大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・049『ドアスコープ』

2020-12-13 14:52:23 | ボクの妹

・049

『ドアスコープ』   

 

 

 久々に通学カバンを開ける。

 ハンドル(取っ手)に汚れの膜が張っているような感触。ファスナーも微妙に硬い。

 しばらく学校に行っていないので、脂や汚れやらに雑菌が繁殖したのかもしれない。アルコール消毒してもいいんだけど、学校に着くまでに手に馴染ませれば、すぐに元に戻るだろう。

 生きてた頃のお兄ちゃんみたいに無精。

 でも、いいんだ。

 ちょっと、あわただしく過ぎて行った月日を感じてみたい。

 ここに来てからは、ヨミとの戦いに明け暮れて、時間の感覚が無くなるほどのあわただしさだった。

 みなみ大尉にあたって脱走したり、担当の中原少尉を困らせたり。

 昨日、カルデラの切り欠きまで足を延ばしてナユタに出会った。

 ナユタは四菱のソメティのパイロット。いきなりヨミとの戦いに割り込んできて撃破すると、子どものようにハシャギまくって、正直ムカつくやつだった。

 そいつが、切込みに自転車を飛ばすと「せんぱーい(^▽^)/」と懐きながら付いて来て、石英の穴場を教えてくれたりして、無遠慮な奴だと思ったけど、ちょっといい奴だと思ったりした。

 久々の学校なので、気合いを入れてお弁当を作る。お弁当箱は、みなみ大尉からもらったケティちゃん。ちょっと子どもっぽいけど、ケティちゃんは中高生にも人気だ。これぐらいハズレたアイテムを使っている方がクラスのみんなには馴染みやすいだろ。

 スマホを出して自分の3Dホログラムを出す。

 1/6サイズの自分の姿が浮かび上がる。これだと鏡じゃや見えないところまでチェックできる。ちょっとナルシスティックだけど、久々の学校なんだからね。

 ……うん、ホログラムで見る限りは今どきの女子高生だ。

 二度ばかり肩の力を抜いて「よし」と声をかけて玄関へ、ノブに手をかけようとすると……

 ピンポーーン

 後ろでドアホンの鳴る音。

 どっちにしようと悩んでドアスコープを覗く。

 ドアホンの映像はフェイクをかますことができて、出てみたら全然ちがう人だったりするので、みなみ大尉から、必ずドアスコープでも確認するように言われているのだ。

 ドアスコープの向こうに居るのは中原光子少尉(^_^;)。

 ほら、わたしの監視役というか世話係というか、担当さん。訓練中にかんしゃくを起こしては、何度も困らせてしまった。軍用のトレンチコートを着て律儀に敬礼して、精一杯の作り笑顔。全身から任務に忠実であろうとする軍人精神と、持って生まれた人の良さがせめぎ合っていて、気の毒という気持ちと面白いという好奇心の両方が湧いてくる。

 ドア一枚隔てて、五十センチに満たないところに立たれては居留守もできないよ。学校に行く時間も迫ってるしね。笑顔を作ってドアノブに手を掛ける。

 ガチャリ。

「中原さ……」

 笑顔が引きつった。

 ドアスコープからは死角になったところに金剛少佐が立っているではないか(;^_^。

 

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やくもあやかし物語・27『黒電話のご利益』

2020-12-13 06:08:52 | ライトノベルセレクト

やくもあやかし・27

『黒電話のご利益』      

 

 

 

 ここに在ったはずなんだけど……

 

 もう二回目だ。

 お爺ちゃんとお婆ちゃんといっしょに公衆電話を探している。

 お爺ちゃんがSNSで黒電話で盛り上がって「それなら家にある!」と家探ししていたのをわたしが見つけてあげた。

 そうすると「黒電話の掛け方」でオチョクラレて、そのノリのままに――やくもの公衆電話レッスン――というミッションが出来あがった。そして、ジジババの記憶の中の公衆電話を探して歩き出したんだけど、とうの昔に撤去されたらしくて見当たらない。

「駅前のスナックにピンク電話があった!」

「だめですよ、お酒飲むとこなんか」

 お婆ちゃんのNGで、スナックをパスして駅の中へ進む。

「「「あった!」」」

 売店の横っちょにヒッソリとあった。

「昔は、伝言板とかもあったなあ……」

 お爺ちゃんがシミジミする。

「そうそう、あなたが初めて来た時に時間間違えて、伝言板に書きましたよね」

「そうだっけ?」

「え、なんて書いたの?」

「それがね『右に同じ 昭介』って」

「右って?」

「『大嫌い!』って書いてあった」

「なにそれ!? ヤバいよお爺ちゃん!」

「いや、俺が書いた時は『自分で探して行きます、昼までに見つからなかったらお電話します』ときれいに書いてあったんで、右に同じにしたんだ」

「もう、無精なんだから、あの時はほんとにビックリしたんですからね!」

「なんで、右のは書き換えられてたの?」

「ああ、一定の時間が来たら消されるんだよ、消された後に『大嫌い』と書いた人がいたんだ。でも、そのあと再会した婆さんは……」

「もう、その話は無しです。それよりもやっちゃんの実習!」

 

 わたしは十円玉を投入して公衆電話の初体験!

 

 ところが、投入した十円玉はコロコロと返却口に出てしまう。

「え? 故障?」

 三度繰り返しても戻って来るのでアタフタ、しょうじきテンパる。

「先に受話器を取るんだよ」

 最初に言って欲しい!

 受話器を持って四回目に成功! ピポパと家の電話番号を押す。家には誰も居ないので、呼び出し音だけが続く。

 五回呼び出し音を聞いて受話器を戻す。

 ガチャリ コロコロ

「え、十円戻ってきた?」

「繋がらないと戻るのよ」

「そなの、なんか得した気分」

「じゃ、次はテレホンカード」

 こんどは、ちゃんと受話器を持ってからカードを入れる。

 考えてみるとさ、自販機とかって、まず最初にお金とかカードとか入れるじゃない。そういうのに馴染んでるから先に受話器を取るって、なんか違うのよ。

 ピポパ プルルル プルルル

 五回で切ろうと思ったら、ポシャ『はい もしもし小泉でございますが』。

 ビックリした、電話にお母さんが出てきたのだ! 

「あ、あ、あ、えと、えと……やくもだよ、お母さん」

――なによ、玄関入ったら電話が鳴っててさ、慌てちゃったわよ! ちょっと前はとる前に切れちゃうし――

 前のが自分だとは言えなかった。

「で、なに、スマホの故障?」

「ううん、ちょっとね、お爺ちゃんお婆ちゃんといっしょに公衆電話のレッスンしてて……」

 

 そのあと、お婆ちゃんが変わってくれてキチンと説明。お母さんが大笑いしてるのが聞こえて恥ずかしくなる。

 

 お爺ちゃんの発案で、お母さんも呼び出して食事をすることになった。

 考えたら、一家四人の外食は初めてだ。

 黒電話のご利益なのかもしれない(^▽^)/。

 

 

☆ 主な登場人物

やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生

お母さん      やくもとは血の繋がりは無い

お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介

お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い

杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き

小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている

霊田先生      図書部長の先生

 

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かの世界この世界:161『棺の中から』

2020-12-13 05:55:18 | 小説5

かの世界この世界:161

『棺の中から』語り手:ポチ         

 

 

 四人とも固まってしまった。

 

 当たり前だ、吸血鬼がベッドに使っているのでなければ死体が収まっているはずの棺桶から声がしたのだから。

 でも、固まり方が違う。

 あたしはオカルト的な驚き、フェンは犯罪の証拠を見てしまったように驚き、中年夫婦はちょっとした隠匿物資を見つけられたような驚きだ。

『あ……だれか、人がいるのかい?』

 気まずそうに棺の声が続いた。

「棺の中は母なんだ。死亡予定日には間があるんだけど、仕事の都合で、今日しか墓地にいけなくってね……そりゃあ、死亡前埋葬は違法だけども、みんなやってることだし……むろん、母の意思は確認したよ」

「そうなの、そもそも言い出したのはお義母さんの方からなの。そうでしょ、お義母さん?」

 すると、ほとんど音もなく棺の蓋が開いて、顔色の悪いお婆さんが上体を起こした。

「よっ……こらしょっと。そうなの、言い出したのはわたしよ。息子は公務員で、内容は言えないんだけど、とっても忙しい仕事をしているの。それが、来週……グズグズしてたから、もう明日からかしらね、とても忙しくなるの。国や社会にとってもとても大事な仕事でね、この春に課長になったばかりで、繁忙期に休むわけにもいかないし。それで、わたしから言ったのよ。通りすがりのお人なんでしょうけど、これも縁だと思ってちょうだい。この通りだから」

「あ、え、死に装束で手を合わされましてもね」

「じゃ、頭を下げるわ。これ、この通り。ほれ、あんたたちも」

「わ、分かりました。見なかったことにします。見なかったんだから、エンコしてることにも気づかないわけだから、修理は他の人に見てもらってください。じゃ、いこうベス」

「う、うん」

 回れ右した後ろから、小さく「ありがとう」の声がするけど、気持ちは「手を貸してくれたっていいじゃないか」が感じられ、なんだか、わたし達の方が悪いことをしたみたいで、面白くない。

 フェンが車を出すのを待って声をかけた。

「生きたまま葬るってありえあないでしょ」

「死んだら神さまだからね、そんなに抵抗はないんだろう。棺も生前葬仕様で、最長一年の生命維持ユニットが付いている。違法なことなんだけど、半神政府も実質は見て見ぬふりなのさ」

「公務員って言ってたわよね。公務員だったら、有給ぐらいなんとでもなるって気がするんだけど」

「あいつは、情報管理局だ。以前、潜り込んだ庁舎で見かけたことがある。なにか大きな動きがおこる前兆なのかもしれない」

「半神族って、わけわからない」

「ちょっと探りを入れてみよう」

 ニヤリと方頬で笑うフェン。

「フェン、変な笑い方しないでよ」

「フェンじゃない、ダグだよ。ベス」

「そうだったわね」

 車はデミゴッドブルク方面行きの車線に移っていった……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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