大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・372『モデル!!』

2022-12-25 18:37:35 | ノベル

・372

『モデル!!』さくら    

 

 

 撮影の続き……

 

 日差しが合わない……と突っ込むのはソニー。

 登校風景を撮るんやけど、授業が終わってからの撮影なんで、お日様は、とっくに上がってます。

「これでは下校時の太陽高度だ、いくらプロパガンダ映像としてもずさん過ぎないか?」

「プ、プロパガンダ(;'∀')」

「もとい、広報映像としても」

「レフ版とか補助照明とかも使うから、ま、いいんじゃない(^_^;)?」

 留美ちゃんがフォロー。

 

「普段通りでいいからね」

 ディレクターのおっちゃん。

「校門入る時と、マリア様の前を通る時は、キチンとお辞儀!」

 長瀬先生は、うちが時々忘れてることを知ってる。

「じゃ、一回テスト。カメラ目線にならないでね。ライトやレフ版も直接見たら、しかめっ面になっちゃうから」

「「はい」」「了解」「Understood」

 で、テストをしてると、いつの間にか野次馬さんたちが集まって来る。

 なんちゅうても放課後すぐやしね。

 でも、たいていの生徒はええ子やから、邪魔をしたりはせえへん…………ねんけど、例外が数名。

 

「わあ! なにやってんの?」「ロケだ!」「リアル撮影!」「生徒会は聞いてないぞ!」「混ぜて欲しい!」

 

 頼子さんたちと、生徒会執行部と執行部のOGの人ら。そう言えば、生徒会の引継ぎが今日やったような(スマホでチェックした行事予定表にあった気がする)。

「長瀬先生、これ学校紹介の撮影ですよね?」

 真鈴会長、いや前会長が目をカマボコ型にして聞く。

「ああ、邪魔せんとってな」

「ねえ、先生、どうせだったら、わたしたちも入っちゃダメですか? 文化祭とかの企画で慣れてますから!」

 そう言えば、真鈴先輩は文化祭では大活躍やった、芝居の脚色・演出・主演、それに駅前パレードの企画も大当たりさせた!

「ああ、動画で観たけど、すごかったですね!」

「カメラワークも良かった!」

「演出ピカイチ!」

 撮影班もノッテきた。

「しかし、日程がなあ……」

 長瀬先生は、ちょっとしぶい。

「ちょっと、コンテ見せてもらえます!?」

 先生がウンという前に、ディレクターのコンテを覗き込むご一統様。

「会長、これなら、チョロいっすよ!」

「前会長だ、現会長は!?」

「このまま帰るのも寂しかったから、いいんじゃないですか」

「よし、では、新旧生徒会とファンクラブで、いっちょう行ってみよう!」

 

 おお!!

 

「乗っとちゃった……」

 留美ちゃん一人呆然として、さすがの長瀬先生も腕を組んで黙ってしまう。長瀬先生も文化祭の大成功は知ってるし、声優百武真鈴とヤマセンブルク王女のネームバリューは使えると思てる。

 それにね、ソフィーが領事館の用事で、この場を外してる。ソフィーも単に頼子さんのガードいう以外に領事館でも重要なポジションに就きつつあるとか。

 リアルにはクリスマスも過ぎてんねんけど、面白いから、もうちょっと続きます(^▽^)

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・64『七年ぶりの我が家』

2022-12-25 07:43:33 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

64『七年ぶりの我が家』 

 

 


 七年ぶりの「我が家」が見えてきた。

 遠くから見ると林のように見える。


 やや近づくと、木の間隠れに地味な三州瓦の屋根が見えて、人の住み家だと知れる。


 側に寄ると、幅二十センチ、高さ三メートルぐらいのコンクリートの板が二センチ程の間隔を開けて並べられ、それが塀になっている。

 コンクリートといっても、長年の年月に苔むし、二センチの間隔が開いているので威圧感はない。
 二センチの隙間から見える「我が家」は適度に植えられた木々によって、二階の一部を除いて見えないようになっている。
 わたしが生まれる、ずっと前に建てられた「我が家」は、なるべく小さく、なるべく目立たないことをコンセプトに、ひっそりと周りの景観に溶け込んでいる。


 妹のサキが生まれたころに、関西から著名な歴史小説家が、出版社の企画でお祖父ちゃんと対談しにきたことがあった。

「まるで蹲踞(そんきょ=偉い人の前で、しゃがんでする礼)した古武士のようですなあ……」

 そう言われたことが、ひどく嬉しかったみたい。

 何にでも興味のある少女であったわたしは、偶然を装ってその人に挨拶をした。

「お孫さんですか?」

 一発で正体がバレてしまった。

「おちゃっぴいですわ」

 お祖父ちゃんは、一言で片づけようとした。でも、その人はわたしの顔を見てしみじみと、こう言った。

「おちゃっぴいでけっこう。いろんなことに興味をお持ちなさいな。お嬢ちゃんは、とても賢そうな目をしていらっしゃる。賢い人というのは一つのことに囚われすぎることが多い。せいぜい、お喋りしまくって、多少抜けた大人におなりなさい」

 その後ろで、お祖父ちゃんが大笑いしていた。

 おおよその意味は分かったけど、できたら、その人に会って、もう一度話してみたかった。

 でも、その人は十数年前に亡くなられた。

 そんな思いに耽っていると、入り口の前についた。


「我が家」は、その規模の割に門が無い。


 間口二メーターほどの入り口。その上に申し訳程度の屋根がついているところ門と言えなくもないけど。

 小学生十人ほどを集めて質問したとする。

「これは何ですか?」
「はーい、入り口でーす!」

 その程度のもの。

 車は別に専用の入り口がある。五メートルほどの塀が電動で動く仕掛けになっている。

 ここから家の中にも入れるが、「我が家」は、入り口から出入りすることがシキタリになっている。

「あ、まだこんなの掛けてんの!?」

「はい、無頓着なようにも思えますが、旦那さまのこだわりと心得ております」

 西田さんが、入り口を開けてくれた。

 こんなものとは、表札のこと。わたしが小学校の図工の時間に作った木彫りの表札。

 その表札は「貴崎」とはなっていない。

「木崎」……となっている。

 後にサキが作ったものは「貴崎」で「木崎」の横に掛けてある。

 当然サキの方が木地が若く、そのまま年齢差に見えて気に入らない(;`O´)o。


「やあ、お邪魔しております」

 教室二つ分ほどのリビングには意外な人たちが揃っていた。今の声が理事長。


「そ、その節は……」

「ま、ま、まことに申し訳なく……」

 最初のが、校長先生。

 後の方が、バー……教頭先生。むろん乃木坂学院のね。

「直立不動にならないでください。どうぞお掛けになって……」

「いえ、先生のお許しを得るまでは……」

「いやあ、このお二人がどうしてもと、おっしゃるんでご同道いただきました。ま、お二人ともお掛けになって」

「いえ、いえ、やはり貴崎先生の……ね、校長先生」

「そんな、目上の方を立たせたままじゃ、わたしが座れません」

「いや……しかし」

「度の過ぎた謙譲は追従と同じですよ。ご両人はまだ自分でなさった事の意味が分かっておられん!」

 珍しく、理事長が色をなした。

「まあ、落ち着けよ彦君」

「やあ、すまん。俺としたことが」

 そこで、わたしが座り、やっと二人も座ってくれた。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 貴崎 サキ       貴崎マリの妹
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母
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