大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

オフステージ・149『ミリーの頼まれごと・5』

2020-12-27 10:44:10 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)149

『ミリーの頼まれごと・5』ミリー    

 

 

 大食いアニメキャラが好き!

 

 そんなにたくさんアニメを観ているわけじゃないけど、アニメの大食いは観ているだけで幸せになるよ。

 イチオシは『ガルパン』の五十鈴華。

 華道の家元の娘で、四号のあんこうチームの中では一番の正統派美少女。

 車内の配置は砲手。数々の戦いで大洗女子高校を勝利に導いた西住みほの指揮も彼女の射撃力あったればこそ。

 最初は気づかないんだけども、繰り返し観ているうちに、食事シーンでの、彼女の盛りのすごさにはビックリよ。丼物でも揚げ物でも定食のご飯の量でも、他のキャラの五倍はある。

 『けいおん』の天然キャラのムギちゃんもビックリするくらい多い。のほほんしたお嬢様キャラが大食いなのは、見ていて、とても癒される。

 アメリカ人はデブであることは非難もするし、自己嫌悪であったりもするんだけど、大食いコンテストは大好き。ホットドッグとかハンバーガーとかジャンキーなのをバカバカ食べているのは愉快になる。

 わたしがトランプさんを好きになったのも、ハンバーガーにケチャップをドバドバかけて食べるのを見たからで、彼が大統領として、どんな仕事をしたかというのは二の次だったよ。

 こないだ、コロナの重症者病棟で治療の指揮をとっているドクターのドキュメントをテレビでやっていた。

 防護服に身を包んだドクターが「日本のみなさん、わたしの力の元はこれですよ(^▽^)!」って出したランチがハンバーガー。直径が日本の1・5倍はある。直径が1・5倍ってことは質量は3倍くらい? 数学苦手だから、興味のある人は計算してみて!

 そのドクターは上背はあるけどデブじゃなかったし、チョー古いんだけど、ポパイがほうれん草の缶詰をバカバカと口の中に流し込んでる感じで頼もしい。

 他にもね、アニメの大食いキャラはいっぱいいるよ。

『艦これ』の赤城さん 『とある魔術の禁書目録』のインデックス 『ラブライブ』シリーズの小泉花陽・国木田花丸 『進撃の巨人』のサシャ・ブラウス 『フェイト』のセイバー 『政宗くんのリベンジ』の足立垣愛姫 『アイマス』の四条貴音……などなどね。

 

「それって、みんな女子じゃない!?」

 

 なんと、杉本先生がリアクション。

「え……あ、そうですね!」

 言ったわたしも驚いた。

 驚きの意味は二つだよ。

 一つは、文字通り女子ばっかりということ。

 もう一つは家庭科のボスである杉本先生がアニメにも詳しかったこと。

 そして、目の前でタッパーの三段重ねを開いたSさんは「そうなんですか(#^0^#)!」と頬を染めながら喜んでいる。

 Sさん自身が大食いなのかは分からないけど、三段重ねのタッパー一杯のお弁当はリアルでは、ちょっと引いてしまう。

 だからね、とっさに「大食いのアニメキャラって可愛いわよね(^▽^)/」ってカマしたのよ。

「しかし、二人ともお料理上手ねえ!」

 あやまたず、杉本先生は二の矢のフォロー。

 わたしのはホームステイ先の渡辺さんの指導が入ってるんだけどね。花が開くようにニコっとしたSさんは掛け値なしに自分で作ったようよ。

 どうやら、杉本先生はSさんの事情を知っていて、このお弁当会を利用して、なにごとかを仕掛けようとしているようとしている?

 そう思ったのは、大食いアニメキャラの話が尽きたら、本題のラブレターの話にならなきゃいけないもんね。

 なんとかしてあげなきゃという気持ちはあったんだけど、Sさんの並みはずれたお弁当を見て、生半可なアドバイスでは乗り切れないなあと思っていたところなのよ。

 でもね、この世の中には、やっぱりバタフライ効果というか風が吹けば桶屋が儲かる式の展開ってあるものなのよ。

「こりゃ、三人でも多いから人数を増やそう!」

 そう言って、杉本先生は校内電話の受話器をとった。

 

 

☆ 主な登場人物

  •  小山内 啓介      二年生 演劇部部長 
  •  沢村  千歳      一年生 空堀高校を辞めるために入部した
  •  ミリー・オーウェン   二年生 啓介と同じクラス アメリカからの交換留学生
  •  松井  須磨      三年生(ただし、六回目の)
  •  瀬戸内 美晴      二年生 生徒会副会長
  •  姫田  姫乃      姫ちゃん先生 啓介とミリーの担任
  •  朝倉  佐和      演劇部顧問 空堀の卒業生で須磨と同級だった新任先生
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妹が憎たらしいのには訳がある・12『スーパー銭湯にて』

2020-12-27 06:52:06 | 小説3

たらしいのにはがある・12
『スーパー銭湯にて』
          

 

 


「じゃ、ちょっと行ってくる!」

 そう言って親父はアクセルを踏んだ。バックミラーに写る幸子とお袋の姿が小さくなっていく。


 男同士の話がしたい。

 そう言って、俺を車で十五分ほど行ったところのスーパー銭湯に連れ出した。


 これは、かなり異例なことだ。親父は結論しか言わない人だ。一月前、お袋と復縁するときも、そうだった。そして、それ以前のいろいろも。

 幸子のことだろうと察しはついた。お袋も、そうだろうと思ったはずなのに、いぶかる風はなかった。
「まあ、今夜は男同士、女同士ってことで」
 女同士といっても、お袋の前では、幸子はプログラムされた娘を演ずるだけだ。お袋はボクとお父さんに託したいことがあるのかも知れない。

 人気の岩盤浴やジャグジーは避けて、この時期には人気のない露天風呂に入った。
 親父は慣れた様子で、前も隠さず露天風呂に向かった。
 露天風呂に続くドアを開けたとたんにブルってしまった。まだ四月の初旬、外気は冷たい。
 親父はザッとお湯を前にかけると勢いよくお湯に漬かった。

「太一も早く来い」

 俺は、お湯を被って「アチチ」、お湯に片脚漬けただけで「アッチチ」
「一気に漬かるのが醍醐味なのにな」
「俺は、猫舌、猫肌、猫なで声がモットーなんだよ!」
「そりゃ、営業職に向いとるなあ」
「どうしてさ」
「営業ってのは、あんまり派手じゃだめなんだ。相手に合わせて一歩遅れてるぐらいの可愛げがなきゃ勤まらん。そうやって、じんわりお湯に身を慣らしていくようにな」
「なんだか人生訓だね……」

 この段階で、やっとお湯の中で膝立ち……。

「オレは、営業ってのは、常に、相手の先手を取ることだと思っていた。この風呂にザンブリと入るようにな。でも、それじゃダメなんだと分かったときには大阪支社に回された。それも総務でな。完全な左遷だと思ったよ」
「それで、お袋と別れたんだろ」

 ここで、やっと胸の下。

「ああ。だけど、オレは、大阪でがんばって営業に戻って、成績をあげれば、また東京に戻れるとタカをくくっていた」
「いまでも、総務じゃん」
「ああ、今は総務で満足してる。高橋さんて人がいてな、その人が、こう言ったんだ『営業ってのは、航空母艦に載ってる戦闘機みたいなもんだけど。総務ってのは、その戦闘機がいつもベストなコンディションで発艦できるようにしてやるクルーみたいなもんだ』ってな。そう言われて高橋さんの仕事を見てると、まさにそうなんだ。若い営業が新規の飛び込みに行くときなんかは、いったん引き留めてな、バカな話をしたり、靴なんか脱がせて足裏マッサージしてやったり……」
「なんか、地味なカウンセラー……」

 やっと、首まで漬かったけど、体はガチガチ、湯が噛みついてくる。

「おれもな……」
「う、動かないでよ。お湯がこっち来て噛みつくんだ……」
「ああ、すまん。まあ、そうやってホグして送り出してやる。名人芸だったな……そのうち、大阪で営業に回されたけど、自分で総務に戻った。ちょうど幸子が最初の事故に遭ったころだ」
「で、幸子がサイボーグになるのを……その……受け入れたんだね」
「ああ、お母さんはパニクっていたけどな……オレは、これを受け入れるしかないと……こういう気持ちを放下(ほうげ)っていうんだ。任せると思ったら、完全に力や疑いを捨てて任せることだ」
「で、今日に至っているわけ……」
 俺の言葉に、親父はノンビリと、でも敏感に反応した。
「放下というのは、バカになって放棄することじゃない。その先に待っているリスクも含めて、しっかりと、そしてヤンワリと受け止めることだ」
「親父は、受け止められた……?」
「そのつもりだったけどな。今日の自分を思い返すと、まだまだだ……この先、何がおこるか分からん」
「この先……?」
「考えてもみろよ。たとえ幸子という少女の命を救うためだとは言え、おかしいだろ、厚労省のトップまで絡んでいるんだ」
「ああ、今日口止めにきた」

 このとき、湯気の向こうで女性の悲鳴があがった。一瞬ボクたちが間違っているのかと思った。

「お嬢さんたち、女湯は隣りだよ」
「す、すみません!」
 怒っているのか、謝っているのか分からない感じで、女の人たちが前を隠して行ってしまった。ボクはプリンプリンのお尻が三つ揺れながら脱衣場に消えていくまで観てしまった。
「ハハ、幸子の裸を見たぐらいじゃ、免疫にはならんなあ」
「幸子の方が、プロポーションはよかった」
 バカな答えをした。
「良すぎるとは思わないか?」
「え、プロポーション!?」
「バカ、幸子の全てだよ。バックで国が動いているらしいこと……なにより、幸子の義体の技術は、この時代のものじゃないと思う」
「それって……」
「それ以上は分からん。これからなにが起こるかわからんが、しっかりと、でもヤンワリと受け止めていくことだな。まあ、多少ヘンテコな妹を持ったと思って、ユッタリ、ドッシリとやってくれや……」
 そういうと、親父は、片側のお尻を軽く持ち上げた。ポワンと大きな泡が浮かんで弾けた。
「く……臭えなあ!」
「すまん。すっかり緩んじまった……」

 この会話が聞こえたのか、隣の露天風呂で、さっきの女の人たちの笑い声がした。
 お湯は、ようやく体に馴染んで噛みつかなくなっていた……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 学校の人たち     倉持祐介(太一のクラスメート) 加藤先輩(軽音)
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やくもあやかし物語・41『受け止め方』

2020-12-27 06:41:24 | ライトノベルセレクト

物語・41

『受け止め方』     

 

 

 アノマロカリスのお腹を探りまくった。

 

 これが人間だったらくすぐったくて、とっくに降参してただろう。

 アノマロカリスは縫いぐるみだから文句も言わないでされるがままになっている。

 交換手さんの言い方は、俺妹の女子キャラがまだ隠れているという感じだ。

 でも、人間だったら笑い死にしてるってくらい探っても出てこない。俺妹キャラは小さい縫いぐるみだけど、これだけ探ったら手触りで分かるはずだ。

 あきらめかけたころ、小さな紙切れが手に触る……レシートだ。

 お父さんは忙しいもんだから、他の用事のついでにクレーンゲームで取ったんだろ。

 コンビニやら文具屋やらのレシート、駐車券、クーポン券……ちょっと入れ過ぎ。

 ポイ捨てしないということでは真面目なんだろうけど、それを縫いぐるみの中に入れっぱにしてるのは問題だ。

 外面は良いけど、家族には無頓着。いまさら思い出すお父さんの性格……でも、紙くず多すぎ。

 あれ?

 紙くずの中に妙なものが……メモ……手紙だ。

―― やっと見つけたよ、やくも好みの子ネコ。やくもも見つけたね、この手紙を。お金は払ってある、受け取りにいくといいよ。都合がついたらいっしょにいくんだけど、ダメだったらお母さんと行っておいで。 ――

 手紙の下にはペットショップの住所と簡単な地図が書いてある。

 

 そうなんだ! そのころ、ネコを飼いたくてお願いしてたんだ!

 

 お父さんもお母さんも生き物を飼うことには慎重だった。だから、なかなかウンと言ってくれなくて。アノマロカリスをもらったころには諦めかけていた。諦めかけていたから縫いぐるみを集め始めたんだ。

 お父さんも、こんな手の込んだことやって……あっさり言ってくれていたら、直ぐにでも引き取りにいっていたよ。

 ほんとにタイミングの悪い親子だったな。

 

 ん? なんか忘れてる……そーそー! 俺妹のキャラだ!

 

 でも、そんなのない。まさか、アノマノカリスの中に縫い込んだ……そこまではしないよね。そんなに暇なお父さんじゃなかったし。

 机の上に並んだキャラを眺める。

 桐乃、黒猫、あやせ、麻奈美、バジーナ、メルル……桐乃、黒猫、あやせ、麻奈美、バジーナ、メルル……

 

 分かった! カナカナが居ない!

 桐乃やあやせと同級の来栖加奈子、メルルのそっくりさんイベントで一等賞を取った……ああ、そーか!

 閃いて、机の上のメルルをひっつかむ!

 ……やっぱり!

 メルルと思ってた縫いぐるみは来栖加奈子のコスプレだったんだ!

 

 あらためてぬいぐるみを見ると、メルルの可愛い顔は来栖加奈子のニクソサに変わっていた。

 

―― いえいえ 変わったのはやくもの受け止め方ですよ🎵 ――

 

 受話器もとらないのに交換手さんの声が聞こえた。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん      図書委員仲間
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