湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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マーラー:大地の歌

2012年05月29日 | マーラー
○ジュリーニ指揮ベルリン・フィル、ファスベンダー(Ms)アライザ(T)(testament)1984/2/14,15live・CD

2/14のみの実況が7年ほど前に裏青盤で出ていた。じつに好意的に書いた覚えがあるが、今聴くと、ライヴなりの粗さも感じられ(ソロミスに煩い向きには気になる個所もあろう)、解釈的にも地味で、ファーストチョイスに向くかと言えば疑問がある。個人的には歌唱も飛びぬけたものは感じなかった。この曲は「告別」の悲壮感が全体の印象に暗く影を落としているが、歌詞はそこまで悲しいものではないし、諦念諦観といったものは必ずしも悲壮感と並置される感情ではない。ジュリーニの告別は古い時代の演奏に聴かれた「闇とそこから開ける光明」といったものとは少し違う。清澄な空気感が支配的で、楽器の一つ一つ音符の一つ一つの純度が高く、休符が効果的に使われ音量に細心の注意が払われており、室内楽的なアンサンブルをBPOの力感みなぎる音によって崩さぬべく抑える配慮が感じられる。それが一貫して、歌詞の起伏や調性の変化に左右されることなく、悪く言えば平板だけれども(録音が歌唱偏重なせいもある)、ゆったりとうとうと流れる大河のように聴かせていく。音量を抑える余りヴァイオリンパートソロの「歌」がばらけて聴こえたりはBPOらしいといえばらしい音なのだけれど、気になる人は気になるかもしれない。オーケストラだけの再現部(?)、弦楽器の息が長い旋律におけるレガーティッシモな表現。じつに表情変化が細かく、統制が行き届き美しい。「永遠に・・・」のくだりもそれほど明瞭な変化をつけて突入することはないので、ドラマチックな告別が好きな人には向かないが、セレスタの煌めきに彩られながら静寂の中に消えていく末尾は出色。これぞ大地の歌。○。

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