rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

駆け抜ける秋

2012-10-31 15:46:56 | 随想たち
こうしてキーボードを打つ指先が、冷たくかじかんでいる。
今日の天気予報では、晴れであった。
しかし、昼前あたりには鈍い灰色の雲が空を覆い、昼過ぎて雨だ降り出した。
一雨ごとに寒くなる季節、今月の初めに半袖を着ていたのに、月の半ばを過ぎたあたりにはコタツを出すくらいまで、朝夕の冷え込みがきつくなった。
秋は、駆け抜けようとしている。

スギ花粉に煩わされる者としては、秋は特別な季節。
秋雨の後の土の香りを嗅ぎ、木々の葉の色の移り変わりを楽しむ。
早朝の、スモーキートーンな朝靄のたなびく畑、朝焼けに染まる雲、窓から入るひんやりとした空気。
秋晴れの、スカッと高く青い空、温かみのある緑に変わった芝の色、乾いた北よりの風。
早く訪れるようになった夜が、月と星をつれてくる。
着る物が一枚一枚増えていくごとに、冬に身構える準備が整えられる。

この楽しみが、この秋は落ち着いて味わえなかった。
損をした気分。
でも、いつの日にか、こんな駆け足の秋もあったのだと、話に上ることもあろう。
季節の思い出を語り合えるような幸せな日が続くことを、密かに願わずにはいられない。
ははははは、おかしいではないか、駆け抜ける秋でも、きちんと人を感傷的にする役目を果たしているよ。