大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・187『ノンコ京都弁を喋る』

2020-12-04 15:03:53 | 小説

魔法少女マヂカ・187

『ノンコ京都弁を喋る』語り手:マヂカ    

 

 

 もう一度ノンコに呪(しゅ)をかけた。

 

 京都弁を喋る呪。

 京都から来た野々村男爵の娘ということにしたので、京都弁を喋った方が自然だからだ。

「いやあ、東京の言葉は大変どしたから、ほんまに嬉しおすぅ(^▽^)/」

 魔法少女としてはまだまだのノンコだけども、わたしと付き合って一年余り、わたしに合わせるのは上手くなって、級友たちと楽しく話している。

「そやけど、なんで、うちの周りに人が集まるようになったんやろか?」

 昼休み、昼食後、転入手続きの為に職員室に行った帰り、囁くような声で聞いてくる。

「京都の野宮神社は縁結びで有名なんだ」

「そうなんどすか?」

「日本で五本の指には入るよ」

「そうなんや!」

「声大きい」

「あ、かんにん(;^_^A」

「ちょっとレクチャーしてやるから、中庭にいこ」

「うん」

 女子学習院は14000坪もある広大な敷地で、終戦間際の空襲で焼けて近衛騎兵連隊の跡地に移転した後は秩父宮ラグビー場になるのだが、それは四半世紀後の事だ。瀟洒な校舎群はほとんどは木造二階建てで、校内のあちこちに緑があって、中庭だけでも小さな小学校の敷地並みだ。

 芝生にハンカチを敷いて、できるだけ楽しそうに話してやる。楽しいことなら、ノンコは実際の何倍もの力を発揮するだろうから。

「学習院の娘たちは大半が卒業したら一年以内に結婚するんだ。早い娘は三年の夏休みに見合いして卒業と同時に嫁入りする」

「そんなに早いんやあ! て、就職とかはせえへんのんどすか?」

「それが、この時代なのさ。だからね、みんな良縁に恵まれたいから、ノンコが野宮神社に関係があると分かって寄って来るのさ。側に居るだけでご利益ありそうな気になるんだ」

「クラスみんなが?」

「まあ、そういう風にブームを作って楽しみたいって、歳相応の無邪気さでもあるんだろうけどな」

「そっか、ブームやったら分かる気ぃするわ(^▽^)/」

「だから、適当に合わせて楽しい空気をつくってやればいいから」

「う、うん」

「霧子には、そういう明るい空気が必要だと思うしな」

「うん、それで役に立つんやったら、頑張ってみるわどす(^▽^)/」

 

「野々村さん、こちらにおいでですわ!」

 

 校舎の陰から級友たちが駆けてくる。手に手に奉加帳のようなものを持っている。

「野々村さーん! サインをしてくださいませえ」

「わたくしにも!」

「わたくしにもぉ!」

 どうやらサイン攻めにあいそうなので、ノンコを置いて、霧子の相手をしにいくことにする。

 さて、弁当を食べている間はいしょだったけど、いまはどこにいるのか?

 一応教室に戻ったが、予想通り姿が見えない。

 ひょっとして……自分の席に戻ると机の下にメモが入れてあった。

――礼法教室で待っているわ――

 礼法教室?

 後の時代の作法教室と思い当たるのに数秒かかったが、向かいの校舎の二階にあると徳川さんに教わって足を向けた。

 昼休みは、残りニ十分だ。

 

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

 

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やくもあやかし物語・18『赤い長靴・4』

2020-12-04 06:06:41 | ライトノベルセレクト

物語・18

『赤い長靴・4』    

 

 

 二問目を解き終って三問目にかかろうとしたら……真横に先生が立っているのに気が付いた。

 

 こういう時は気が付かないフリをしておくのに限る。

 下手に顔を上げて先生が話しかけでもして来たら目立ってしかたがない。黙々と問題やってたら――取り付く島もない――ということで、向こうに行ってくれるだろう。

「似合ってるよ、赤い長靴」

 ゲ!? 寄りにもよって長靴。それも若やいだ声で似合ってるよってゆった!

 ゲロが出そうで、先生とは反対側の床に目を向ける……え、床は?

 床はアスファルトになっていて、雨がビチャビチャと降っている……で、赤い長靴が見えて、長靴の上には形のいい脚が伸びていて制服のスカートに繋がって、濡れた通学カバンの上には三年生であることを示す紺のリボンが揺れていて、リボンが揺れるのは、その上の首が可愛く振られたからであって、その可愛い首は……中学生のお母さんだ。

 な、なにこれ?

 VRの画像が立ち上がっていくように周囲の景色が明らかになっていく。

 いつもの崖下の道で、お屋敷の庭からワッサカ伸びた桜の枝の下で雨宿りしてるんだ。

 小出先生も中坊で、大きめの傘をお母さんに差しかけている。桜の枝があるとはいえ雨は落ちてくるわけで、小出先生の左半身はけっこうビチャビチャ。

 状況から見て、お母さんが下校するのを見計らって、ここで待っていたか追いかけてきたか。

 どっちにしても女子の感性では『キモイ行為』なんだけど、お母さんは、こういう状況でのあしらい方が上手い。

 七三に体ごと向けて程良い好意を示している。お母さんは人の真摯な気持ちには、こういう感じで寄り添うんだ。それが、中学生のころからやってるんだから恐れ入る。こういう感じって誤解を与えると思う。中学生のお母さんは娘のわたしが見てもコケティッシュだ。

 えと……あんまし、こういうの見ていたくないんですけど……。

 小出先生がなにかゆった。お母さんがコロコロと笑う。笑って、ちょっと真面目な顔で小出くんにゆった。

 お母さんの形のいい眉毛がヘタレる。このヘタレ眉はクセモノなんだ。寅さんにシミジミ言って聞かすときの妹さくらの眉だよ。お母さんはクセモノなんだよ。

 小出クンが泣きそうな顔……お母さんたら、ヨイショっと可愛く掛け声をかけてカバンを持ち換え、右手を空けると小出クンの手を取って握手した。

「嬉しかった、いい友だちでいようね」

 残酷な一言を残して、お母さんは崖道の方へ駆けていく。赤い長靴がピョンピョン跳ねて、それだけでも可愛い小動物のようだ。

 小出クンかわいそう……思ったところで風景が戻ってきた。

 小出クンは小出先生に戻って、あいかわらず横に立っている。

「小泉、せっかくやってるとこ申し訳ないけど、おまえがやってるのは一つ前の単元だぞ」

「え? あ? えーー!?」

 

 無駄に三問を解いたところで、本来のページに戻って問題をやり直したのだった。

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かの世界この世界:152『カテンの森』

2020-12-04 05:55:26 | 小説5

かの世界この世界:152

『カテンの森』語り手:ポチ       

 
 
 
 ちょっと怖い。
 
 なにがって、カテンの森よ。
 ハンシン族とかにやられて、縮んでしまったヨトゥンヘイムの中で、このカテンの森だけが昔のままにおっきい。
 低い木でも80メートルほど、高い木になると300メートルもあるそうよ。
 そうだと言うのは、自分で確かめたわけじゃないから。案内してくれた巨人族の少年が言ったことなんだけどね。
 メスシリンダーの変異体であるあたしは身の丈が人間の1/6しかない。だから、森から受ける圧は人間の六倍。300メートルの木は1800メートルなのよ。
 そんなのが何千本、何万本もおっ立ってるんだから、あたしはテントの設営も勘弁してもらって、四号の中に留まった。通信機の上のお布団が一番よ。
 
 ハッチが半開きになってるんで外の様子は分かるんだ。
 
 巨人族の少年(お爺さんが縮んで若返った)が、いろいろとレクチャーしてくれている。
――ラムノ、ノシホ、そしてみなさんが押しつぶしたノヤが半神の三傑です。ノヤは孤高の神官でしたが、ラムノは実戦派、ノシホは魔導士で黒魔法に長けています。カテンの森は木々が神性を帯びていて、森全体として強力な結界になっています。全てが縮んだヨトゥンヘイムの中で、ここだけが元の大きさを保っていることでもお分かりの事と……――
 レクチャーは微に入り細を穿つって感じで続いている。少年はかなり口うるさいと言うか、くだくだしい年寄りだったんだろうなと思う。ま、それだけ半神族をやっつけて欲しいという願いが強いんだろうけど。
 あたしは、カテンの森は性に合わないから、ここを出るまではお昼寝を決め込むの。
 
 少年の説明が、心地よい子守唄になったころ、戦車の底の方から音がし始めた。
 
 コツコツ コツコツ カチャカチャ カチャン
 
 通信手席と砲塔のターレットの間からだ。
 えーと……四号戦車の仕様を思い出す。たしか、底の方に非常脱出用のハッチがあったはず。
 首を捻って覗いてみる。
 
 あ……!?
 
 ハッチが半分ズレて、ガスマスクをかぶった怪しい奴が、半身を車内に覗かせている。
「ブハ!」
 空気が漏れる音をさせると、アタフタとハッチの下に落ちて行った。
「待て!」
 飛び起きると、そのまま開いたままのハッチに飛び込んだ。ハッチの下は地面なんだけど、ハッチと同じ大きさで穴が開いていて井戸のようになっている。
 勢いのまま飛び込んで、あとを追いかける。穴は二メートルほど落ちると水平になって、闇の中を逃げていく姿が感じられた。
 
 え、なに? あいつ、だれ!?
 

☆ ステータス

  •  HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
  •  持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
  •  装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
  •  技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
  •  白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
  •  オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  •   テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
  •  ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
  •  タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
  •  タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
  •  ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
  •  ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

  •   二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
  •   中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  •   志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
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