ファイン・アーツ四重奏団、ローゼン(Vc)(naxos)CD
知グラズノフ派には人気の高い曲で、保守的な作風だが弦楽四重奏曲よりも大規模作品を志向して書かれておりスケール感は同じように交響曲的と言われたチャイコフスキーよりもあり、構成感はじつにがっちりして、それが冗長に感じられることはあるのだが、得意のメロディに走ることも民族書法を前面に出すこともなく(3楽章終盤のフラジオは民族音楽を抽象的に昇華した非常に効果的なところだ)、新古典主義へ向かうようなメカニカルな安定感が印象的だ。4楽章はいきなりのメロディで、先輩作曲家のものや2番カルテットあたりの古風な趣があるが、その2番カルテット終楽章で見られた新しげな和声が同じように、より拡大されて出てくる。展開は5番のフィナーレにも通じる。振り返り3楽章の第一主題もカルテットに出てきたものに似ており、聴きこむと共通点をより多く見いだせるが、ここではさらに華やかに、重厚壮大に組みあがっていく。これはもう室内楽ではないのかもしれない。演奏はそつなく達者だが酷使されるファーストがショスタコーヴィチ四重奏団のファーストの音に非常に似せてきている。これはグラズノフの作品にはメリットかもしれない。ただ、ちょっと非力に聴こえる人もいるかも(録音用セッティングのせいのような気も)。
String Quintet in A Major, Op. 39: I. Allegro | |
Nathaniel Rosen |