大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・23『体重大事件・3』

2020-12-09 06:54:57 | ライトノベルセレクト

物語・23

『体重大事件・3』   

 

 

 永遠の十七歳、アキバのメイドだよ……わたし。

 

 そいつはニッコリ笑って、人差し指で自分を指しながら言った。

 付喪神(つくもがみ)どころか、とんでもない妖怪!?

 一目散に逃げた(;゚Д゚)。

 アキバのメイドなんてあり得ない。だってアキバに行ったことなんてないんだもん、アキバ関連のグッズだって持ってない。行ったこともグッズも持っていなくて、その付喪神が出るなんてあり得ない。きっと、ほかのアヤカシが図書室に現れたりペコリお化けの定位置を乗っ取って出てきたんだ。ああいうアヤカシは悪さをするんだ。

 体力ないから家までは走れない。

 途中の袋小路にお地蔵さんの祠があったことを思い出した。越してきて間が無いので、わざわざ袋小路に入って手を合わせたことは無いけど、そこしかないと思った。

 ほんとうは、祠の前できちんと手を合わせなきゃならないんだろうけど、そんなことをしていたら追いかけてくるあいつに見つかってしまう。

 わたしは祠の陰に隠れた、土台に背中を預け、しゃがんで手を合わせた。

 お地蔵さんの功力だろうか、あいつが追いかけてくるような気配は無かった。

 五分……十分たっただろうか、祠の陰から、そっと顔を出す。あいつが追ってくる気配はしなかった。

 安心すると、目のピントが手元の祠にあう……小さな賽銭箱の横に『お守り石』と墨で書かれた箱がある。

 なんだろう?

 腰を上げて小さくひっくり返ってしまった。

 ダッシュしたせいか増えた体重のせいか、ぶざまに後ろに手を突く。

 ヨッコラショ、

 小箱の上に短冊大の張り紙。

――身を護って下さったり、願い事を叶えてくださいます。願い事が叶ったらお返しください――

 箱の中には親指の先ほどの大きさの真っ白い石が数十個入っている。祠のくたびれ方とは対照に、とても清げ、いかにも霊験あらたかな気がする。

 こういうのって、ただで持ってちゃうといけないよね。

 しかし、中坊の悲しさ、お財布には三十円しか入っていない。いくら気は心とは言え三十円はね……せめて百円はしなくっちゃ。

 閃いた!

 お財布の中にはスイカとテレホンカードが入っている。

 スイカは越してくる前に時々使っていた。テレホンカードは万一の時に使いなさいと離婚する前のお父さんがくれたものだ。

 どちらも、いまは使わない。

 ちょっと迷ってスイカを置いて手を合わせる。

――明日にでもお賽銭持ってきますから、スイカでお願いします――

『お守り石』を一つ、一番大きい奴……は置いといて、二番目に大きいのをハンカチに包んで、心を込めて手を合わせた。

 

☆ 主な登場人物

やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生

お母さん      やくもとは血の繋がりは無い

お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き

小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている

霊田先生      図書部長の先生

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かの世界この世界:157『ポチからポナへ』

2020-12-09 06:31:11 | 小説5

かの世界この世界:157

『ポチからポナへ』語り手:ポチ        

 

 

 目標って……?

 

 直球過ぎたのか、フェンリル二世はゴクンと息をのんだ。

 ヘタに答えると、その答えに質問が出てきて、その質問に答えると、さらに質問が出てくるという質問のラビリンスに落ち込みそうな顔をしている。まあ、仕方がない。わたしは、なんとしてもカテンの森のみんなのところに戻るんだから、フェンリル二世の目標を確かめても仕方のないことなんだ。

「えーと……ユグドラシルを救うのが目標……的な?」

「ありがとう、答えにくそうな質問に答えてくれて」

「きちんと答えようと思ったら、明日の朝くらいまでかかりそうなんでね」

「いいわよ、わたしも明日の朝くらいまでには戻りたいから」

「そうだね、戻れるように知恵を絞ろう……伏せて!」

「どうしたの?」

「半神の使い魔が……」

 這いつくばって息をひそめると、地面が振動し始めた。

 

 ……グゴゴゴゴゴ グゴゴゴゴゴゴ

 

「きみ、空を飛べる?」

 飛べるんだけど、シリンダーの変異体ぽいので返事ができない。彼とは正体を知られないうちに別れたかった。

「じゃ、しっかりぼくに掴まって!」

 返事を渋っていると、指示が飛んでくる。意外と決断力があるのかもしれない。

 胴にまわされた手に力が入って体が密着する。オオカミ族だけあって、意外に筋肉質!

 ドギマギしたのは一瞬で、直ぐに舞い上がって、反射的に彼の首にしがみ付く。

 あたしを抱えたまま、彼は空中で一周する。逃げる方向を探っているのだ。

 一周する間、石が砕けた時のようなキナ臭さが鼻を突く。

「こっちだ!」

 弾かれたように後ろ斜め上に移動。

 バチーーーン!!

 今まで居た空間には軽自動車ほどの岩が激突して、火花を発してバラバラになって落ちて行った。0.5秒遅れていれば、岩に挟まれてペシャンコになっていただろう。

 続いて、ブンブンと唸りを上げて石やら岩やらが飛んでくる。彼は器用に躱すんだけど、逃げる方向が定まらない。

「岩が使い魔なの!?」

「半神はなんでも使い魔にする。なあに、飛んでいれば隙が見つかる……っさ!」

 ブン!

 唸りを上げて岩が間近を通り過ぎていく。いっしゅん目をつぶってしまい、目を開けた時に彼の頬に一文字の切り傷が走っていた。

「魔石を投げるから、考えられるだけの破壊力を籠めて!」

「う、うん」

 魔石を握った彼の拳に想いを籠める!

「いくよ!」

「うん!」

「トーーーーー!!」

 わたしを抱えているから、弱いスイングだったけど、思いのほかの勢いで魔法石が飛んだ!

 

 ドゴーーーーーーーン!!

 

 太陽が爆発したのかと思った。

 前方にはポッカリと岩石たちが居ない空間が広がり、すかさず彼はブーストをかけて突き抜けた。

 何十キロかを瞬くうちに飛んで、川のほとりに着地した。

「あんなに速く飛んだのは初めてだ」

「あ、ありがとう」

「何万て岩石が一瞬で蒸発した。きみの力がなきゃ逃げきれないところだった」

「とうぶん帰れそうにないかも……」

「協力して身を護っていこう」

「う、うん……それしかないかも。フェンリル二世」

「フェンでいいよ」

「フェン?」

「キミのことは、なんて呼んだらいい?」

 ポチとは言えない。

「ポ……ポナ」

 チからチョボ一つ取って、少しだけ女の子らしく言ってみた。

「ポナ……うん、いい名前じゃないか!」

 子供のような笑顔でフェンリル二世……フェンは喜んでくれた。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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