってしまった。何が、そこまで僕を引き付けたのか。アゴタ・クリストフの小説は91年に日本で出版されたから、今から20数年前に読んでいる。その時、受 . . . 本文を読む
中沢けいの原作は発表されたときに読んだ。現役女子高生による作品というのが、当時は評判になったけど、あの頃は自分も小説家を目指していたから、同世代としてショックだった。先を越された、とかいう大胆なことを言うつもりはない。自分にそれだけの才能があるとは思わないけど、なんだか悔しかったことだけは憶えている。
時代は変わった。今では誰でも、小説家にも映画監督にだってなれる。(わけではないかぁ)ただ、 . . . 本文を読む
堂々のエンタメ芝居なのである。だが、ただのエンタメではない。北村想が空の驛舎のために書き下ろした新作である。しかも、夢野久作『ドグラマグラ』の舞台化作品だ。もちろんただの脚色ではない。想さんの世界観が反映されている。特に演劇論を展開していく部分は、白眉だ。しかも、そのシーンが作品にとってあまり関係ない。インターミッションのような役割を果たす。どうなっているのだ、と思う人も多々あるだろう。だが、そ . . . 本文を読む
ウイングフィールドで1カ月に及ぶロングラン公演をした。なんと、44ステージだったらしい。もちろん、あの時にも見ている。このド派手な芝居があの狭いウイングの空間で演じられ大変だった。だが、あの熱気は今も僕の心の中にある。戦場をここに作った。彼らの臨む局地戦が、目の前で展開し、その迫力に圧倒された。みのべなおこさんが主人公のキリコを演じた。懐かしい。
もう18年前になるらしい。(らしい、ばかりに . . . 本文を読む
実に刺激的な作品を見た。昔、キャンパスカップの予備選考をしていた時、彼らの作品を推した。あの時も、とても刺激的な作品を作る集団だ、と思ったけど、(同じこと言ってる! 語彙少なすぎ)今回、久々に柳沼さんの作品を見て、こういうアプローチが好き、と改めて思う。それは前作『国道、業火、背高泡立草』のチラシを見た時にも、感じたことだ。「これを見たい、」と心から思った。年間、1000本くらい(いや、もっとか . . . 本文を読む
年の離れた兄と弟の話だ。12歳も離れている。大泉洋と染谷将太が演じる。北海道の空知が舞台だ。そんなことより『しあわせのパン』の三島有紀子監督作品というほうが早い。それだけでこの映画がどういうルックスを持つものなのかは理解できるはずだ。あのファンタジーの世界が再び。
今回はワイン作りの話。有名な指揮者だった兄は、耳が聞こえなくなり(突発性難聴症)、音楽をあきらめて、ふるさとの村に帰ってくる。そ . . . 本文を読む
こんな映画を見たかった。まるで夢のように物語の世界に誘われて、知らない町をさまよい歩く。やがて、その知らない町のお話の世界の中に誘い込まれて、まるでその住人の一人のようになる。
ただの旅人だったはずなのに、自分がなんだか知らないうちに重要な人物になっている。でも、それは過去のお話で、そんな過去の真実を今、彼らの話を通して知る。どうして、関係のない自分がそんなことになったのか。しかも、こんなに . . . 本文を読む
当麻英始さんが描く世界は優しい。彼は自分のそんな世界を正確に作るために、この自分の劇場を作った。これは仮設劇場ではない、ちゃんとした設備の整った、小さいけれども、(そこもまた、当麻さんの願いだ!)素敵な劇場だ。椅子は心地よいソファシートで、30人ほどの観客がどこからでも、ちゃんと舞台のすべてを目撃出来る。芝居全体をまるごと、手のひらで抱え込むことができるのだ。ここは、そんな夢のような劇場なのだ。 . . . 本文を読む
これは凄い。チラシを見た時にも、感じたことだが、作者の中川真一さんの姿勢は、大胆かつ、繊細で、その視点の独自性(それは単純に目の付けどころを言うのではなく、狙いの問題だ!)は、他の追随を許さない。
昨年初めてウイングカップ(最優秀賞を受賞)で彼らの作品を見た時にも感じたが、今回はその比ではない。是枝裕和監督『誰も知らない』と同じように児童虐待を描くのだが、置き去りにした母親の生き方を弁護する . . . 本文を読む