大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

オフステージ・146『ミリーの頼まれごと・2』

2020-12-03 14:24:20 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)146

『ミリーの頼まれごと・2』ミリー    

 

 

 バタフライ効果って知ってるかなあ。

 

 元々はね、アメリカの気象学者が「ブラジルで蝶々が羽ばたけばテキサスで竜巻を起こすだろうか」と投げかけた言葉。

 気象学の理屈は分からないけど、小さな出来事が予想もしない結果を起こすてな意味で使われる。

 日本語の例えなら「風が吹けば桶屋が儲かる」ってことになるのは、シカゴに居たころタナカさんのお婆ちゃんから教わったこと。

 憶えてるかなあ……? 

 思い出してみるね。

 風が吹くと砂埃が舞い上がる⇒砂埃が舞い上がると、それが目に入って、中には失明する人が出てくる⇒失明すると門づけ(戸別訪問の流しシンガー)をする人が増える⇒門づけには楽器の三味線が必需品⇒三味線を作るために猫の皮が必要⇒皮をとるから猫の数が減る⇒猫が減るとネズミが増える⇒ネズミが桶を齧る⇒桶が足りなくなって桶屋が儲かる!

 というわけ。

 

 で、Sさんのお話。

 

 雨上がりの放課後、野球部が練習しようとしたんだけど、グラウンドはぬかるんでグチュグチュなので、グラウンド以外の場所で練習始めたのね。ちょっと前の野球部だったらグチュグチュを口実に練習は中止だっただろうけど、北浜高校の件があってから練習に身を入れるようになった。

 それで、昇降口の前でもピッチングの練習をしていた。

 ヘボなピッチャーの球が暴投になって昇降口に飛び込んで、うちのクラスのロッカーにドッカーンと当たったのよ。

 ヘボなピッチャーでも球速はあったものだから、運悪く当たったロッカーの蓋を凹ましてしまった。

 そのロッカーが、ちょっと潔癖症の女子だったもので、その女子は怒ったわけです。

 担任は学校と掛け合ってくれて、その女子のロッカーの蓋を予備の新品と取り換えてくれた。

 すると、他の女子たちも新品のにして欲しいと言うワケです。

 とても全員分の予備は無いから、担任が折衷案を出して「それじゃ、シャッフルしよう!」ということになりました。

 基本的にロッカーには個人を特定できるしるしは付いていない。だって、いたずらされるかもしれないしさ。

 まあ、半分くらいの者は不便なんで、イニシャルとか番号とかの目印を付けているんだけどね。

 啓介は、そういう目印は付けない派。

 

 そのあくる日、我がクラスのロッカー群の前でアワアワしていたのが一年生のSさん。

 

 ジョージアの公聴会をライブで見ていて、気が付いたら午前5:30になっていた(わたしは断然トランプ押しだから!)。ここで寝たら絶対遅刻するから、いっそ学校に行って授業が始まるまで寝ていようと思ったのよ。

 それで、いつもならあり得ない時間に学校に着いて昇降口に入るとSさんが目についた。

「あ、ちがうんです、ちがうんです!」

 ハタハタとワイパーみたいに振る手には淡いピンク色の封筒がある。

「大統領選挙の投票なら終わったけど?」

 朝まで公聴会を見ていたりしたもんだから、つい、そういうギャグをカマシテしまった。

「あ、ちがうんです! トランプさんは好きだけど、そういうんじゃ(;^_^A」

 なんと、共和党支持者のようなことを言う!

「え、あなたも共和党!?」

 そこから話が始まって、Sさんが啓介のロッカーに手紙を入れようとしていたことが分かった!

「啓介のこと好きなの?」

「いえいえいえ、じゃなくて、じゃなくて、じゃなくて……え、演劇部に入りたくってえ!」

「ホオーーー」

「上級生の教室って入りにくいじゃないですか、ですよね!」

「うんうん」

「だから、手紙に書いて、返事とかもらってからに……とか」

「ところが、ロッカーがシャッフルされて、どれが啓介のか分からなくなって、アセアセのなってる?」

「いや、そうじゃなくて、あ、小山内先輩のロッカーが分からなくて困ってるのは、それはそうなんですけど」

 Sさんは切ない嘘をつく。

 もし、啓介と千歳の間に💛マーク的なことが無かったら、啓介に成り代わって入部を認めて、Sさんの気持ちをフォローしてあげるんだけどね。

 かと言って、Sさんにきっぱり『啓介は売約済み』と言えるほどには進展していないし。

「分かったわ、わたしが相談にのってあげよう!」

 トランプを応援するパウエル弁護士のように胸を叩いてしまった。

 

 ☆ 主な登場人物

  •  啓介      二年生 演劇部部長 
  •  千歳      一年生 空堀高校を辞めるために入部した
  •  ミリー     二年生 啓介と同じクラス アメリカからの交換留学生
  •  須磨      三年生(ただし、六回目の)
  •  美晴      二年生 生徒会副会長
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やくもあやかし物語・17『赤い長靴・3』

2020-12-03 06:17:13 | ライトノベルセレクト

物語・17

『赤い長靴・3』   

 

 

 長靴は教室うしろのロッカーの上に置くことになった。

 

 最初は机の下に置こうかと思ったんだけど、足の置き場所がない。

 廊下の傘立ての横も考えたんだけど、これは目立つし、知らないうちに隠されたりイタズラされたりを気にしなけれなならない。

 男子が二人長靴の子が居て、うしろのロッカーに置いたのがとどめになった。わたし一人別の所に置いたんじゃ、長靴を履いてきたということ以上に変に思われる。

 でも、やっぱり目立つ。

 教室に入ってきた子の三人に二人ぐらいは見ている。男子二人は「ダッセー、長靴かよ!」と言われてるんだけど「うっせー!」とか言って反撃している。

 赤い長靴を冷やかす子はいない。赤は女子の色だし、なにより女子ロッカーの上に置いてあるからね。

 でも、ハハハとかフフフとかの笑い声が起こったり、なにか意味不の呟きやら嬌声がが起こると、自分の事じゃないかとヒヤヒヤする。

 授業がが始まると、今度は先生たちだ。

 みんなは前を向いているけど、先生だけが後ろを向いている。アイボリーの壁にグレーのロッカー、その色調の中で赤い長靴は、ゲームの中のキーアイテムが強調されているように目立つ。口に出して赤い長靴のことをどうこう言う先生は居ないが、なんだか、どの先生も一瞬見ているような気がする、いや、ぜったい見ている。

 二時間目の鈴木先生は「お、長靴の子がいるのね。いいわよ、こういうひどい雨の時はなりふりとか構わずに実用でいくのが一番よ」とフォローのつもりなんだろうけど「なりふり構わずに」ってフレーズでフォローになってない。わざわざ振り返って「ホー」とか「ヘー」とかゆう奴も出てくる。目線の向きでわたしのほうを見てることがわかる。

 三時間目の小出先生は、最初の起立礼が終わった後、明らかに赤い長靴に目を留めて「ホーー」って言った。自分でも分かるくらいに顔が赤くなっていく。お母さんも子どものころは直ぐに赤くなって困ったんだそうだ。むろん遺伝なんてことはあり得ないんだけど、十三年も親子やってたら、どこか伝染してしまうのかもしれない。

 練習問題をやらせてる間に、先生は机間巡視をする。先生は、うしろのロッカーの所で停まってしまった。

 なんで? やだよ、赤い長靴に注目なんかしないでよ!

 小出先生はお母さんと同窓なんだ。

 転校の手続きに来て、教頭先生を待ってる間に職員室の配置表を見ていた。

「あ、小出君がいる」

 その一言が聞こえたのか、小出先生がこちらを向いて、互いに「ア」「オ」って始まって、教頭先生が来るまで話していた。

 お母さんは、誰ともフランクに話ができるんだけど、あの時は小出先生の方が熱心だったような気がする。

 小出先生と何かあったの? なんて恐ろしくて聞けなかったけど、「あの先生はクラスメートだったのよ」と楽し気に言ってた。

 その小出先生が赤い長靴に注目してる……気持ちが悪い。

 練習問題に集中しよう!

 二問目を解き終って三問目にかかろうとしたら……真横に先生が立っているのに気が付いた。

 

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かの世界この世界:151『大神官の住まい』

2020-12-03 06:09:45 | 小説5

かの世界この世界:151

『大神官の住まい』語り手:タングリス         

 

 

 広場に面した三階建てのアパルトメントだった。

 

「半神がやってくるまでは役目がら神殿に住んでいたのですが、いまは単身者用の2DKです。狭いところですが気楽になさってください」

 気楽と言われても、そもそも椅子が二脚しかなく、姫にお座りいただくと、我々は立っているしかない。

「大神官様、椅子をお持ちしました!」

 元気な声が廊下や階段からしてきたと思うと、少女たちがズカズカと入ってきて、要領よく全員分の椅子を並べてくれた。

「ありがとう。みなさんに神のご加護があらんことを」

 マシガナ大神官が礼を言うと、少女たちは見かけの可憐さには似合わない豪快さで笑った。

「ガハハハ、神のご加護は半神どもが居なくなってからいただきますよ」

「あんたたち、大神殿ごとノヤをやっつけてくれた人たちだろ?」

「その皆さんが集まって、ヨトゥンヘイムにはびこった半神どもをやっつける作戦会議をぶつんだから、期待してるよ!」

「じゃね、なにか必要なことがあったら言ってくださいな」

「じゃ、わたしらは、瓦礫の片づけに行ってますから」

 ガハハハハハ

 再び豪快に笑って少女たちは広場に向かった。

「ギャップに驚いたでしょうが、あの子たちは定年で引退した神殿護衛隊の女戦士たちなんです」

「あんなに若いのに引退?」

 姫の驚きにマシガナ大神官は微笑みを返すのみだ。

「あの子たちは、大神官様同様に若返ったんですね」

「はい、もう腰の曲がった者もおりましたから、あの変化を喜んでおるようです」

 わたしには分かった。喜んで見せることでヨトゥンヘイムの人々が落ち込まないようにしているのだ。あれ以上若返ったら幼女戦士になってしまって瓦礫どころか小石一つ持てなくなってしまうだろう。

「ひとつ聞いていいですか?」

 ロキの肩に止まっていたポチが手を挙げた。

「なにかな、可愛い妖精さん」

「もともと若かった人たちはどうしたんですか? 街の空を飛んでも見かけないんですけど?」

「居なくなってしまいました……若い者が、その年齢以上に若返ってしまったら……」

「存在そのものが無くなってしまう……ということですか?」

「ヨトゥンヘイムの人口は半分に減ってしまいました。減った分だけ半神たちが入り込み、いずれは半神族が取って代わるでしょう。ぶしつけなお願いですが、半神族を駆逐してはいただけますまいか」

「お気持ちは分かりますが、少し考えさせていただけませんか」

 

 思ったのだ。

 巨人族が衰退したのは巨人族が無謀な進撃をしたからだ。いわば自業自得。

 我々が成し遂げたいのはユグドラシルの復活なのだ。特定の種族の肩入れをすることではない。

 

「どこか野営に適したところはないでしょうか、広場では落ち着かないので、我々だけで考えてみたいと思うのですが」

「いやはや、ごもっともです。わたしも、つい余計なことを喋ってしまいました。町はずれにカテンの森があります。野営にも適しております。人を呼んで案内させましょう」

 大神官は、広場の瓦礫撤去をしている少女戦士に向かって手を振った。

 

☆ ステータス

  •  HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
  •  持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
  •  装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
  •  技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
  •  白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
  •  オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  •   テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
  •  ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
  •  タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
  •  タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
  •  ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
  •  ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

  •  二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
  •   中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  •   志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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