大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・190『霧子の横・2』

2020-12-25 13:44:38 | 小説

魔法少女マヂカ・190

『霧子の横・2』語り手:マヂカ    

 

 

 授業が始まるわよ。

 

 二階建ての校舎からは見えるはずもない十二階相当の高さからの景色を見続けているのは不吉なので、小さく声をかける。

「大丈夫、学校の時間は停まっているから……ちょっと外に出てみましょ」

 霧子が向くと、今の今まで漆喰の壁だったところにエレベーターの扉が現れた。

 エレベーターと言っても令和に時代のそれではなく、武骨な鳥かごのようなもので上がって来ると、鳥かごの前面が折りたたむようにして開く様式。

 チン

 音がすると蛇腹になった鉄格子が開き、霧子と二人で乗り込む。

 チンチン

 二度音がすると、ガチャリと蛇腹鉄格子の扉が閉まって、エレベーターは降下し始める。

「気持ち悪くはない?」

「え?」

「始めて乗ると、気分の悪くなる人がいるから」

「ああ」

 降下し始めたエレべ-ターは一瞬無重力に似た浮遊感がある。大正時代の人間は、ほとんどエレベーターなどに乗ったことが無く、この浮遊感に酔うことがあるんだろう。

「慣れているようね」

「少しはね……」

 あとは聞かずに一階に着くのを待つ。

 ガックン

 令和のそれと比べるとショックの大きい到着音、続いて到着を示すチンの音がしてガシャガシャとドアが開く。

「「あ」」

 二人で同じ声をあげる。声は同じだが、意味は微妙に違う。

 わたしは、てっきり一階に着くものと思っていたが、着いたのは、どうやら地階なので驚いた。

 霧子は、どうやらいつもとは様子が違うので戸惑っている驚きのようだ。

 霧子といっしょに首を巡らすと理由が知れる。

 凌雲閣の八角形の壁面に合わせて、合計八枚のドアが付いているのだ。

「ひょっとして、いつもは一つだけ?」

「ええ、そうよ。ドアはいつも一つだった。それを開けると階段で、一階分上がって地上に着くの」

「どのドアか、分からない?」

「ええと……」

 八枚のドアは、アールヌーボー式の装飾の付いた鉄製のドアで、目の高さにプレートが嵌っているんだけども、プレートはのっぺらぼうでなにも記されてはいない。

「もどる?」

「試してみましょ、真智香さんは左からおねがい。わたしは右側から」

「うん」

 分担して八枚のドアに挑戦。

 ガチャガチャ ガチャガチャ

 どのドアも施錠されていて、四枚ずつ点検して、互いに半周したところで出会ってしまった。

「ぜんぶ閉まってる」

「ひょっとして……」

 エレベーターのドアに向かってみるけど、エレベーターのドアは鉄の格子ごと鎖と南京錠で施錠されている。

「閉じ込められた!?」

 さすがに霧子も声が尖がって来る。

「ええと……あ、見て!」

 エレベーターと対面のドアに照明が当たり、プレートに表示が浮かび上がってきた。

 

 1923/09/01

 

 関東大震災が起こった日付を示していた。

 

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

 

 

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・10『憎たらしさの秘密・1』

2020-12-25 06:32:53 | 自己紹介

たらしいのにはがある・10
『憎たらしさの秘密・1』
          

   


 お袋は息を切らして病院にやってきた。

 裂傷だけで命に別状はないことは伝えてある。しかし小五のときに続いて二度目の事故、俺には憎たらしい妹だけど、女の子。顔や体に傷が残らないか心配だったのだろう。
 俺も左手足が義手・義足であると聞かされてビックリしていた。義手・義足であることは、この一カ月、全然気づかなかったもんな。

「念のためMRIを撮ります。それにしても、あの義手・義足は、どうなさったんですか。完全に体と一体化していて、筋肉や皮膚組織も、一見生体のものと変わりはありませんが、人間の組織ではありません。よかったらお話を伺えないでしょうか!?」
 医者が興奮気味に聞いてきた。
「小学校五年生の時に交通事故で……ある大学の研究に秘密で協力することを条件に。あの義手・義足にしていただいたんです。医学的にご興味がお有りだと思うのですが、そういう事情ですので、これ以上のお話はご容赦願います」
 穏やかだが、きっぱり言うと、お袋は幸子の病室に向かった。

「ごめんねお母さん。ちょっとドジちゃった」
「いいのよ、切り傷だけで済んだみたいだし。ちょっと髪が乱れてるわね。直してあげるわ」
「うん」
 お母さんにはまともに話をする。いや、他のだれにでも……俺にだけだ、あんな無機質な憎たらしさで受け答えをするのは。
 お母さんは、ガラケーを持ったまま、ブラシをかけている。
「お母さん、携帯は置いたら」
「いえ、これは必要なの……太一にも話しておかなければならないかもね……」
「お兄ちゃん……何を聞いてもおどろかないでね」
 あいかわらずのニクソイ歪んだ笑顔で幸子が言った。
 お母さんは、幸子の左の髪を掻き上げて左耳の後ろを顕わにした。瞬間、耳の後ろの皮膚が、ハンコぐらいの大きさで、僅かに盛り上がっているのが分かった。お母さんは、そこに携帯の先端を押し当てると、例の蚊の鳴くような電子音がした。そして、次の作業に掛かろうとした時に看護師が入ってきたので中断されてしまった。


「太一、幸子の部屋に……」

 親父が、そう言って先に幸子の部屋に向かった。


 作業は自宅に帰ってから再開されたのだ。


 先にお袋が入っていたので部屋が狭く感じられた。幸子は無表情でベッドの端に腰掛けている。
「イグニッションモードになってるんだね」
「ええ、お人形さんといっしょ」
「太一。もうお前に隠しておくことも難しくなってきた。今度こそ幸子の秘密を見せる。このことに目を背けてはいけない。そして、これから見ること、聞くことは、誰にも話しちゃいけない。いいな」
「約束できるわね」
 両親の真剣な目にたじろいだけど、俺は決心した。俺が知っておかなければならない幸子の秘密は、とてつもないものだという予感がしたが、兄として、しっかり向き合わなければならないことのような予感もしたからだ。
「まず、この画像を見て」
 お母さんは、幸子のパソコンのキーをいくつか叩いた。
「これは……」
「そう、昼間病院で見せてもらったMRIの画像」
 それは、左の腕と脚だけがアンドロイドのようで、あとの体は普通の人間の体をしていた。
「これはMRIに掛けたダミー画像。ドクターには、あくまで特殊な義手・義足ということで納得してもらったわ。秘密研究だということで、あの後、厚労省の役人にも行ってもらった。この画像も処理してもらったわ」
 お母さんは、さらにいくつかのキーを押した。
「これが、幸子の本当の姿」

 え…………ええ!?

 そのMRIの画像の幸子は、全身がことごとく……どう見てもサイボーグだった。

「幸子、裸になって」
「……はい」
 
 無機質な返事をすると、幸子は、着ているものをゆっくり脱ぎ始た……。

※ 主な登場人物

佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄

佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 

大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生

大村 優子      佳子の妹(6歳)

学校の人たち     倉持祐介(太一のクラスメート) 加藤先輩(軽音)

 

 

 

 

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やくもあやかし物語・39『アノマロカリスのお腹』

2020-12-25 06:21:52 | ライトノベルセレクト

物語・39

『アノマロカリスのお腹』     

 

 

 シャコの縁側を大きくして二本の大きな牙を付けたみたい。

 それがアノマロカリス。

 で、そのぬいぐるみ。 「アノマロカリス」の画像検索結果

 海老みたく目玉が飛び出している。真っ黒な目玉なんで怖くはないけど気味が悪い。ひっくり返すと、信じられないけどまん丸い口。井戸を掘るドリルのようだ……といって井戸掘りドリルなんて見たことないんだけど、こんなのだと思う。

 これが、スーパーとかで売ってる有頭海老くらいの大きさだったら、変なやつってくらいでほっぽらかしておいてもいいんだけども、デカい! とにかくデカい!

 全長一メートルほどもある。

 もし、こいつを背負って出かけたとする。半径二メートル以内には人が寄り付かないだろうね(^_^;)。でもって「ちょっといいですか」とか言って人に話しかけたとする。十中八九逃げられるね。ひょっとしたら通報されるかもよ。

 いきなり新垣あやせの顔が浮かんだ。

 ほら『俺の妹がこんなに可愛いわけがない!』に出てくる桐乃の親友。桐乃といっしょに読モとかやってるんだけど、お堅い子で、主人公の京介に、すぐ「通報しますよ!」と言っては張り倒しているテリブルな女。

 あ……そか、通報→通報しますよ!→あやせ。

 お腹のヒダからなにか出てる?

 ピンク……内臓? んなわけないよね……引っ張り出すと『星くず☆うぃっちメルル』が出てきた。 「星くず☆うぃっ...」の画像検索結果

 アノマロカリス自体が段ボール箱の中でヘシャゲていたので、メルルも捻じれてる。

 そうか、アノマロカリスのヒダはポケットになっているんだ。

 数億年の時の流れでアノマロカリスはメルルに進化したんだ! メルルの圧倒的な強さは何億年か前に圧倒的な強さを発揮したアノマロカリスの強さなんだ!

 ……これは、お父さんが仕掛けたんだ。

 普通にメルルのぬいぐるみをもらうよりも、アノマロカリスから出てきた方が面白い!

 だけどね、それ発見する前に物置に放り込んだんだよ、わたし。

 

 お父さんも忙しい人だったから、そんで、人より気の長い人だったから。そのうち、わたしが気づくと思ってほったらかして、お父さん自身忘れてしまったんだ。

 なにごとも無理押ししないで待つのはいいけど、待ちすぎて取り返しがつかなくなることもあるんだけどね……。

 いろいろ思い出したんだけど、図書当番代わってもらってゴミ袋あさるほどのことだったのかなあ。

 せっかく命拾いしたアノマロカリスなんで、無下に捨てることもはばかられて、無駄に広い部屋の隅に立てかけて置く。

 あ、お風呂掃除!

 わたしはアノマノカリスの非日常からお風呂掃除の日常に戻った。

 

 

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