クーセヴィツキー指揮ボストン交響楽団(PASC)1949/4/1live
驚きのpristine発掘音源で、カップリングのバーバーとシベリウスは既出だろう(前者はpristine過去音源の補完版)。クーセヴィツキーの録音はほぼ実況なので音はノイズまみれで悪い。が、これはちょっとpristineやりすぎたか。疑似ステレオ状態である。ほとんど晩年のシベリウス2番正規録音のような、初期ステレオの人工感、金属質の鋭い音が耳を刺す。でもこれではじめてクーセヴィツキーの真価がわかるというところもあり、明るく透明感のある、しかし重量のある音、カラフルな立体感、何よりリズムの良さが光る。浮き立つような愉悦感が素晴らしい。一方でこの指揮者の甘さも露呈するところがある。オネゲルは構造的な作曲家だが、2楽章の冒頭あたりポリリズムでもないのに縦がずれる感覚がある。ずれてはいないが甘いところは他にもある。この曲はオネゲルのシンフォニーでは最も軽く、独特の硬質な抒情(人好きするロマンティックな楽想は存在しない、独特の不協和な響きの美しさがある)が「スイス的」ともいわれるが、ようは突進する音楽ではないので構造が重要になってきて、クーセヴィツキーのような古いタイプの指揮者にはちょっと向かない「室内楽団向けの小規模作品(2管編成だけど)」であるということなのだろう。せっかくきれいにレストアしたのに、そのために聴きづらいところも出てきてしまった面含めおすすめはできないが、聴いて楽しめる演奏ではあり、クーセヴィツキーの「万能性」は十分出ている。バルトークのピアノ協奏曲第3番2楽章でのピアノを想起させる場面があるのは、オネゲルのせいか、クーセヴィツキーのせいか。