湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ

2018年01月09日 | ラヴェル
○カウフマン(Vn)バルサム(P)(conerthall)LP

動と静、どちらの表現が難しいかといったら圧倒的に後者である。もちろん音数の少ないものも難しいのだが、この曲のように実に巧緻な設計のもとに繊細な音符が数多く用いられている場合、まず技術的に完璧にこなせることを大前提に、音量を極度に抑えて尚その表現を少しも損なわずに聴く側に伝えなければならない。言葉で言うのは易しいが殆どのソリスト級のプロでもなかなかできないことである。カウフマンは言うまでもなくアメリカ屈指のテクニシャンで、軽音楽や映画音楽などの世俗音楽にも積極的に取り組んでいたヴァイオリニストである。この曲で一般的に特徴として挙げられるのは後期ラヴェルに特徴的な訪米後のジャズからの「影響」だが、当然のことながらラヴェルは異国の民族音楽と同等にあくまで「自己の表現の一部として」その技巧的部分のみを取り込み己が身とした。「影響」などではないのである。決してジャズなど書かなかった。カウフマンがお手の物の筈のジャズの語法を取り入れたこの二楽章を、どうやってさばいているかというと、やはりクラシカルな表現の中に溶け込ませているのである。ジャズを弾こうとしてはいない。冷静に、しかし音色には感情を籠めて素直に(素直にこの曲を弾けるということ自体至難のわざなのだが)アンサンブルを組んでいる。バルサムのリリカルで軽く繊細な音というのもこの曲にはあっている。細かい仕掛けを悉く完璧に「ヴァイオリンとの絡みにおいて」描き出している。慎重で繊細かつ完璧なアンサンブルをここに聴くことができる。ラヴェルのソナタを誤解しないためにはうってつけの演奏だがいかんせん、録音が悪い。しょうがないのだが、カウフマンの再評価が進まないのもそのあたりの時代性にあるのかと思う・・・更に同時代に大ヴァイオリニストがいすぎたのだ・・・ラヴェルはこの曲の中にヴァイオリンとチェロのソナタに先鋭的にあらわれているような線的な絡みや衝突する硬質の響きを用いており、若干わかりにくいが、テクニックだけを聴く曲ではないことを押さえておかないとラヴェルを聴く醍醐味はないとだけ付け加えておく。ピアノ協奏曲と類似したパセージが見られるのも興味深い。○。

※2006-07-06 10:00:17の記事です

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