せやさかい・366
スペインに勝ったぁ!!
……今度は分かってます。
キャプテンドレークがスペインの無敵艦隊を打ち破ったんと違って、FIFAで、日本がスペインに勝ったんです。
「スペインに勝ったら、キャプテンドレークを超えられるねえ!」
頼子さんが言うてました。
さすがは、ヤマセンブルグの王女さまです。キャプテンドレークやらスペインの無敵艦隊とか、うちはよう知りませんでした。で、分からん顔してたら、アホのうちでも分かるように説明してくれたから、ドイツとの勝負に続いてスペインに勝てるんは、キャプテンドレークが無敵艦隊を打ち破ったのと同じ、それ以上に値打ちのあることを。
これで、日本は決勝リーグに進出なんやから。
せやけど、今度は乗り切れへん感じがして、リビングには下りません。
前から言うてるけど、うちはスポーツは苦手、特に球技はね。
もともと体動かすのは嫌いやないんです。走ったり鉄棒したりプールで泳いだり。
せやけど、野球とかサッカーとかはあかんねん。
まだ、お父さんが居てたころ、たまの休みなんかにはいっしょに遊んでくれました。
お父さんもお母さんも、実はスポーツは好きで、走ったり鉄棒したりプールで泳いだりしてくれました。
学校の運動会で一等とった時は、たった一回だけやったけど、知り合いのレストラン連れていってくれて祝勝会までやってくれました。
せやけど、うちが球技をやるのは、本気では喜んでくれません。
学校でソフトボール習ったとき、ピッチャーの頭超えて二塁ベースの向こうまで飛ばして、それが嬉しくって家に帰って、お母さんに自慢した。
「へ、へえ、それは凄いなあ!」
一応は喜んでるみたいなんやけど、なんや、徒競走で一等とった時ほどには喜んでないんです。それどころか、目の奥には戸惑いの光があるみたいで――あ、うち、いらんことしたんかなあ(;'∀')――と、ちょっとビビったんです。
もう一回は、お父さんが居る時、三塁打打って、ホームベースまで行けるとか思たけど、吉田さんが「さくら、ストップ!」と叫んで、うちは三塁で停まった。うちの前に二塁まで出てた加藤さんは無事にホームイン。ツーアウトやったさかい、無理してホームベースに突っ込んだらタッチされてアウトになるとこやった。
うちは、三塁打打てただけと違って、ちゃんと全体の中でチームプレーができたことが嬉しかった。
せやけど、家に帰って喋っても、お父さんもお母さんも急に冷めてしもて「へ、へえ、それは凄いなあ!」と、戸惑うんです。
ほんで、そのあくる日に仕事に行ったきり、お父さんは帰ってこーへんかった。
それから、球技は苦手。
分かってんねん、世間の90%以上は、野球とかサッカーとか好きやねん。
せやから、阪神が優勝したりFIFAで日本が勝ったりしたら、いっしょ喜ばならあかんのです。
こないだ、ドイツに勝った時は、なんとか調子を合わせられたけど、今度は無理。
もう、午前五時近いし……「ごめん、テスト勉強してるうちに寝てしもた(^_^;)」ということにしとこ。
ほんま、ちょっとだけやけどテスト勉強できたしね。
ああ……なんや、いらんこと言うてしもた。学校行く時間まで、ちょっと寝ます。
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
- 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
- 夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
- ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
- 月島さやか さくらの担任の先生
- 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
- 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
- 女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首