大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・15『赤い長靴・1』

2020-12-01 06:12:47 | ライトノベルセレクト

物語・15

『赤い長靴・1』    

 

 

 長靴を履いていったら?

 

 お婆ちゃんが言う。

 モソモソと朝ごはんを食べていたら、リビングのサッシガラスを溶かしてしまうんじゃないってくらいに雨がひどいのだ。

 起きた時から本降りの雨だった。正直うっとうしい。

 学校までの道は、全部舗装道路なんだけど、崖道が曲者なんだ。

 ちょっとした雨でも、川かってくらいの水が流れる。今日の雨で、崖道はとんでもないことになっているに違いない。

 お婆ちゃんは昔人間だから、簡単に「長靴を履いていったら?」って言うけど、今どきの中学生は長靴なんか履かないよ。

「これ、直子が履いてたやつなんだけど、あんまり履いてないから……」

 お婆ちゃんの言葉を聞いていたんだろう、お爺ちゃんが真っ赤な長靴を持ってきた。

 

 ウーーーーーー

 

 ほんと言うと、学校休みたかった。

 自分で言うのもなんだけど、わたしは不登校になるような子じゃない。

 親の離婚というアクシデントで転校するハメになったけど、文句ひとつ言わなかった。

 不用意に文句とか不満とか言ったら、血の繋がりがない家族関係が崩れてしまう不安があるから。

 なにも一生、文句や不満を言わないで通そうとは思っていない。高校にいって、できたら大学とかもいって、就職して独立したら気ままに生きていこうと思ってるんだよ。

 だからさ、大雨の日くらい休んだっていいじゃん。

 お爺ちゃんが、さも――いいもの見つけた!――って感じで長靴を差し出してる。おばあちゃんも――――ああ、それそれ!――てな顔してて、学校休みたいとは言い出しにくい。

 0.8秒くらいたったところで「ありがとう、お爺ちゃん」と返事する。1秒以上開いたら気まずくなるもんね。

 

 それでも、じっさい履いてみるまではサイズが合わないことを期待する。

 

「ああ、やっぱり親子ねえ!」

 お婆ちゃんが感激、長靴はあつらえたようにピッタリだった。

「じゃ、行ってきまーす!」

 普段よりも明るい声あげて玄関を出る。気配で玄関の戸が閉まっていないことを感じる。お婆ちゃんが腕組みして雨模様を見てるんだ。雨で変更しなくちゃならない家事を考えてるんだろうけど、孫としては「やっぱり休む?」という一言を期待する。

 玄関から門までは八歩……あっと言う間……九歩目には、頭を切り替えて、大雨の中をダダっと走り出すわたしだった。

 

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かの世界この世界:149『ここはどこだ・2』

2020-12-01 05:59:02 | 小説5

かの世界この世界:149

『ここはどこだ・2』語り手:タングリス        

 

 

 四号から降りて驚いた。

 

 四号は石造りの建物一軒を押しつぶしていたのだ!

「しまった! 不可抗力とは言え、まずいことになったな……」

「……ヨトゥンヘイムの神殿……か?」

 ナフタリンもたよりない。

「神殿なのか?」

「ヨトゥンヘイムの真ん中は広場になっていて、真ん中に巨大な神殿があるんだ。ヨトゥンの巨人たちがリカちゃん人形に見えてしまうほど巨大な神殿なんだぞ、下敷きのペシャンコになっているのは番小屋ほどの大きさしかないし……」

「ヨトゥンの街に似せたミニチュアのテーマパークとかではないのか? ヴァルハラには縮尺1/24のワールドパークあるぞ」

「んなの聞いたこともない。周囲と同じように縮んでも、ちょっとした街のカテドラルほどの大きさだぞ」

 二人で不思議がっていると、四号の向こう側がざわついた。他の乗員も目覚めたようだ。

 

 キャーーーー!!

 

「どうした!?」

 急いで反対側に周る。真っ先に飛び出したのだろう、ユーリアが腰を抜かしている。

「ひ、人が押しつぶされてる!」

 瓦礫の下から人の下半身がはみ出して、おびただしい血も流れている。他の者には見せてはいけない!

 が……手遅れだった。

 カチャ カチャ カチャ

 あちこちのハッチが開く音がして、他の乗員たちも顔を覗かせている。

「華奢な脚だけど、これは男の人ね」

 姫が冷静な判断を下す。

「ローブのようなものを着ている、身分のある者のようだ」

「なにか掛けてあげたほうが良くない?」

「なにか、探そう」

 テルの呼びかけで、みんなが周囲を見回した。

「ア! 誰かいる!」

 ロキが指差した。二階建ての家の陰に何者かが身を隠した。

「待て!」

 姫がジャンプして、あっという間に捕まえてしまった。

 

 それは、粗末な法服を着た少年だった。

 

「なんで逃げるのだ!?」

「姫、わたしが聞きます」

「……頼む、このままだと絞め殺しそうだ」

「ムヘンブルグの戦車隊のものだ。わたしは副官のタングリス。指揮官はおまえを掴まえた人だ。ここに着いたばかりで当惑している。ここはヨトゥンヘイムではないのか?」

「……ヨトゥンヘイムだったところだ」

「だったところ?」

 少年は、我々の顔を順繰りに眺めまわすと、深いため息をついて俯いてしまった。

「え……まさか、マシガナさま? マシガナさまなのか!?」

 ナフタリンが驚いた。

 我々も驚いた。

 誰に対してもため口ばかりのナフタリンが『さま』を付けて畏敬のこもった口調で呼びかけたのだ。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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