rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

アンソール展を観るために

2012-10-02 21:39:34 | 旅先から

東京駅のドーム内観 1/10/2012


東京駅正面 1/10/2012

台風17号の台風一過による晴れて暑い日、10月1日。
家人の敬愛するジェームズ・アンソールの展覧会を観に、東京へ出かけた。
東京へ向かう車窓からは、林立する高層ビル群の向こうに雲の裾衣をたなびかせた富士山がくっきりと見える。
陽射しは痛く、暑いけれど、遠出にはもってこいの日和に恵まれた。

展覧会会場のある新宿は、自分にとって馴染みの薄い場所。
家人と連れ立って、まずは腹ごしらえにと、食べるところを探しながら、束の間の”街ぶら”。
新宿は、カオスだった。
未来的な高層ビルが立ち並ぶ一角のすぐ麓には、混沌とした雑居ビルに細い路地、焼き鳥の匂いと散らばるゴミくず、原色の派手な看板にモードファッションの店が混在している。
そこを埋め尽くすように、様々な音が入り乱れている。
アジアンティックでエネルギッシュともいえるが、毎日ねこと会話している自分には、目が回るような世界だ。
細い路地と見れば何が何でも入ってみたくなる習性として、目に留まった路地に侵入。
そこには、幅1メートルあろうかという路地の両側には、これまた間口一間もないような店がひしめいている。
営業しているところもあれば、仕込中の店、まだ主が来ていない店といろいろだ。
店の業種は、”焼き鳥屋””赤提灯の一杯飲み屋”がほとんどと見受けられた。
焼き鳥の美味しそうな匂いをさせている店には、既にお客が入って、いい感じになっている。
20メートルくらいの道を抜けるところに、”思い出横丁”の看板がかかっていた。
昭和の、戦後の焼け跡にたくましく生え出た飲み屋街といった風情が、非常に濃く残っているところだった。

飲食雑居ビルにある店で昼食を済ませ、いよいよアンソールに御対面だ。
家人の大好きなアンソールの絵を観る間は、各々思いのままに絵に浸るのが一番。
自分としては、これだけのアンソールの作品にをじかに観たのは初めて。
以前等ブログにて”首吊り死体を奪い合う骸骨たち”を取り上げたことがある。
その絵が、展示されていた。
よもやお目にかかれるとは思わなかった偶然に、ちょっぴり感動しながら観たのであった。
絵についての詳しい感想は、後日あらためることにして、内容の充実した展覧会に満足してそこをあとにした。

帰りのバスに乗るために、東京駅へ向かう。
期せずして立ち寄ったところは、丁度話題になっている駅舎復元により、物凄く混雑していた。
うっかり行ってしまったドームのところは、天井の内観を写真に撮ろうとカメラや携帯などを掲げる人でごった返し。
そうそう来るところでもないからと、ちゃっかり自分も写真に収めた。
いろいろなメディアで流れているから珍しくもないが、記録としてここにのせる。

東京は、再開発に沸いているけれど、新宿の”思い出横丁”がその波に流されて消えることがあるかもしれないと思うと、よく考えてから再開発の計画を立てて欲しいと思った。
防災防火の観点だけで言うならば、即取り壊してピカピカなビルでも建てるところだろうが、昭和の戦後の混乱と高度経済成長の落とし子のような一角をむやみに取り払うのは横暴だろう。
人の多面的な側面を映す街を、壊して均すのは、危ぶまれる思想行為だと思うのだが、いかがだろうか。



新宿”思い出横丁” 1/10/2012


思い出横丁 煤けた電気ケーブル 1/10/2012