りきる徒然草。

のんびり。ゆっくり。
「なるようになるさ」で生きてる男の徒然日記。

運動会なのに、同窓会。

2011-05-23 | Weblog
昨日は、子どもたちの運動会だった。

特に上の娘は、小6なので今年が小学校最後の運動会。
今年だけはカメラやビデオを持たず、出来るだけ自分の目で娘のがんばる姿を
見てあげようと思って学校へ向かった。

運動会自体は、朝から小糠雨が降ったり止んだりの繰り返しで、濡れたテントの
貼り直しや掃除で開会前から大わらわ
しかし、なんとか1時間遅れで運動会は無事開会された。

自分の子どもたちの種目以外の時、僕はヒマつぶしに保護者のテントをぐるりと
回った。
すると、案の定というか、偶然というか、とにかくなじみの顔によく出くわし、
声をかけられ、立ち話をする。
それは仕事がらみとか、地域がらみの人もいるが、圧倒的に多いのは、小中学校
時代の同級生だ。

僕の子どもたちが通う小学校は、僕の母校ではないが、僕の母校の隣の学区の
小学校だ。
学区は違えど、同じ町内であり、中学校は同じ学区なので、生まれてずっと
この町で暮らしているヤツや、僕のように若い頃に実家を離れ、別の町で暮らし、
そこそこの年齢になって帰郷してきたヤツがチラホラいるのだ。
そんな連中が、昔のニックネームで、僕に声をかけてくる。

すると2人の立ち話が、いつの間にか3人、4人と増え、気がつくと子どもたちの
種目そっちのけで、運動会のテント裏でちょっとした同窓会が開かれていること
がある(笑)

生まれ育った街で暮らす僕にとって、実はそれが運動会にやってくるもうひとつの
楽しみのようなところがあることは否めない。

中学時代、小さかったヤツが僕より大きくなっていたり、とても手に負えなかった
不良が普通のオッサンになっていたり、地味で目立たない女の子だったのに、素敵
なお母さんになっていたり・・・。
話す内容も、仕事の話や景気の話、子どもの話・・・etc.
口調や目線はあの頃と同じでも、みんな、オジサンオバサンになったんだな、と
心の中で苦笑する。

そんな同窓会をしている僕の視界の中に、どこかで見たことのある男性が飛び込ん
できた。

保護者のテントのなかではなく、来賓席のテント。
校長先生をはじめ、PTA会長や地元選出の市議会議員さんたちが座っている、ちょっと
近寄りがたいテントだ。

その顔に、強烈に見覚えがあった僕は、何の躊躇もなく来賓のテントへと足を運んだ。
そしてその男性の前で、僕はこう口を開いた。

「先生。」

男性は振り向いた。
僕は被っていた帽子を取って、自分の名字を口にした。

「・・・おぉ~

その男性は、即座にそう答えた。
おそらく僕の名字は珍しいので、すぐに思い出すことができたのだろう。

その男性は、僕が中学1年生の時の担任の先生だった。
「仏のI」と呼ばれていた先生だったが、決してそれは“仏”のように優しいという
わけではなく、まったくの逆説的な意味で、皮肉と愛情をたっぷり込めたニックネーム
だったのだ。

つまり、猛烈に厳しい先生だったのである。

僕自身、中学時代、何度その先生から大目玉やゲンコツ、時にはビンタをくらったか
分からない。
今なら、即行でPTAの総会で問題になってしまうような行動だが、当時はそんなことは
当たり前の時代だったし、それ以前に、そんなことを先生にさせてしまうようなヤン
チャなところが僕にもあったのだろう(笑)
とにもかくにも、「良いことは良い、悪いことは悪い」ということを身体で教えてくれる
先生だった。

ひとつだけ、自信を持って言えることがある。

人間は死ぬまでの間に何人もの「先生」という肩書の人に教えてもらうが、烙印を押された
ように心に残る先生は、そういう先生だけだ。
だから、30年の時を経ても、僕は話しかけることができたのだ。

「お前、変わったなぁ~」
「そりゃあ、変わりますよ、僕も40越えましたもん」

そんな会話をした後、僕はこう尋ねた。

「先生・・・どうして、ここにいらっしゃるんですか?」

僕のそんな素朴な質問に、先生はこう答えた。

「4月から、そこの校長になったんだよ」

その言葉を耳にした瞬間、僕は軽い悲鳴を上げてしまった。

「え、ホントですかマジで本当に

「ウソを言ってどうする(笑)?本当だって。30年ぶりに、またあの中学だ」

感慨深かった。
僕が初めて中学で受け持ってくれた先生が、また母校の中学校に帰ってくる。
しかも校長先生として・・・・。
僕は、ちょっと興奮気味に話を続けた。

「先生、うちの娘、来年中学生になるんですよ。その時は、もし悪いことを
していたら、僕らの時みたいに、また遠慮なくぶん殴ってくださいよ」

僕がそう言うと、先生は笑いながら即座に手を横に振った。

「しないしない、というか、もうできないよ」

「でも僕らが中学生の時は、いっぱい怒られたじゃないですか」

「あの頃は僕も若かったからなぁ、今の君より若かったんだから・・・それに」
と先生は言うと、その後にこう言葉を続けた。

「それに、もう時代が違う」

そうか。
そうだよな・・・。

そう思いながら、もう一度先生の顔を眺めた。
あの頃と、全く変わっていないI先生の顔立ち。
でも心なしか、僕らが中学生の頃よりも目元辺りが優しくなったような気がする。

「まぁ、来年から娘をよろしくお願いします。じゃあ・・・失礼します」

僕はそう言葉短めに挨拶をして来賓席を離れた。
来賓席を離れ、また保護者の席へ戻る。
途中、また同級生たちに遭遇した。
他愛もない世間話をしながら、次の種目が始まろうとしていたグラウンドに目をやった。

プログラムを見ると、娘の小学校最後の徒競争がはじまろうとしていた。
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