大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

オフステージ・147『ミリーの頼まれごと・3』

2020-12-11 13:52:51 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)147

『ミリーの頼まれごと・3』ミリー    

 

 

 あくる日の昼休みにSさんの話を聞いてあげることにした。

 きのう、あのまま聞いてあげてもよかったんだけど、あのバタフライ効果の状況では気持ちにバイヤスが掛かってしまって、Sさんの気持ちが飛躍するんじゃないかって思ったのよ。

 ちょっとした憧れ気分(💛レベル10)⇒手紙を書いてみた(💛レベル12!)⇒ロッカーがシャッフルされて啓介のが分からなくなった(💛レベル15!!)⇒救世主のようにわたしが現れた(💛レベル50!!!)⇒わたしが話を聞く(💛レベル100!!!!)

 バタフライ効果であり一種の吊り橋効果でもあるのよ。

 え? わたしが絡んでから💛レベル上がり過ぎ?

 当然よ、わたしはSさんの気持ちに沿って話をする。親身になってね。自分で言うのもなんだけど、わたしが相談にのれば、勇気百倍よ。Sさんの目を見て、微笑みを絶やさず、いちいち頷いてあげて、時には手を握ってあげて、ひょっとしたらハグまでしてあげる。

 シカゴに居たころはケーブルテレビのキッズキャスターとかもしていたし、教会のバザーでもわたしのコーナーは売上一番だったし、タナカさんのお婆ちゃも「ミリーの笑顔はマリアさんみたいや(^▽^)/」って言ってくれるし、教会のペンドラゴン牧師も「ミリーは宣教師に向いている」って留学の推薦書に書いてくれたし。

 とにかく、応援する気持ちで話をするから、Sさんは、さらに自信をもって💛レベルを上げるってわけよ。

 むろん、恋は水物だからOUTになることもある(千歳のこともあるからね)、OUTになるにしても、恋は人を強くしてくれるし、人生を豊かにしてくれる。

 と、まあ、人生前向きのミリーは思う。

 それでね、今日は二人でお弁当食べながら相談しようということになって、ホームステイ先のキッチンを借りてお婆ちゃんの指導で千代子(ホームステイ先の女の子)といっしょにお弁当を作った。まあ、このお弁当だけで、2000字くらいは書いてしまいそうなので、省略するけど、とにかくわたしは前向きだったの!

 で、いつもより早く学校に着いて職員室に学級日誌を取りに行ったら(今日は月に一度の日直)、ちょうど電話に出ていたSさんの担任が目配せしてきてね。

「あ、ミリーさん、うちのクラスのSさん、休みだから」

「ええ、せっかくお弁当つくったのに!」

 話を聞くと、Sさんもお弁当を作ったり、今日わたしと話すことを考えていたら眠れなくなって風邪を引いたらしい。

 しかし、わたしがお弁当を作ったことを家庭科の杉本先生が聞いていた。

「だったら、昼休みに家庭科準備室に来てよ、ミリーのお弁当見てみたい!」

 運命が、また一つ分岐していくようだ。

 

☆ 主な登場人物

  •  啓介      二年生 演劇部部長 
  •  千歳      一年生 空堀高校を辞めるために入部した
  •  ミリー     二年生 啓介と同じクラス アメリカからの交換留学生
  •  須磨      三年生(ただし、六回目の)
  •  美晴      二年生 生徒会副会長

 

 

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やくもあやかし物語・25『お爺ちゃんの探し物』

2020-12-11 06:30:56 | ライトノベルセレクト

あやかし・25

『お爺ちゃんの探し物』     

 

 

 廊下でゴソゴソ音がしていたかと思うと、今度はリビングの方でゴソゴソ、ときどき「あれ?」とか「へんだなあ」とか呟く声はお爺ちゃんだ。

 放っておいてもいいんだけども、もう十分以上もやっている。

 やがて、ガサゴソはわたしの部屋の前までやってきて、もう気になるったらありゃしない(^_^;)

「なにか探してるの?」

 ドアを小さく開けて顔だけ廊下に覗かせて聞いてみる。

「ああ、ごめん。勉強の邪魔だったね」

「ううん、宿題は終わったから」

 本当はやりかけたばかりなんだけど、責めるような言い方になるのいやだからね。

「手伝おうか?」

「ああ、すまんなあ」

 ぴょこんと廊下に出てお爺ちゃんと並ぶ。

「で、何を探してるの?」

「古い電話をね、まだ残してあったと思ってね」

「古電話ね、分かった!」

 お爺ちゃんと並んで、いっしょに探す。

 

 女というのは身近なものの変化に敏感なんだ。

 

 離婚する前、お父さんが冷蔵庫の中身を探しあぐねて「~どこにあるんだあ?」と、冷蔵庫を開けっぱなしで探して呟く。

「開けっ放しにしないでよ」

「だって見当たらないよ」

「どこ探してんのよ、ここにあるでしょ!」

 目的のものを取り出して突き付けるお母さん。

 探し物は、からしのチューブだったりいかの塩辛だったり素麺だったりマーガリンだったり、いろいろなんだけど、子どものわたしが見ても――なんで見つけられないのかなあ――と思うくらいにドンクサイお父さんだった。

「女は身近なものには強いからなあ……」

 お父さんの負け惜しみかと思っていたんだけど、男女では空間認識の能力が違うというのを公民の授業で習った。

 授業なんて、大人しくノートをとるだけでほとんど聞いていないんだけど、この話題だけは先生の顔を見ながら頷いてしまった。

「人類が狩猟採集の生活をしていたころはな、男が狩に出て、女は竪穴住居とかで家事をやったり子どもの世話とかしてたんだ」

 いまだったら男女で仕事を分けるなんて差別だけど、原始時代とかならそうなんだろう。

「狩りをしている男たちは広い空間認識能力を持ってた。狩って集団でやるだろ、おまえはあっちから、おれたちはこっちからとか場所を決めるだろ、ちゃんとその場所に着けなきゃ狩できないからな。だから、男は地図なんか書かせると女よりも上手い。逆に女はテキパキと家事をこなさなきゃならなかったから、身の回りに何があるかという認識能力に優れていた。他にも子どもの顔色や息の仕方とか微妙なところにも敏感でな、病気なんかには早く気づいて手当てするとかな」

 そーか、だから女は男の嘘とか不注意とかを直ぐに見抜くんだ。

 

 そんなことを習ったからかもしれない。

 

 わたしはお爺ちゃんの探し物を二分ほどで見つけてしまった。

 それはクローゼット手前の紙袋や古新聞とか宅配の段ボールの殻とかのところでひっそりとしていた。

――すみません、役立たずなもので……――

 無言で詫びているような感じのするそれは、現物として見るのは初めての黒電話だった。

 何に使うのかは分かるんだけど、使い方が分からない。

 分からないというのは面白い。

 手にするとうそみたいに重たい黒電話をしげしげと見るわたしだった。

 

☆ 主な登場人物

やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生

お母さん      やくもとは血の繋がりは無い

お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き

小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている

霊田先生      図書部長の先生

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かの世界この世界:159『デミゴッドの墓地・2』

2020-12-11 05:55:16 | 小説5

かの世界この世界:159

『デミゴッドの墓地・2』語り手:ポチ       

 

 

 いくつもお墓は見てきた。

 人と言うのは川沿いに住むもので、とうぜんお墓も並ぶ。それにムヘン川は最前線になることが多く、石を一個置いただけの兵士や犠牲者のお墓もある。霊魂と言うのは死んでもなかなか肉体から離れられないもので、お墓の傍に寄ると時どき頭が痛くなったりする。あたしはシリンダーだったので、そういう霊的なものには人よりも鋭いみたい。

 ところがデミゴッドの墓地というのはアッケラカンとしていて、霊的なものを何も感じない。

「デミゴッドは半神。つまり半分神さまだから、死んだら魂は神界に上って神になるんだ。だから、お墓は抜け殻の肉体だけが葬られている。だから怖くはない」

 うん、怖くはないよ、霊ってご近所の皆さんて感じだったし。

「でもね、中には神であるよりも人の属性を大事にしたいデミゴッドもいて、そう言う人の霊は残っているんだよ」

「え、どこに?」

 広大な墓地を見渡すと、ところどころで墓守さんたちが掃除をしているのを見かけるだけだ。

「おーい、一号さーん」

 彼方の墓守さんにフェンが呼びかけた。この距離じゃ聞こえない……と思ったら、フィルムのコマが落ちたみたいに、唐突に目の前に現れた。

「なんだいフェン、おや、今日は女の子連れてんのかい」

「ちょっと訳ありでね。ちょっと方針転換して、半神たちを覚醒させたいと、この子といっしょにね。この子妖精のポナっていうんだ」

「ポ、ポナです」

 ペコンと頭を下げてしまう。

「妖精さんねえ……」

 み、見破られたか!?

「みんな、いろいろ事情があるからね……わたしは墓守一号、よろしくね。昇天しなかった半神と言った方がいいかな?」

 は、半神さん……ど、どうしよう、握手なんかしちゃったよ!

「ここに来たってことは、やってくれるんだね?」

「うん、及ばずながら。逃げてばかりじゃ解決しないからね」

「うん、それでこそオオカミ族の束ねだ。しっかりおやり」

「それで、ソウルを借りに来たんだ」

「ああ、いいよ。こういうこともあろうかと三人分のソウルを用意してある。正体がバレそうになったら心の中で『チェンジ』と呟けばいい。ぜんぜん別の半神ということになるから」

「ありがとう、恩にきるよ。でも二人分あればいいよ」

「向こうに見える二号戦車で来たんだろ、一つは二号に使えばいい。そうすれば乗り物から足が付くこともない」

「そうか、目につかないように人里では隠しておくつもりだったけど、二号もチェンジできるのならありがたい」

「でも、一つだけ注意しとくよ。けっして三年は超えないこと。三年を超えると……」

「元に戻れない、だろ? 大丈夫、それまでにはスヴァルトアルムヘイムもヨトゥンヘイムも、いや、ユグドラシル全体をまともにしてみせるから」

「大きく出たね。ま、無理をせず、半神のできそこないどもをなんとかしてやっておくれ」

「分かった」

「そっちのお嬢ちゃんも。あんたも流転の星に生まれついてしまったみたいだしね」

「は、はい」

「自分が、なにに属するのか、フェンといっしょにお考え」

「はい」

「じゃ、二人とも目をつぶって口をお開け」

 フェンと並んで口を開ける……すると、なにか暖かい空気のようなものが入ってきて、すぐに体全体が暖かくなってきた。

 目を開けると、もう墓守さんの姿は無かった。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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