大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・21『体重大事件・1』

2020-12-07 06:16:05 | ライトノベルセレクト

物語・21

『体重大事件・1』   

 

 

 

 今日も図書室当番

 

 溜まった返却本を戻すために、隣に座ってる杉野君が立ち上がって後ろを通る。いつものように少し椅子を引いて通してやる。

「狭っ」

 小さく言って抜け、背中に杉野君の体が擦れていく。気を使っているのは分かる。ちょうど腰のあたりが触れるからだ。

 電車の中で、こういう通り方したら痴漢かもしれない。

 窓際の席で、女子二人が笑ってる。

「ちょっと……」「ねえ……」「あの子……」「……ったんじゃない?」

 小さな声だけど聞こえてしまった。

 

 聞こえたのは自覚があるからかもしれない。

 

 きのう、お母さんが買ってきてくれたブラ、サイズがいっこ大きくなってた。

 制服は、転校した時に買ったものだからよく分からないんだ。

 うちの体重計は浴室の前にある。脱衣にあると量るんだけど廊下だとね……音がするのよ、カシャンカシャンと。

 年代物の体重計で『ハカリ』と言った方がしっくりくる。その音がリビングまで聞こえてくる。

 お爺ちゃんが出てくるときに量ってるから分かってる。

 昨日は、思い切って量ってみたんだ……ちょっとショックだった。

 だから、いま笑われたのはビビっとくる。

 

「席かわってくれる?」

 

 戻ってきた杉野君に提案、「あ、ああ」と顔を赤くして頷いてくれる。

「小泉さん、ょっと」

 霊田先生が呼んでいる。

「ハ、ハイ」

 杉野君の後ろを通る、今度はわたしの腰が杉野君の背中にあたる。

 バランスを崩して杉野君の背中に、もろに被さる。

「あ、あ、ごめんなさいごめんなさい!」

「う、ううん(#'∀'#)」

「なにやってんだ」

 もたもたしてると霊田先生が寄ってきた。

「ああ、そういうことか」

 そう言うと、先生はゴゴゴと音をさせてカウンターを動かした。

 目からウロコ!

 カウンターというものは、根が生えてるというか床に固定してあるものだと思っていた。

 プ(* ´艸`)

 少し遅れて窓際の女子がふいた。瞬間堪えてふいたものだから、プのあとがグフフアハハになって傷つくことおびただしい。

 杉野君も霊田先生も女子の反応を無視してくれている……優しさなんだろうけど、いっそ明るく笑ってくれた方が気が楽だ。

 テンパってアタフタしているうちに二人の女子は居なくなった。やっぱ、ちょっと悪かったと思っているのかもしれない。

 

 で、これは、次に続く不思議な事件のイントロでしかなかった……。

 

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かの世界この世界:155『フェンリル二世の事情』

2020-12-07 06:05:55 | 小説5

かの世界この世界:155

『フェンリル二世の事情』語り手:ポチ     

 

 

 トンネル小僧……フェンリル二世は静かに語った。

 

「ユグドラシルには、もともと世界の区別なんかなかった。九つの種族が、それぞれの習慣や個性をもって生きていて、人も聖霊もみんな自由に行き来していたんだ。オオカミ族は、九つの世界で行き来して自由に暮らしていた。他の部族たちが、それぞれに国を作っても『ま、そういう暮らし方もあるだろう(o^―^o)』くらいに思って、いちばん多くのオオカミ族が暮らしていたスヴァルトアルムヘイムに半神族が国を作っても、我々が自由に暮らせていれば好きにさせればいいと思っていた。ラタトスクたちは『オオカミ族も国を作った方がいい。国を持たない者はのけ者にされていくよ』と忠告もしてくれた」

「ラタトスク……ああ、ナフタリンたちだね」

「でも、気が付いた時には遅くて、オオカミ族はスヴァルトアルムヘイムに小さな自治区での居住しか認められなくなった。父のフェンリル一世は神々に戒めを掛けられ、不遇なままに一生を終えた。このままでは、オオカミ族は絶滅すると気が気ではなかったんだ……。そこに起こったのがヨトゥンヘイムの巨人たちの進撃だ。遠くまで進撃して帰れなくなった巨人たちの隙を狙って半神たちがヨトゥンヘイムを侵略し始めた。ラムノ、ノシホ、ノヤの三人の指導者はヨトゥンヘイムの経営のためにスヴァルトアルムヘイムを留守にすることが多くなって、多くの半神たちもヨトゥンヘイムに移り始めた。それで、ヨトゥンヘイムを偵察して、半神たちが当分帰ってこないようなら、スヴァルトアルムヘイムを僕たちの手に取り戻そうと思ったんだよ」

「ノヤってのは死んだよ」

「え……ひょっとして、君たちがやっつけたの!?」

「ちがうちがう、事故だったんだ。ユグドラシルの近くまで来たら乗ってた戦車が吹き飛ばされて、落ちたのがノヤっていうのが居た神殿だったんだよ」

「え、たまたま落ちたのがノヤの神殿だったって言うのか!?」

「う、うん。最初はとんでもないことになったと驚いたんだけど、小さくなって若返った巨人族たちが喜んでくれて」

「そうか……それは、やっぱり君たちに力と神のご加護がある証拠だよ。神殿と言うのはセキュリティー魔法がかかっていて、落下物なんかは避けられる仕組みになってるからな」

「そ、そうなんだ」

「キミたちには主神オーディンのご加護があるのかもしれないよ」

 ご加護どころか、オーディンの王女が乗ってるんだけど、話がとんでしまいそうなので、スルーする。こっちにも聞きたいことがあるしね。

「ヨトゥンヘイムでは、死んだノヤ以外に半神は見かけなかったんだけど、なんか訳あり?」

「辺境の征伐に出ているやつが多いんだと思う。むろん、街にも居たんだろうけど、君たちが来たんで、隠れているんだよ」

「そうなんだ……とりあえず、一度カテンの森に戻るよ。何をするにしても、あたし一人でなんにもできないし、みんなも心配するだろうから」

「ああ、それがいい。時間がたってるから穴が小さくなってるかもしれない」

「それって、ヨトゥンヘイムが縮んでることと関係あるの?」

「説明はあとだ、とにかく穴に!」

 穴の入り口に戻ると、小さくなっているような気がした。

「縮み始めてる、君が戻るのは危険だよ」

「どうしよう……」

「メッセンジャーを貸してあげるよ」

「メッセンジャー?」

「うん、ラタトスクたちにも気づかれずに通信できる、魔法石の小さい奴……」

 そう言うと、フェンリル二世は無造作に小石を取り出した。

「石ころ?」

「祈るとメッセンジャーになる。さあ、手に取って想いを籠めるんだ」

「う、うん」

 小石に想いを込めて、穴の中に、そろりと放り込んだ……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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