大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・371『モデル!』

2022-12-23 16:43:48 | ノベル

・371

『モデル!』さくら    

 

 

 一昨日の続き……

 

 掃除が終わって報告に行くと、長瀬先生はIDぶら下げたニイチャンらと振り返った……その目がこわい(; ゚゚)!

 こいつらや!

 という顔で睨んでくるやおまへんか!

 

 えと……なにやらかしたっけ(;'∀')?

 

 十六年の人生経験で、すぐに謝ることを考えてしまう。

 留美ちゃんは怖がって、あたしの袖を掴んで後ろに回るし、メグリンは自衛隊式の気を付けするし。

「なにか不備がありますか?」

 陸軍伍長のソニーは、手を後ろに組んで、上官に―― ことと次第では連隊長(校長)に申告 ――の姿勢。

「あんたたち、今日これからと明日の放課後空いてるか?」

 なんや、いよいよ軍法会議か(;'∀')!?

「空いてたら、頼みたいことあるんや」

 え?

 ちょっとズッコケる。

「実は、来年の学校案内作ってるねんけど、モデルやってくれる子がコ▢ナにかかってしもてな。日程は決まってるし、あんたらがやってくれると学校も、業者の人も助かるんや」

 もうコ▢ナになっても、どうっちゅうことはないねんけども、学校には出てこられへん。

「三人ともですか?」

 軍人らしく、状況確認するソニー。

「うん、二人は濃厚接触者やから、これも出席停止なんや。どうやろ?」

「しょ、承知しました!」

 三人の都合も聞かんと、さっさと承知するのは、やっぱりオッチョコチョイのあたしです。

「それで、どういうところを撮るんでしょうか?」

 これも軍人の娘、メグリンが作戦計画を確認する。

「じゃ、今の掃除してるところやってもらえるかなあ」

 カメラマンのオッチャンが提案。

 

 で、直したばっかりのホウキ持って、もっかい掃除してるとこから撮影。

 

 いまやったばっかりやったから、リアルに自然にやれた。

 ひょっとしたら、ハナから狙ってて、掃除終わるのん待ってたか?

「じゃあ、明日は……こんな感じで」

 オッチャンがタブレットで撮影計画を見せてくれる。

「送ってもらえますか?」

 ソニーが提案し、うちらはスマホにコピーさせてもらう。

 

「後ろからのカットもあるねえ……」

 コンテを見た留美ちゃんは、家に帰ってから、スカートにアイロンをかける。

「ちょっと前髪長いかなあ……」

 鏡を見ると、長いこと髪の手入れをしてないことに気付く。かと言って、美容院行ってる暇ないし。

 よし!

 鋏を出して鏡と睨めっこ。

「あ、止めた方がいいよ!」

 留美ちゃんに止められる。

「ちょっと切るだけやし」

「そう言って、ユイは失敗して恥をかいたんだよ」

「え、ユイて?」

「『けいおん!』の平沢ユイだよ」

 そう言って、留美ちゃんは動画サイトに出てるシーンを見せてくれる。

「さくらって、ちょっと似てるからね……」

 え、うそ!?

『けいおん!』は、うちも好きなアニメで、密やかに、秋山澪に似てると思てた(怖がるとこがメチャかわいい)。

「さくら、今回の22行目でも、自分のことオッチョコチョイって言ってるじゃな」

「え……あ、ほんまや(-_-;)」

 で、まあ、アニメみたいな失敗をすることもなく、二日目の撮影。

 それは、また次ね(^_^;)。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

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鳴かぬなら 信長転生記 99『指南街 滅びのロケーション』

2022-12-23 13:23:04 | ノベル2

ら 信長転生記

99『指南街 滅びのロケーション』織部 

 

 

 指南街は学問の町だ。

 

 周の文王が、この町に賢哲を見出して以来、この町の者が王や大臣の諮問に預かることが多く、いわば王たちの指南役たちの街ということで通称であった指南街が定着してしまった。

 くたびれてはいるが、街区や町の造りは風水に則って区画、配置され、家々も学者の家らしく南庭に面したところに書院が構えられているらしい。

 しかし、三国最大の魏は学問を権力の装飾程度にしか思っておらず、領地から離れた指南街には関心が無い。

 呉の孫策は大橋のパサージュに出させているように、商業には熱心だが、学問への関心は薄い。

 蜀は小国ながら、三国の中では最も好学の機運が高い国なのだが、酉盃や指南街に至るには函谷関を通らなければならず。また、諸葛茶孔明は、三国志の中では抜きんでた学才の持ち主で、他国から教えを乞う者が来ることはあっても、孔明自身が教えを乞うことは無い。

 

 その指南街の門を潜って唖然としてしまった。

 

 例えて言えば空の菓子箱。

 整然とした街区は偲ばれるのだが、それは残されてもなお清潔さを保たれている街路のみ。

 過半の家々は毀たれて礎石を残すのみ。あるいは取り壊し予告の立て札のみ真新しく、人の気配の消えた空き家。

 それでも、街の清潔を維持しているのは、僅かに残った住民たちの意地、あるいは心意気と賞賛すべきものだろう。

 我が家に帰って、名代の菓子店の箱を発見し、さては到来物と喜んで蓋を開けてると空っぽで、残った紙ナプキンや個包装のセロハンがきれいに畳まれているのを見出したのに似ている。

「再開発の波が迫っているんです」

 カメラ小僧の孫権が、愛機を構えることも無く、ポツリとこぼす。

 おそらくは、指南街再開発の噂を耳にして、すでに数百、数千枚の写真を撮っているのだろう。

 滅びの象徴としては、こんなにうってつけのロケーションは無いだろう。

「でも、あの築地の向こうに……」

 あとは自分の目で確かめろと言葉を濁す。

 

 その角を曲がると、その一角だけは元のままに残っていた。

 

「ここを整理したら、この指南街は完全に更地になってしまう」

「それは、いつなのかなあ?」

「この月末には……あとは『指南街』の名前はそのままにショッピングモールができるんだ」

「なるほど、お買い物の力強い指南役というわけね」

 パサージュをオープンさせたばかりで脅威だろうに、珍しもの好きの女学生のように目をクルクルさせる大橋。

 

 馬車の音を聞きつけたのか、奥まった家から二人の娘が出てきた。

 

「お待ち申し上げておりました」

「準備は整っておりますので、どちらでもお好きなところで撮影なさってください」

「お世話になります。撮影の準備をしてくれていた明花さんと静花さん、この家のお嬢さんだよ」

「この度は撮影のためとは言え、十二分なお世話を頂き言葉もございません」

「ああ、もう畏まったのは無し無し(^_^;)。えと、こちらは、義姉の大橋。義姉の商売仲間の越後屋さん。モデルの劉度さん」

「孫権、決めつけなくてもいいのよ、気が向いたら、わたしだってモデルになるからね(^▽^)」

「……という訳です(^_^;)」

 アハハハハ

「では、取りあえず中でお休みください」

「書院の方をご休憩と控室にお使いください」

「うん、よろしくね」

 さっそく庭の方から直接書院に向かう。

 書院に姉妹の母親、庭には助手らしい女性が控えていて、娘以上に慇懃に頭を下げた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟

 

 

 

 

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・62『凧の行方』

2022-12-23 06:22:58 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

62『凧の行方』 

 

 

 振り返ると、右のホッペにグニっと指がめり込む。

 ガキンチョがよくやるあれ。

 で、この幼児的ご挨拶は……薮先生。

「もう、先生ったら子どもっぽいことを」

「俺は、小児科の医者なんでな」

「わたし、今月で十六です」

「俺の所見じゃ、四捨五入して、まだ小児科の対象だ。ほら、あいつみたいにな……」

 先生の指の方角には、今まさに鳥居をくぐって境内を出て行く忠クンの背中が見えた。

「忠クン来てたんだ」

「たった今までいっしょだった。なんせ、この人混みだ。まどかに気づいたのもたった今」

「メールしてくれたら、いっしょに来たのに」

 自分のことを棚に上げてぼやいた。

「あいつ、ひどく思い詰めっちまってなぁ」

「え、それって……」

「あいつ、あの日から、家に通い詰めでよ。毎日親父の話さ」

「え……」


 先生は、ため息一ついて空を見上げた。


 彼方の空に凧が舞っている。

 多分隅田川……ひょっとしたら荒川の河川敷かも。いずれにしても、ここから見えるんだ。   

 かなり大きな凧……それもかなりの高み。


「俺も、三日目からは閉口しちまってな。雰囲気に弱いってのは俺が言ったことだけどよ、ちと度が過ぎる。まどかの演劇部で自衛隊の出てくる芝居やったんだって?」

「あ、ええ。去年のコンクールで、落っこちゃいましたけど」

「あれで、主役の代役やったんだってな。あいつには衝撃だったみてえだよ」

「あれは、わたしの無鉄砲で……落っこっちゃいましたし」

「しかし、立派なもだったって、審査員の先生もべた誉めだったんだろう」

「さあ……よく覚えていません」

 あれは、今では、わたしのカテゴリーの中では『やりすぎ』の中に入っていて、あまり思い出したくない。

「その話しの中で、自衛隊の少年工科学校が出てくるんだって?」

「はい、もう一人の主役の男の子が、それで自衛隊に入ろうと思っちゃうんです」

「で、やっこさん、その主役になっちまった」

「え……?」

 ナサバサバサ!

 たむろしていた鳩たちが、なにに驚いたのか予感したのか、慌てて飛び立っていった。

「忠のやつ、その少年工科学校に入りたいって言い出しちゃってよ。もっともあれは平成二十二年に改編されちまって、高等少年工科学校って言うんだけどよ。本書いた先生のちょっとした認識不足なんだろうけど、芝居ってのは恐ろしいもんだ。その認識不足や反戦なんてカビの生えたテーマでも、反面教師になっちまって。やっこさんの頭に残っちまった」

 風向きが変わってきたのか、凧が大きく揺れている。

「あいつは、良い物をもってるよ。気長に良い風が吹いてくるのを待ってりゃ……ありゃりゃ……」

 凧の糸が切れちゃったんだろう。凧はクルクル回りながらあさっての方角に飛んでいってしまった。

 二人で口を開けて、それを見ていたら、やがて、その風がここまで吹いてきた。

 わたしはジーパンだったけど、前を歩いていたオネエサンのスカートが派手にひらめいた。

 すかさず薮先生はそれをご鑑賞になられました(^_^;)。

 日本のクタバリゾコナ……お年寄りはお元気なもんだ。

 その、クタバリゾ……お年寄りたちは、これからのわたしたちに少なからずの影響をもたらすことになる。

 風が止むと、ポカポカとした陽よりになってきた。

 まるで気まぐれなわたしたちの心のように。波瀾万丈な一年を予感させるように。


 とりあえず、元日は、四捨五入して、目出度く迎えることができました。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母
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