大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・365『今日から十二月!』

2022-12-01 16:39:56 | ノベル

・365

『今日から十二月!』さくら    

 

 

 ちょっと早いんじゃないかい?

 

 朝ごはんを済ませた留美ちゃんが部屋に入ってくるなり批評する。

「せやかて、今日から十二月やでえ」

「ん……まあ、人それぞれだからね」

 留美ちゃんは、ようできた子ぉなんで、それ以上批評めいたことは言いません。

 昨日の天気予報で『明日の大阪は、最低気温8度、日が上がってからも、それほど気温は上がらず、最高気温は12度程度でしょう。これは大陸性高気圧が……』てなことを言うてた。

 

 せやさかい、夕べは、お風呂あがってからは留美ちゃんと二人で冬の制服をチェックした。

 

 指定のピーコート マフラー タイツ 厚手の靴下 イヤーマフ その他いろいろ

 なんせ、堺東の『ハンゼイ』までは自転車。きっちり防寒対策しとかんと寒い。

 で、うちは、朝ごはんをチャッチャと済ませて、防寒対策していたというわけ。

「じゃ、行こうか」

「え、留美ちゃんはなんにもなし?」

「マフラーは入れてるよ」

 カバンをポンと叩いて階段を降りていく。

 ミヤー

 ブタネコのダミアが布団の中から「いってらっしゃい」とも「ようやるわ」ともとれる挨拶。

「おお、もう十二月やねんなあ」

 ほっこりお茶を飲んでるお祖父ちゃんに「「行ってきまーす」」と声を掛けて、師走初日の街に自転車を走らす。

 

 しもた!

 

 自転車を走らせて三十秒で後悔した。

 ハンドルを握る手ぇがめっちゃ冷たい!

 乗った最初はひんやりして気持ちええくらいやったんやけど、角を曲がって正面から風を受けるようになって、冷たさは痛いくらいになってきた。

「まあ、ハンゼイまでの十分ほどだから(^_^;)」

 片手運転にして、息をハーハーあててるうちを慰めてくれる留美ちゃん。

 見ると、留美ちゃんは普段通りの制服姿で、手ぇだけはきっちり手袋。

 く、くそぉ……

「片方貸そうか?」

 自転車を寄せてきて、親切に言うてくれる留美ちゃん。

「え、ええよ、大丈夫。すぐに温くなってくるしい」

 と、くるしいやせ我慢。

 で、目いっぱい漕ぎまくって、いつもより三十秒は早くハンゼイの駐車場へ。

 

「あ、暑い……」

 

 手は相変わらず、痛いぐらいに冷たいねんけど、ピーコートにマフラーして、耳にはイヤーマフまでしたうちは、もうユデダコみたいになってしまいました。

 けっきょく、マフラーとイヤーマフはカバンの中に、ピーコートは手に抱えて、電車の中では邪魔になりまくり。

「まあ、仕方がないよね。初めての冬なんだもんね(^_^;)」

 留美ちゃんは慰めてくれる。この慰めが嫌味になれへんのは、やっぱり人柄やと思う。

 

 学校で話したら、頼子さんは「アハハハハ」とノドチンコむき出しで笑う。

 SSシスターズ(ソフィーとソニー)は「フ」と鼻で笑うだけ。

「でも、自分の失敗をネタに、これだけ話題と笑いをふりまけるのは才能だと思うよ」

 メグリンは的確なんか残酷なんか分からん感想。

 

 で、帰りしなの下足室。

 

「あ、ピーコートは?」

「あ!?」

 留美ちゃんに指摘されて、教室まで走って取りに戻るうちでした!

 

 スポーツ苦手の話をするはずやったんやけど、また今度ね(^_^;)。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・40『風雲急を告げる視聴覚教室!』

2022-12-01 07:01:46 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

40『風雲急を告げる視聴覚教室!』  

 

 

 ガッシャーン!

 その時、木枯らしに吹き飛ばされた何かが窓ガラスに当たり、ガラスと共に粉々に砕け散った。視聴覚室の中にまで木枯らしが吹き込んでくる。

 タギっていたものが、一気に沸点に達した!

「ジャンケンで決めましょう!」

 全員がズッコケた……。

「青春を賭けて、三本勝負! わたしが勝ったら演劇部を存続させる! 先輩が勝ったら演劇部は解散!」

「ようし、受けて立とうじゃないか!」

 風雲急を告げる視聴覚教室。わたしと、山埼先輩は弧を描いて向き合う!

 それを取り巻く観衆……と呼ぶには、いささか淋しい七人の演劇部員と、副顧問!

「いきますよぉ……!」

「おうさ……いつでも、どこからでもかかって来いよ!」

 木枯らしにたなびくセミロングの髪……額にかかる前髪が煩わしい……
 
 機は熟した!

「最初はグー……ジャンケン、ポン!」

 わたしはチョキ、先輩はパーでわたしの勝ち!

「二本目……!」

 峰岸先輩が叫ぶ!

「最初はグー……ジャンケン……ポン!」

 わたしも先輩もチョキのあいこ……。

「最初はグー……ジャンケン……ポン!!」

 わたしはチョキ、先輩は痛恨のパー……。

「勝ったぁ!!」

 バンザイのわたし。

「む……無念!」

 くずおれる山埼先輩。

 と、かくして演劇部は存続……の、はずだった。

「クラブへの残留は個人の自由意思……ですよね、柚木先生」

 ポーカーフェイスの峰岸先輩。

「え……ちょっと生徒手帳貸して」

 イトちゃんの生徒手帳をふんだくる柚木先生。

「三十二ページ、クラブ活動の第二章、第二項。乃木坂学院高校生はクラブ活動を行うことが望ましい。望ましいとは、自由意思と解することが自然でしょう」

「そ、そうね……じゃ、クラブに残る者はこれから部室に移動。抜ける者は残って割れたガラスを片づけて、掃除。せめて、そのくらいはしてあげようよ。わたしは事務所に内線かけてガラスを入れてもらうように手配するわ。じゃ……かかって!」

 わたしは先頭を切って部屋を出た。着いてくる気配は意外に少ない……。


「ジャンケン大久保流……と、見た」


 すれ違いざまに峰岸先輩がつぶやいた。


 狭い部室が、広く感じられた。

 わたしと行動を共にした者は、たった二人。

 言わずと知れた、南夏鈴、武藤里沙。

 タヨリナ三人組の、乃木坂学院高校演劇部再生の物語はここに始まりました。

 木枯らしに波乱の兆しを感じつつ、奇しくも、その日は浅草酉の市、三の酉の良き日でありました……。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • まどかの家族      父 母 兄 祖父 祖母
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