大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・366『スペインに勝ったぁ!!』

2022-12-02 18:39:20 | ノベル

・366

『スペインに勝ったぁ!!』さくら    

 

 

 スペインに勝ったぁ!!

 

 ……今度は分かってます。

 キャプテンドレークがスペインの無敵艦隊を打ち破ったんと違って、FIFAで、日本がスペインに勝ったんです。

「スペインに勝ったら、キャプテンドレークを超えられるねえ!」

 頼子さんが言うてました。

 さすがは、ヤマセンブルグの王女さまです。キャプテンドレークやらスペインの無敵艦隊とか、うちはよう知りませんでした。で、分からん顔してたら、アホのうちでも分かるように説明してくれたから、ドイツとの勝負に続いてスペインに勝てるんは、キャプテンドレークが無敵艦隊を打ち破ったのと同じ、それ以上に値打ちのあることを。

 これで、日本は決勝リーグに進出なんやから。

 せやけど、今度は乗り切れへん感じがして、リビングには下りません。

 前から言うてるけど、うちはスポーツは苦手、特に球技はね。

 もともと体動かすのは嫌いやないんです。走ったり鉄棒したりプールで泳いだり。

 せやけど、野球とかサッカーとかはあかんねん。

 まだ、お父さんが居てたころ、たまの休みなんかにはいっしょに遊んでくれました。

 お父さんもお母さんも、実はスポーツは好きで、走ったり鉄棒したりプールで泳いだりしてくれました。

 学校の運動会で一等とった時は、たった一回だけやったけど、知り合いのレストラン連れていってくれて祝勝会までやってくれました。

 せやけど、うちが球技をやるのは、本気では喜んでくれません。

 学校でソフトボール習ったとき、ピッチャーの頭超えて二塁ベースの向こうまで飛ばして、それが嬉しくって家に帰って、お母さんに自慢した。

「へ、へえ、それは凄いなあ!」

 一応は喜んでるみたいなんやけど、なんや、徒競走で一等とった時ほどには喜んでないんです。それどころか、目の奥には戸惑いの光があるみたいで――あ、うち、いらんことしたんかなあ(;'∀')――と、ちょっとビビったんです。

 もう一回は、お父さんが居る時、三塁打打って、ホームベースまで行けるとか思たけど、吉田さんが「さくら、ストップ!」と叫んで、うちは三塁で停まった。うちの前に二塁まで出てた加藤さんは無事にホームイン。ツーアウトやったさかい、無理してホームベースに突っ込んだらタッチされてアウトになるとこやった。

 うちは、三塁打打てただけと違って、ちゃんと全体の中でチームプレーができたことが嬉しかった。

 せやけど、家に帰って喋っても、お父さんもお母さんも急に冷めてしもて「へ、へえ、それは凄いなあ!」と、戸惑うんです。

 ほんで、そのあくる日に仕事に行ったきり、お父さんは帰ってこーへんかった。

 それから、球技は苦手。

 分かってんねん、世間の90%以上は、野球とかサッカーとか好きやねん。

 せやから、阪神が優勝したりFIFAで日本が勝ったりしたら、いっしょ喜ばならあかんのです。

 こないだ、ドイツに勝った時は、なんとか調子を合わせられたけど、今度は無理。

 もう、午前五時近いし……「ごめん、テスト勉強してるうちに寝てしもた(^_^;)」ということにしとこ。

 ほんま、ちょっとだけやけどテスト勉強できたしね。

 ああ……なんや、いらんこと言うてしもた。学校行く時間まで、ちょっと寝ます。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・乃木坂学院高校演劇部物語・41『竜頭蛇尾』

2022-12-02 07:18:30 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

41『竜頭蛇尾』  

 

 

 竜頭蛇尾という言葉がある。

 小学六年の時に覚えた言葉。

 最初は、やる気十分なんだけど後の方で腰砕けになっちゃって、目的を果たせない時なんかに使う言葉。

 担任のシマッタンこと島田先生が、三学期の国語の時間に教科書全部やり終えちゃって、苦し紛れのプリント授業。その中の数ある四文字熟語の一つがこれだった。

「意味分かんな~い」

 クラスで一番カワユイ(でもパープリン)のユッコが投げ出す。

「……いいか、先生はな、野球選手になりたかった。それも阪神タイガースの選手になりたかった。そのためには、高校野球の名門校聖徳学園に入学しなければならなかった。ところが受験に失敗して、Y高校に行かざるを得なかった。ところがY高校の野球部は八人しかいない。入れば即レギュラー。でもなあ、Y高の野球部って三十年連続の一回戦敗退。それで悩んでたらさ、バレー部のマネージャーのかわいい子に誘われっちまってさ……」

 島田先生は、これで自分が野球選手になり損ねたことをもって『竜頭蛇尾』の説明をしようとした。

 でも、これで言葉の意味は分かったけど、大失敗。『お里が知れる』という言葉も同時に子ども達に教えることになった。

 それまで、先生は――維新この方五代続いた、チャキチャキの江戸っ子よ!――というのが売りだった。実際住所は神田のど真ん中だった。

 でも聖徳学園高校もY高校も大阪の学校。神田生まれで阪神ファンなんて、もんじゃ焼きが得意料理ですってフランス人を捜すよりむつかしいし、東京の人間の九十パーセントを敵に回すのと同じこと。それに自分自身がデモシカ教師であると言ったのといっしょ。野球の腕だって、PTAの親睦野球でショ-トフライを顔面で受けたことでおおよその見当はついていた。

 五代続いた江戸っ子だってことが怪しいのも、わたしは早くから気づいていたんだ。

 島田先生は、五年生の時からの持ち上がり。

「先生は、神田の生まれで、五代続いた江戸っ子なんだぜ」

 と、カマしたもんだから、家に帰って言ったのよ。

「ね、今度の担任の島田先生は神田生まれの五代続いた江戸っ子なんだよ!」

 すると、おじいちゃんが前の年に亡くなったひい祖父ちゃんを片手拝みにして言ったのよね。

「ほんとの江戸っ子は、そんなにひけらかすもんじゃねえんだぜ」

「だって、先生そう言ったもん」

 すると、おじいちゃんは紙に二つの言葉を書いた。

―― 山手線と朝日新聞が書いてあった ――

 純真だった(今だってそうだけど)まどかは、その紙を先生に見せて読んでもらった。

「ん、これ?」

「はい、読んでください」

「ヤマテセン、アサヒシンブン」

 と……発音した。ショックだった!

「ヤマノテセン、アサシシンブン」

 と……うちの家族は発音する。

 前置きが長い……これは、わたしがいかに『竜頭蛇尾』という言葉に悩んでいるかということと、シマッタン先生を始め小学校生活に愛着を持っていたかということを示している。

 ちなみに、はるかちゃんは体育だけこのシマッタン先生に習っていたけど嫌いだった。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • まどかの家族      父 母 兄 祖父 祖母
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする