湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆バーバー:ヴァイオリン協奏曲

2018年01月10日 | アメリカ
◎カウフマン(Vn)ゲール指揮ルツェルン祝祭管弦楽団(ミュージカル・マスターピース交響楽団)(MUSIC&ARTS/MMS)1951・CD

だんぜんレコードのほうが音がいい。◎にしたのは改めてLPで聴いてカウフマンの生めかしい音色に聴き惚れたからだ。前の時代の演奏様式(主としてボウイングとヴィブラートと微妙な音程操作、アーティキュレーションの付けかたにあらわれる)というのはロマンティックな曲想を最大限に生かすようにできているのであり、ロマン派回帰をうたったかのようなこの作品においてただ冷徹に音だけを表現するのは曲の価値自体を損ねることになりかねない。きわめて叙情的な旋律と流れよく効率のいい構成によって現代のロマン派協奏曲というものを(いくぶん古風になりすぎるところは新古典派の影響だろうが)表現しきっている。ウォルトンの作品とよく似た響きや構造的な部分があり(更に元ネタとなっているプロコの1番のほうを思い浮かべる向きのほうが多いだろうが)、3楽章などは尊敬していたヴォーン・ウィリアムズの「コンチェルト・アカデミコ」終楽章の世界を換骨奪胎したものとも思える。同時代性というのもあるのだろう。そしてカウフマンもまた「同時代の演奏家」なのである。しかも戦後モノラル期の演奏家というのは前時代の艶と現代の技術の共に兼ね備えた超人的な技巧家が多いわけで、カウフマンはその中でも非常にバランスのとれた技巧家であり、オイストラフの安定感とシゲティの表現性にフランチェスカッティの美音(あれは完全に奏法の勝利であり解釈の勝利ではあるが、音はよく似ている)がのったような演奏を時折していたようで、これはその範疇にある。つまりは、名演。よくわからない曲、という印象はきっと、こういうのめりこむような演奏に出会えていないということだと思います。

※2007-01-16 09:44:41の記事です

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2 Comments

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現在上手いヴァイオリニスト (サンセバスチャン)
2018-01-10 22:18:32
最近ヴァイオリン演奏のことで疑問に思っていることがあります。若手ヴァイオリニストで人気のある女性数人おりますが、本当に実力ある人はおりますか?今日チャイコフスキーの協奏曲の動画を何人か視聴しましたが、華奢な体格で無理して音を出しているように思います。
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Re:現在上手いヴァイオリニスト (r_o_k)
2018-01-10 22:29:27
わたしは現代モノしか聴かないので、ヒラリー・ハーンのように特殊で難度の高い曲を研究し尽くしてから音にするタイプは貴重におもいます。昔はいなかったタイプとして。。たしかに音が神経質で、室内楽向きというか、おもうがままに調和を乱す勢いで太い音を出す人はあまりいないかもしれません。五嶋みどりさんは随分昔に別格の迫力を持っていた記憶があります。若くして堂々著名指揮者にオーケストラと協奏曲をやっていた。ただ今はよくわかりません。。日本人でいうと諏訪内晶子さんは今も別格に思います。
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