5月の26日から上演されるくじら企画の新作『黄昏ワルツ』に先駆けて、「シン・クジラ計画」として配信のみで公開上演されているリーディング作品だ。とてもよくできている。
配信で芝居を観るのは嫌なので、ほとんど見ないけど、最初から配信のみで企画された作品だ。劇場のライブ感を大切にした仕様になっているのがうれしい。役者たちの緊張感が確かに伝わる。このキャストによる公演も生で見てみたいと思わせる。初演時の . . . 本文を読む
530ページに及ぶ大作である。先日の村上春樹には及ばないが、同じくらいに大部な小説だ。だが、それを同じように3日で読んだ。(まぁもちろん、たまたま)さすがにこのボリュームである。一気読みは無理だ。途中で気分転換も必要で間にほかの本を1冊挟んで読破した。
43歳、涼子が主人公。大手の広告代理店で働くバリバリのキャリアウーマン(て、言うのか。今の時代)。3つ年下の美容師の夫、孝之と結婚して13年にな . . . 本文を読む
東京日記シリーズの7冊目。(らしい)たぶんそのうちの3冊は読んでいる。まぁ読んだ瞬間には忘れているから記憶は曖昧だけど。
わざわざ書くまでもない。日々の身辺雑記。今回は2019年から22年の1月まで。だからコロナ直撃。でも弘美さんは相変わらずマイペース。コロナ禍でもまるで今まで通りに暮らしている。どうでもいいようなことを淡々と書いていて笑える。こんなにも箸にも棒にもかからないことを書いて出版でき . . . 本文を読む
これは待望の林海象監督の新作だ。2年前にひっそりと公開されていた映画。Amazonプライムのおかげでようやく見ることができてうれしい。永瀬正敏が主演する。林海象と彼のコンビ復活! もちろん佐野史郎も出ている。3話からなるオムニバスだが、話は完全に繋がっているし、同じ主人公によるドラマだから、1本の長編映画だと思う。全体は81分と短め。
ある地震による大津波によって原発が爆発事 . . . 本文を読む
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』のショーン・ベイカー監督の新作だ。アメリカのインディペンデントで成功を収めてメジャーデビューを果たした彼の第3作は2時間越えの渾身の一作。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にも出品されたらしい。こんな内容だけど、気合いの込められた大作である。
落ちぶれたポルノ男優がハリウッドに見切りをつけて(追い出されて)故郷のテキサスに戻ってくるとこ . . . 本文を読む
イエジー・スコリモフスキ監督がロバを主人公にして描くファンタジー。どうでもいい話だけど僕は動物の中でロバが一番好きだ。だからこの映画はそれだけで期待大。先日見た傑作『小さき麦の花』でもロバが大活躍していたのが記憶に新しいが、今年の映画界はロバの年なのか(なんてね)。
だがこれはただの甘い映画ではない。ファンタジーなんて書いたけどそれは嘘だ。それどころかこれは残酷でシビアな映画だ。ロバの視点を通じ . . . 本文を読む
なんだかこれはすごいタイトルだ。シンプルだけど、こんなにストレートに示されたら構えてしまうし、映画を見るだけなのになんだか少し覚悟がいるなという気がする。
これはミア・ハンセン=ラブ監督の自伝的作品らしい。介護と子育て、仕事。そして自身の恋愛が描かれる。そして、レア・セドゥがヒロインを演じる。彼女は目の前の現実と向き合う。それはとても困難な状況だが、自然体で向き合おうとする。幼い娘への愛。父の病 . . . 本文を読む
デンマーク映画だ。最近北欧諸国の映画をよく見ている気がする。(ここにはまだ書いていないけど、『トーベ』という映画も見ている)これは高校が舞台の映画なのだが、よくあるような学園ドラマではない。主人公は高校生ではなく、教師たちで、40代になり気づくと仕事へのモチベーションが落ちた4人が、アルコールに依存してやる気を復活させようとするというお話。要するにお酒を飲んで授業に臨むのだ。最初はなかなか調子良く . . . 本文を読む
食を扱う小説は避けましょう、としばらく前に書いたばかりなのに、また、だ。でもこれは仕方ないな。だって谷瑞恵による大好きなシリーズの最新作なのだから。これは特別というわけでもないけど、毎回新作を楽しみにしている。このくらいの淡さがなんだか心地よいと思うのだ。
これは靭公園にある姉妹が営む小さなサンドイッチ屋さんを舞台にした連作である。靭公園なんていうかなり身近な場所が取り上げてある . . . 本文を読む
『空心手帳』の八木詠美の第二作。前作の偽装妊娠という設定のドラマも凄かったが、今回も特異な設定で、でもそれをさりげなく流してくれるのもそっけなく大胆。今回は博物館のビーナスと話をするというバイトを受けた女性の話。毎週休館日の月曜日ビーナス像の前に行く。彼女の話し相手になるだけ。彫像がしゃべるはずがないのに、彼女の前ではしゃべる。しかもその大理石の像が話すのはラテン語で、その相手をするために日常会話 . . . 本文を読む
こんなB級映画を今更見てどうするつもりか、と思う。これは2年前劇場で見ていた映画だ。見た、ではなく「見ていた」である。正確には10分だけ見て劇場から出たから、見逃した映画ということになる。何もこんな映画のために、母の最期に会えなかったなんて、と思わないわけではない。
あの日、病院から電話があった時、僕は映画館にいた。それまで全く音沙汰がない病院からいきなり電話がかかった。その日は . . . 本文を読む
さまざまな若い劇団を初めて見るのは楽しい。たまたま布施のPEベースの芝居を見ることになった。これからここにやって来る劇団がどんな芝居を見せてくれるのか、楽しみだ。彼らがどんな風に芝居と向き合うのか、また、そこで今までなかったようなパターン、誰も知らない(思いつかない)アプローチをする場面があるとうれしい。新鮮な驚きと出会う(可能性)を享受したい。
さて、今回のこの集団もそんな可能 . . . 本文を読む
第1話を読んだ時、これはまずいなと思ったけど、仕方がないからさらに読み進めることにした。何がまずいかというと、コロナを背景にして心を病んだ人たちがカウンセリングを受けることで立ち直る姿を描く短編連作という「いかにも」のパターンが鼻についたことだ。そんなありきたりの展開にはウンザリさせられる、と思ったが、さらに読み進めるうちに、これは見事なパターン小説だと感心することに。2話のドンデン返しは見事だっ . . . 本文を読む
1月公開の『ファミリア』に続く成島出監督×役所広司主演コンビによる新作。役所広司演じる宮沢賢治の父を主人公にした。タイトルの『銀河鉄道の父』というのがそうだ。でも、宮沢賢治を銀河鉄道くんと呼ぶわけではなく、『銀河鉄道の夜』を生んだ宮沢賢治が銀河鉄道くん(人ではなく、小説だけど)の父でもある。だからこれは過去・現在・未来という三世代のお話でもある。宮沢賢治(菅田将暉)と彼の父親、そして彼 . . . 本文を読む
村上春樹の新刊に続いて吉田篤弘の新刊を読む。なんて幸福なGWだろうか。今回もいつもと同じように、なんだか寂しくて、少しだけ不思議な世界に誘われる。「人は皆、未来に旅する。」という一文から始まる旅。父親の死から始まる物語。17歳の時、描かれた絵。失われた記憶。14のエピソードの連鎖。それぞれの小さなお話が独立した短編でもあるが、きちんと繋がっている。鯨オーケストラに向かいお話は突き進んでいく。
ま . . . 本文を読む