大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

滅鬼の刃・1・『ジェット推進十万馬力』

2020-12-20 09:43:47 | エッセー

 エッセーノベル    

1・『ジェット推進十万馬力』   

   

 

 あやかりものと申しましょうか、パクリっぽいタイトルで申し訳ありません。わたしなりの思い入れはあるのですが、最初に書くと、なにか言い訳っぽくなってしまいます。お読みになっているうちに「ああ、そうなのか」と感じていただければ幸甚です。感じられなかったらごめんなさい。

 とりあえず、エッセーかラノベか判然としない、そういう虚実皮膜的な駄文を、どこまでいくか分かりませんが、とりあえず鞘から抜いてみることにしました。

 
 部活の同窓会を南森町のイタ飯屋でやった時の事です。

 還暦前後のおっさん・おばはんの話は子どもや孫の話題になりました。

「こんどのガンダムは動くらしいで(^▽^)/」

 ワインに酔ったT君がスマホを出します。

「ああ、東京のどっかにあるやつやなあ」

「横浜や」

「せやったか……あれはポリさんの人形みたいに立っとるだけで動いたりせえへんぞ」

 警察を定年で辞めたY君が遮る。

 生徒だった頃から、人の間違いは正さずにはおられない性格で、その正義感が災いして、警部補止まりでの定年。いまだに定年後の再就職先が決まっていないY君。

「ガンダムて、うちの息子がガンプラ集めてるわ」

「うちは、亭主が集めてる」

「エバンゲリオンと双璧やねえ!」

 ん十年前のJKたちも身を乗り出してくる。

「これ見てぇ! 孫といっしょに日本橋(大阪なのでニッポンバシと発音します)行ったらさあ、お店丸ごとガンプラいうのんがあったのよ。ほら、これこれ、店の看板がガンダムの上半身! なんや、ずぼらやのフグ提灯みたいや思わへん?」

「そんなんちゃうねん、東京のは全身像や。これこれ」

 Y君は画像をつぼめて全身像であることを強調する。

「それは古いやっちゃ、これこれ、こっちを見いや」

 空き瓶やら空き皿を押しのけて、テーブルの真ん中にスマホを据える。

「え?」

「あ?」

「どんなん?」

「こんなん」

「「「「「おおおおお」」」」」

 テーブルを囲んで盛り上がる。

 横浜の山下ふ頭の実物大ガンダムが動き出すのを見て、どよめきが起こる。

 見てくれは還暦前後だが、こういう珍しいものへのリアクションだけはン十年前のままだ。

 そういうジジババ予備軍の好奇心に還暦を七年過ぎたわたしは着いていけない。この数年の歳の開きは、意外に大きい。

「俺はアトムとか鉄人28号やさかい、ガンダムはよう分からへん」

「ああ、アトムやったら、あたしらも観てましたよ(^▽^)/」

 バランス感覚のいいKさんが、現役のころと変わらぬエクボを浮かべて話を継いでくれる。

「そうや、アトムの主題歌て、ここ一番いうときに浮かんでけえへんか」

 T君が受け取って、自然に話題を膨らます。

 そうや、アトムの主題歌なら、俺も歌える!

 わたしの高揚を察してくれて「先輩、歌ってくださいよ!」とマイクを差し向けてくる。

「よし、ほんなら、みんなで合唱や!」

 カラオケメニューを呼び出すのももどかしく、合唱の音頭を取る。

 いち に さん ハイ!

 
 で……歌が違った(;゜Д゜)

 
 空を超えて~ ラララ 星のか~なた ゆくぞ~アトム ジェットのかぎ~り♪

 後輩たちは陽気に空を超えた。

 わたしは。

 ぼーくは無敵だ 鉄腕アトム 七つの力をもーっている♪

 
 わたしのアトムは実写版だった(-_-;)

 
 子役の少年がマンガのそれとは全然違う昆虫を思わせるウェットスーツみたいなのを着て、アトムヘッドを被って活躍するというものだ。当然、アニメのそれとは主題歌が違う。

「あ、いや、アニメのんも知ってるからね(^_^;)」

 自分でフォローをして、みんなに合わせて、事なきを得ました。


 人生、ここ一番という時に口ずさんでしまう歌が、一つや二つはあるもんですよね。


 それが、後輩たちの場合は『ゆくぞアトム ジェットのかぎ~り(^^♪』で、わたしの場合は『ジェット推進十万馬力~(^^♪』になるわけであります。

 昭和もガンダム世代や平成生まれの若い人には「どっちも同じ(^▽^)ジジババ」のノスタルジーなのでしょうが、この差は団塊の世代の境界面になるのです。

 アニメアトムの世代は、心情では左翼っぽくとも、デモに行ったり集会に参加したりはしない人が多いように思います。

 実写アトム組は、団塊の世代の尻尾の先で、雰囲気にのまれてデモの最後尾に付いたり、校長や学長への大衆団交の末席におりました。いわば現場の端っこに居ましたので、その後の団塊本流の、よく言えば行く末、悪く言えば変節を目の当たりにしてきました。

 大正生まれの親たちが「わしら、子どものころは江戸時代生まれの人が生きてたでぇ」とか言うのと似ているように思います。

 同窓会の帰り道、みんなの話をニコニコ聞いていたX先輩が地下鉄の階段を下りながら言いました。

「実写アトムはシーズン1とシーズン2があってな、君の言うてたのはシーズン2のほうや」

「え、そうなんですか!?」

「シーズン1は、カチカチの外骨格みたいなん着とった……こんど写真見せたるわ」

「そんでも、アトムの主題歌は『ジェット推進十万馬力~』でしょ?」

「う~~ん……俺はアトムよりも『赤胴鈴之介』かなあ、山東明子のナレーションで、吉永小百合が子役で声やってた」

 うう、それは知らんかった。

 改札に入るころは、まだ決着の付かない大統領選挙の話題に替わり、当然の如く先輩はバイデン押しでありました。

 長幼の序を旨とするわたしは、あいまいな返事をしてイコカを改札機に認識させたのでありました。

 

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・5『幸子の学校見学』

2020-12-20 05:51:18 | 小説3

たらしいのにはがある・
『幸子の学校見学』
          

 

            

「おい、むっちゃ可愛い子おが体験入学に来てるみたいやぞ!」

 クラスメートで同じケイオンの倉持祐介。

「ほんとかよ!」
 俺も人並みには女の子にも関心がある。ちょうど食べ終えた弁当のフタをして、腰を浮かせた。
「もー、ちょっと可愛い思たら、これやねんからなあ」
 これも、クラスメートでケイオンの山下優奈がつっこんでくる。
「そやかて優奈、ビジュアル系のボーカル欲しいて言うてたやないか」

 と、いうことで、祐介の目撃場所であるピロティーが見下ろせる渡り廊下に急いだ。
 渡り廊下にはすでに数人の生徒が高校生的好奇心プラス大阪人のスケベエ根性丸出しでピロティーを見下ろしていた。ピロティーと隣接する中庭にいる生徒の多くも、チラ見しているのがよく分かった(ちなみに、大阪人のチラ見は東京のジロジロと変わらない)。

 セーラー服のツィンテールが振り返って気が付いた。

「あ、幸子!」
「え?」
「うん?」

 俺の早口は、祐介と優奈には、よく分からなかったようだ。俺は一階まで降りて距離を置いて幸子を睨んだ。

――来るんなら一言言え。そして、人目に付かない放課後にしやがれ!――

 俺の怨念が届いたのか、幸子は俺に気が付くと駆け寄ってきた。
「お兄ちゃ~ん!(^0^)!」
 完全な、外出用のブリッコモードだ。
「兄の太一です。存在感が薄くて依存心の強い兄ですが、よろしくお願いします」
「ええ! 佐伯の妹か……ぜんぜん似てへんなあ!」
 教務主任で副担任の吉田先生が、でかい地声で呟き、近くにいた生徒たちが、遠慮のない声で笑った。
「えと……うちを受けることになると思いますんで、よろしくお願いします」
 兄として、最低の挨拶だけして、そそくさと教室に戻った。しまい忘れていた弁当箱をカバンにしまっていると、優奈が、いきなり肩を叩いた。
「いやー! 太一の妹やねんてなあ。ぜったいケイオンに入れんねんで! あの子には華がある。ウチとええ勝負やけどな」
 
 うちの学校に限ったことではないだろうけど、大阪は情報が伝わるのが早い。

「あの子、美術の見学に行って、デッサン描いたらメッチャうまいねんて。ほら、これ」
 五限が終わると、優奈がシャメを見せにきた。恐るべき大阪女子高生のネットワーク!
「おい、情報の授業見学してて、エクセル使いこなしたらしいぞ、幸子ちゃん!」
 六限が終わると、祐介がご注進。今度のシャメは、十人ほどの生徒たちを、アイドルのファンのように従えて写っていた……で、マジで、放課後には幸子のファンクラブが出来た。

――サッチーファンクラブ結成、連絡事務所は佐伯太一、よろしく!――

 スマホで、それを見たときは、マジで目眩がした。発起人は祐介を筆頭に数名の知っているのやら知らないのやらの名前が並んでいた。

 その日は、運悪く中庭の掃除当番(広くて時間がかかる)に当たって部活に行くのが遅れた。まあ、マッタリしたケイオンなので、部活の開始時間は有って無きが如く。メインの先輩グループを除いては、テキトーにやっている。

 それが……。

――なんじゃこりゃ!?――

 いつもエキストラ同然の一年生が使っている三つの普通教室はカラッポで、突き当たりの視聴覚教室が、防音扉を通しても、はっきり分かる賑やかな気配。

 入ってびっくりした( ゚Д゚)!

 先輩グループが簡易舞台の上で、いきものがかりの歌なんかを熱唱し、みんながそれを聞いている。そして……そのオーディエンスの最前列中央に幸子が座っている!
 俺は、その異様な空間の中で、ただ呆然と立っているだけだった。

 満場の拍手で、我にかえった。

「どう、サッチャン。ケイオンてイケてるやろ!?」
 リーダーの加藤先輩が、スニーカーエイジの本番のときのように興奮して言った。
「はい、とっても素敵でした!」
「どう、サッチャンも、楽器さわってみない?」
「いいんですか!?」
 とんでもない。加藤先輩のアコステは二十万以上するギブソンの高級品。俺たちは絶対触らせてももらえないイチモツだ。
「初めてなんですけど、いいですか?」
「いいわよ、簡単なコード教えてあげる」
 驚きと拍手が同時にした。冷や汗が流れる。
「コードは……スコアの読み方は……」
 小学生に教えるように優しく先輩は教え、幸子はぎこちなくそれにならった……。

 それから十五分後、幸子は、いきものがかりのヒットソングを、俺が言うのもなんだけど、加藤先輩以上に上手く歌った。むろんギターもハンチクな俺が聞いてもプロ級の演奏だった。

「サッチャン……あんた……」

 先輩たちが、驚異の眼差しで見た。
「あ、加藤さんの教え方が、とても上手いんですよ。わたしは、ただ教えてもらったとおりやっただけです(;^_^」
 可愛く、肩をすくめる幸子。
「佐伯クン、あんたたち、ほんとに同じ血が流れてる兄妹……?」
 加藤先輩の言葉で、みんなの視線が俺に集まった……。

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やくもあやかし物語・34『突然の選択肢』

2020-12-20 05:38:04 | ライトノベルセレクト

物語・34

『突然の選択肢』     

 

 

 あとはデザートというところで電話がかかってきた。

 

 お母さんは「ごめん」と言いながらスマホを持って店の外へ……「あ、島田君……」という一言で職場からの電話だと分かって、気持ちを引き締める。

「わるい、会社に戻らなきゃならなくなっちゃった」

「お仕事じゃ仕方ないよ。だいじょうぶだから行って(^▽^)」

 気持ちを引き締めていたので笑顔で言えた。

 お母さんは席にもどることなく、レジでお勘定済ませて行ってしまった。

「デザート、テイクアウトできますか?」

 マスターに聞くと、快くケーキ用の白い箱に入れて持たせてくれた。

「ごちそうさまでした、今度またゆっくり来ますね(o^―^o)ニコ」

 もう一回とびきりの笑顔をマスターに見せて外に出る。笑顔は、お母さんに見せてあげようと、そのつもりになっていたんだ。

 次はデザートというときには、心の中で準備していた笑顔。

 だれかに向けなきゃもったいない……うそうそ、笑顔にしてなきゃ涙が出てきそうだったから。

 

 血のつながりの無いのは心細い。

 あ、ダメだダメだ……これ考え出すと底なし沼になる。

 楽しいことを考えよう……と思っても、おいそれとは出てこない。

 えと……えと……

 

 すると、横の路地から黒猫が飛び出してきた。立ち止まると、白猫が飛び出してきた。次に茶猫。

 三匹混ざったら三毛猫……前にもこういうシュチエーションあったなあ……そう思っていると、ほんとうに白黒茶の三毛猫が出てきた。

 すると、三毛猫が一歩前に出ると四匹揃って、ヒョイと立ち上がった。

「おう、やくも。ここでクイズだ」

 三毛が言う。

「白・黒・茶は、これからのお前の運命だ。どれか一つ選びな」

「あ……えと……急に言われても」

「優柔不断なやつだなあ、さっさと決めろ。せっかく出てきてやったんだからよ」

「「「そーだそーだ」」」

「なによ、いきなり出てきて」

「いきなりじゃねーよ、前もつづら折りのとこで出てきてやったじゃねーか。あんときゃ、まだ、おまえは猫の言葉が分からなかったからよ。でも、いまは分かるんだ、さっさと選んじまいな」

「「「選べ!」」」

 立っても、わたしの膝小僧くらいの背丈なんだけど、四匹揃って迫ってくると後ずさりしてしまう。

 

 ピシ イテ! ピシ イテ! ピシ イテ! ピシ イテ!

 四回音がしたかと思うと、猫たちの頭がポコポコポコポコと音がした。

「そこまでにしときな。次は手加減しないで食らわすよ」

 歩道の向こうにツインテールのメイドさんがパチンコを構え、左右非対称の笑顔で立っている。

「やばい、ずらかるぞ!」

 三毛の一言で、猫たちは四方に散ってしまった。

「突然の選択肢には要注意」

 バシュッ!

 パチンコ玉がすぐ横に飛んできて思わず目をつぶる。

 

 再び目を開けた時には、わたしは家の前に立っていた……。

 

☆ 主な登場人物

やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生

お母さん      やくもとは血の繋がりは無い

お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介

お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き

小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている

霊田先生      図書部長の先生

 

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