ベルギーの新鋭バス・ドゥヴォス監督・脚本作品。4本目の映画で前作『ゴースト・トロピック』でカンヌ映画祭でも注目された後、再びベルリン映画祭に出品された23年の最新作。たった83分の映画だが、相変わらずの呆れるばかりの長回し。冒頭の建設現場の建物をいつまでも撮ったシーンの長さ。フィックスでいつまでも続く不必要な長さは前作同様。そんな感じのムダな長さが随所にあり、そこを普通に撮っていたら上映時間は70 . . . 本文を読む
新宿ホスト殺人未遂事件を題材にして激情に駆られる女の狂気を描く山本英監督デビュー作。同時に久しぶりの橋本愛の主演映画。彼女はホストに入れ込んで身を持ち崩し、あげくは男を刺し殺そうとした。(奇跡的に生命は取り止めたが)5年間を刑務所で過ごした後、抜け殻のようになり、母の勧めた男と見合いをする。そんな女を橋本愛は演じる。完全に心が壊れているとんでもない女である。そんな女と結婚し、彼女の激情に振り回され . . . 本文を読む
『Here』の監督バス・ドゥボスの長編第3作。リアルなデジタルではなく16ミリのフィルム撮影による柔らかく優しい映像で綴られる。初体験のこの新鋭監督はなかなか刺激的な映画を作る。ただ惜しいのはあまりにテクニックに走りすぎたことだ。もっとさりげなく描くといい。彼女は50代に深夜のビル清掃員。10年前に夫を失くし、長男は独立していて17歳の娘とふたり暮らし。その日の帰宅時、居眠りをして終着駅まで行って . . . 本文を読む
81年公開のサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』。その正統続編でリー・クローニンが監督・脚本した作品。『死霊のはらわた』は傑作だった。あんなにも怖くて笑える映画はそれまでにはなかった。だけどその後同じタイプの映画が連発して今では新鮮さはない。しかもあの映画自体も続編からシリーズ化しマンネリに陥る。もちろんオリジナル3部作以降も新たな作品を作るがその作品をサム・ライミが手掛けることはない。(僕は見て . . . 本文を読む
このなんともいい難いタイトルに惹かれた。わかるようなわからんような。なんだか気になるタイトルではないか。最初のエピソードからガンガンくる。失恋した桃子は酔い潰れて知らぬ間に寂れた喫茶店「雨宿り」に来ていた。イケメン店長と坊さんの黒田。ふたりに見守られて、眠っている。ダメ男に振られて、気がつけばここにいた。そして店長のまずいカレーを食べた。自分の舌がおかしくなったのかと心配になって、桃子は自分の得意 . . . 本文を読む
ずっと前から見たかったホン・サンスのデビュー作。Amazonで配信が始まったのでさっそく見た。今から30年近くも前の韓国映画である。今見ると当時のなんでもない風景がなんだか懐かしい。そこにあるのは変わりつつある(だけどまだ)昔の韓国だ。96年の映画。
80年代の韓国映画の暗さから少しずつ変化して明るくて近代的な街並みに変わっていく途上の光景が映画の背景になる。当時のホン・サンスは過激な描写を好ん . . . 本文を読む
『柳川』のチャン・リュル監督の2018年作品。この後彼は『福岡』『柳川』と3部作を連作する。これは『柳川』とよく似た作品でこの3部作はいづれもこのスタイルなのか。(『福岡』も早く見たい)ふたりは群山の町に着き、駅前の地図を見る。そして古い町をふらふらと歩き出す。一軒の食堂で食べる。店のおばさんから近所にある民泊を尋ねる。しばらくこの町で過ごすことにするみたいだ。だから映画の前半はこの町で過ごす時間 . . . 本文を読む
コロナ禍の日々を描く柴崎友香の最新刊。2020年3月から始まり22年の3月まで。2年間の時間が描かれる。あの狂乱の日々。あんなことが起きるなんて思いもしなかったけど、不安で終わりの見えない時間の中、過ごして時間。世代も住む場所ももちろん環境も違う3人の男女の日々が交互に描かれていく。だいたい2ヶ月刻みに時間は流れる。
全部で12章からなる。ふたつの震災と目の前のコロナ。その3つの出来 . . . 本文を読む
ナイトクラブでふたりが出会って恋に落ちる。そして同棲している。さらに今は男がバルセロナに転勤することになったけど、彼女はパリから離れたくないという状況にある。彼は当然ついてきてくると思った。だが、彼女は拒否する。仕事を取るか、恋愛を優先するか。互いの心に隙間が出来る。彼女は今は無職で彼に依存して生活している。だけど彼女はここで「何か」を求めている。まだ今はそれが何なのかはわからないけど。そんなドラ . . . 本文を読む
高校演劇の傑作戯曲に高校1年生を中心にしたメンバーで挑む学内公演。校内視聴覚室で一般公開しての上演だ。そしてこれは3年生の卒業公演でもある。この時期にこういう公演をするっていいなぁと思う。スケジュール的にはキツいと思うけど、先輩たちと最後の芝居を作り上げたことは必ず後輩たちにとって財産になる。春には新しい新入生を迎える。そのための自信にもなる。今度は彼らが先輩として後輩たちを指導する。これはそのた . . . 本文を読む
『ミツバチのささやき』のアナ・トレントが、再びエリセの映画に帰ってくる。あの映画を初めて見た時の感動は忘れられない。少女とモンスター(あるいは負傷兵)の日々。幻想と現実。静かな時間が流れる。彼を少女は秘密の場所で匿う。映画を見た少女が現実の中で映画と出会う。あれから50年。当時5歳の少女だったアナは今では50代の女性になっている。当然の話だが。そんな彼女がスクリーンに戻ってきてエリセの映画を見て、 . . . 本文を読む
フランスとドイツの境にあるロレーヌ地方の低所得者層向け団地に暮らす10歳の少年、ジョニーが主人公。両親の離婚から母と暮らすことになる。幼い妹の面倒を見る。自分のことしかしない兄がいるがあてにならない。長く伸ばした髪は彼を女の子のように見せる。そんな彼の日々を淡々と描いた映画。内気で、自分から何も出来ない彼を担任の先生が目をかけてくれる。彼は先生が好きになる。そこまでならよくあるパターンだが、だけど . . . 本文を読む
僕はミステリーは基本読まないけど、妻が勧めるからこれを読むことにした。5篇からなる連作。群馬県警捜査1課葛警部の事件簿。
最初の『崖の下』を読んだが、まあまあ。特に面白いわけではない。引き続き『ねむけ』を読む。淡々としたタッチで事件の捜査が綴られる。それがだんだんと心地よいよくなってくる。葛警部という男のこだわりが彼の生き方につながる時、この短編連作の意図は明確になる。これは5篇 . . . 本文を読む
TVシリーズも手掛けたらしい入江悠監督の最新作。もちろん僕はTVは見ていない。入江監督だから見た。もちろん劇場ではさすがに見ない。Amazonプライム・ビデオに入ったから、見ることにした(のだが。)あまりの酷さに衝撃を受けた。いったいこれは何なんだろうか。訳がわからない。ストーリーの杜撰さだけでなく何をしたかったのか、それすらわからない。TVを見ていないから楽しめない、というわけではなかろう。一見 . . . 本文を読む
萩原聖人が久々の主演。村上淳とのダブル主演となる『地雷を踏んだらサヨウナラ』の五十嵐匠が監督した戦争映画。最近この手の映画はあまり作られない。お金がかかるし、ヒットしないから大手映画会社はもう手掛けない。昔は8月になると東宝が必ず作っていたけど『連合艦隊』を最後にして途切れた。戦中最後の沖縄県知事・島田叡を主人公にして沖縄戦を描く。島田叡の存在はドキュメンタリー映画『生きろ』で知った。あの映画に続 . . . 本文を読む