大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・188『礼法教室のすきま風』

2020-12-10 14:36:29 | 小説

魔法少女マヂカ・188

『礼法教室のすきま風』語り手:マヂカ    

 

 

 まるで大名の黒書院だ。

 黒書院とは将軍や大名家の奥向きの座敷で、いわば将軍・大名の居間のことだ。

 わたしも徳川の時代には隠密という名の魔法少女として各地の大名の黒書院に忍び込んだ、時には奥女中として公然と侍って、情報を収集したり、時には大名を助けたり陥れたり……その時の癖が出て、立ち居振る舞いが楚々としてくる。

 両手を添えて襖を開ける、座ったまま拳を立ててにじるようにして入室し、襖を閉めると座位のまま一礼、右太ももの上に手を載せた姿勢で立ち上がり、畳の縁を踏まぬよう上段の間に正対する位置まで進んで右足を引いて正座、さらに一礼したのち、男で言えば蹲踞の姿勢で、上段の間に人の現れるのを待つ。

 霧子も高坂侯爵家の娘、教室とはいえ黒書院同様のしつらえ、作法通りに現れるだろう……ん?

 帳台(上段の間、向かって右にある丈の低い四枚の襖で仕切られている小部屋)の襖がわずかに開いていて、微かに風が吹き込んでくる。

 大名家の帳台は、一種の納戸で、日ごろは武具や什器が収められているが、心許せぬ来客があった時には警護の者を控えさせておく言わば武者溜まりになっている。

 学習院の礼法教室は文字通り教室なので帳台は装飾に過ぎない。おそらくは壁にハメ殺しの襖があるだけ。あの向こうは校舎の廊下になっていて、わたしは、その廊下を歩いて、ここにいる。吹いてくるとしたら廊下からのすきま風、仮にも女子学習院の校舎だ、すきま風が吹くような安普請のはずは無いだろう……それとも昨年の関東大震災で、さすがの校舎にもガタが来ているのか?

 不審に思って上段の間に上がり、指一本分ほど開けられている襖をそろりと開けてみる。

 当たり前なら壁か、開けているとしても廊下である。

 そこは、学習院の廊下とは思えない古城のそれのような武者走り。武者走りの奥には厳つい急こう配の階段が上っていて、風はそこから吹いてくる。

 足音を殺して武者走りを進んで階段に足を掛ける。

 天井の梁で見えなかったが、真下から見ると引き戸式の扉がある。下から駆け上がってきた敵が簡単には上がってこれない造りで、ますます城郭の構造だ。

 念のため、スカートのポケットからハンカチを取り出し、引き戸を開けると同時に階上に投げ入れる。

 パサリ

 一人分の反応がある。

 この軽やかさ、霧子に違いない。

「なによ、こんなところで?」

 声をかけると、窓の外を向いていた霧子がニンマリと振り返った。

「待ってたわ、やっぱり真智香は来れる人だったんだ」

 あれ、魔法少女の素性が知れているのか?

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

 

 

 

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やくもあやかし物語・24『体重大事件・4』

2020-12-10 06:31:26 | ライトノベルセレクト

物語・24

『体重大事件・4』   

 

 

 お守り石のお蔭か、妖怪メイドは付いてこなかった。

 

 家に帰ってお風呂掃除。

 いつもより念入りにやる。

 お爺ちゃんが町会の寄合で遅くなるってお婆ちゃんが言ったし、からだ使うことで妖怪メイドを頭から追放したかったし。

 そして……からだ使ったら少しでもダイエットになる?……あ、ちょっと頭をよぎっただけだからね、あくまで、お爺ちゃんにきれいな一番風呂に入ってもらいたいからなんだよ!

 額に汗するくらいにお風呂掃除して、廊下のハカリに片足を載せる。

 カチャリ

 片足だけで、針が十キロを指す……グヌヌ……全身乗っかろうかと迷っていたら玄関が開く気配!

 カシャン(;^_^!

 慌てて足を下ろして玄関へ。

「おかえり、お爺ちゃん。きょうは念入りにお風呂掃除やっといたからね」

「ちょうどよかった、ホレ」

 お爺ちゃんは丈夫そうな紙袋を突き出した。

「なに?」

「田中さんからもらったんだ、プレステ5を買ったんで古いのが余ったって。やくもにあげよう」

「え、プレステ4!?」

 プレステ4は持っていたけど、引っ越しの荷造りの時に壊してしまってご無沙汰していたのだ。

「ありがとう、お爺ちゃん!」

 お守り石のご利益だろうか、さっそく部屋に戻ってプレステ4を据え付ける。お風呂の方からお爺ちゃんの鼻歌が聞こえる。陽気なお爺ちゃんは、よく鼻歌を歌ってるけど、今日はいつもより楽し気だ。わたしがむちゃくちゃ喜んだからだ。こんな喜び方、社交辞令ではできないもんね。タイミングがすごく良かった、思わずお地蔵さんの方角に手を合わせる。

 プレステ4ではゲームもするけど、DVDのプレイヤーとして使う方が多い。

 持ってるDVDとかブルーレイは欧米のが多い。日本のアニメソフトは何万円もするけど、欧米のは何千円で買える。字幕の処理とかの問題はあるんだけど、気にしなければ断然お得だ。

 でも、欧米のは普通のプレイヤーでは規格が合わなくて再生できない。そこへいくとプレステ4は欧米のソフトでも再生できる。リージョンフリーっていうらしい。棚の上に飾り物になっていたソフトから『俺の妹がこんなに可愛いわけがない!』を取り出して再生する。実に半年ぶりだ!

 メニューの中から2を選択する。桐乃が京介に付き添ってもらって、初めて『オタクっ娘集まれ』のオフ会に参加するところだ。桐乃は、ここで初めて黒猫に出会って仲良しになる。

 コミュ力に難ありの二人が仲良くなるには沙織バジーナや京介の尽力があるんだけど、お互いイキイキと罵りあえるほどの仲良しになる。いつものように膝小僧を抱えながら観る。気持ちがとても暖かくなる。

 とつぜんフリーズした。

 バジーナと黒猫が改札に向かって、桐乃と京介が手を振っているところ。

 あ、あれ(;'∀')

 中古だからかなあ……残念に思っていると、フリーズした高坂兄妹の前にメイドさんが現れた。

「お久しぶりです、お嬢様(o^―^o)」

 ……それは、オフ会が行われたツインテールのメイド喫茶のメイドさんだ……お嬢様って? え? わたしのこと?

「そう、やくもお嬢様のことですよ! さっきは本題に入る前に走っていかれましたから(^▽^)」

 ゲ 妖怪メイド!? 

 なんだけど怖くない。アニメキャラだし、それも『オレイモ』のキャラだし。

「お話しておきたかったんです、太ってしまったとお悩みのようですが……」

「あ、その話題はなし!」

 ワイパーみたいに両手を振る(^_^;)

「いいえ、真実を知っていただかなければなりません。やくもお嬢様は、お太りになられたのではなく発育されたのです」

「同じことじゃ……」

「いいえ、出るところが出て、引っ込むところが引っ込んできたんです。ほら、ごらんください」

 高坂兄妹に変わって、リアルな体形のシルエットが出てきた。

「そちらが先月、で、こちらが現在。女性らしくなりましたでしょ、むろんお嬢様のシルエットでございますよ(⌒∇⌒)」

「え、あ、そ、そう(#0#)」

「そうです、もう十四歳でございますわよ(^▽^)/」

 

 そうだったんだ、親の離婚や引っ越しのドサクサで忘れていたけど、わたしってば十四歳になっていたんだ!

 

☆ 主な登場人物

やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生

お母さん      やくもとは血の繋がりは無い

お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き

小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている

霊田先生      図書部長の先生

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かの世界この世界:158『デミゴッドの墓地・1』

2020-12-10 06:03:53 | 小説5

かの世界この世界:158

『デミゴッドの墓地・1』語り手:ポチ     

 

 

 半神族ってどんななの?

 

 素朴な質問をしたよ。

 シリンダーの変異体であるあたしはモノを知らない。

 1/6の人型妖精に変異してから、ずっと四号戦車の五人といっしょだった。冒険の旅の中に居たので世間というものを知らない。

 素朴すぎるかもと思ったけど、変に知ったかぶりしているよりもいいと思ったから。自分が変異体だというのを言いそびれただけで気持ち悪いもん。

「人と神さまの間に生まれた種族だよ」

「人と神さまの間?」

「その前に、乗り物が必要だな……この魔法石に乗り物のイメージを吹き込んで」

「どこかに行くの?」

「ああ、目標達成のために。とりあえず人里に出なくちゃ」

「うん」

 思いを込めると、魔法石は二号戦車になった。ずっと四号に乗っていたから乗り物と言うと戦車になってしまう。でも、最初から四号だとおっきいから失敗するかもって思ったから。

「こんなのでよかった?」

「無限軌道だから走破性がよさそうだね」

 フェンはチョイチョイと指を動かして二号を自動運転にした。

「運転は苦手だし、話の邪魔になるしね……意外に中は広いね」

 もともとは三人乗りだからね。

「デミゴッドの墓地へ」

 無人の操縦席に命ずるとブルンブルンとエンジンが起動して動き出した。

「お墓に行くの?」

「うん、このまま半神族の中には入れないからね、半神族のソウルを借りに行くんだ」

 よく分からないけど、質問を重ねると話が飛んで行ってしまいそうなので小さく頷いておく。

「神さまと人間はときどき恋をするんだ。異種族同士だけど、時々子どもが生まれる。その生まれた子と、その子孫を半神というんだ。寿命が人より長かったり魔法が使えたりする。半神族同士の結婚を繰り返して行けば神の属性は薄まることがないからね、半神族は半神族としか結婚しない。間違いが起こらないように、半神族は仲間の半神族を見抜く力を持っているんだ、だからね、ソウルを借りに行くんだよ」

 フェンは半神族の歴史と社会の話を面白おかしく話してくれる。オオカミ族の話も聞きたかったけど、いまはフェンのペース。

 途中、半神族と思われる思念が飛び込んでくる。二人の行方を探っている感じ。その都度、フェンは反対魔法を唱えて打ち消す。三回目くらいからは一緒になって反対魔法を唱えているんだからビックリ。わたしは順応性が高いと言うか、どうも流されやすいようだ。

 峠を二つ超えたところで墓地が見えてきた……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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