大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・370『玄関前の大掃除』

2022-12-21 16:53:23 | ノベル

・370

『玄関前の大掃除』さくら    

 

 

 学校のやることに無駄はおまへん。

 

 昨日のクリスマスツリーで―― せや、うちはミッションスクールやったんや! ――と感激して、スマホで学校の行事予定を確認。

 ちなみに、去年まではプリントした年次予定表とかが配られてたんやけど、エコとか資源節約とかで、学校のウェブページで確認してくださいとのこと。

 まあ、余計なプリントが無くなるのはええことです。

 中学の頃は、貰ってそのままカバンに突っ込んで忘れてしまって、学年の終りにカバンの中身全部出して「あ、行事予定表!」と叫んで、全部済んでしもたモミクチャの予定表が出てきたりした。

 そこで分かったということもあった(留美ちゃんがちゃんとやってるんで、ズボラかましてるとこもあるんやけどね(^_^;))んやけど、まあ、どっちにしても、テレビの番組表かっちゅうくらい、ごちゃごちゃしてる行事予定表を見よういう気にはなりません。

 で、スマホで確認したら、23日『クリスマスページェント』と書いてある。

「あれ、クリスマスって、24日やんなあ」

「24日は……」

 留美ちゃんがスクロールすると―― 終業式 クリスマスミサ その他 ――と出てる。

「その他ってなんだろう?」

 メグリンが覗き込む。

 さらにスクロールすると―― ここをクリック ――と出てくる。

 このクリックサインは、半分くらいの日程にあるんやけど、メンドイのでほとんど見ません。

 まあ、差し迫って大事なことは担任のペコちゃんが、HRとかで念押ししてくれるさかいにね。 

 で、開いてみると、やっぱり、年末の学校の事務的な(施設点検とか帳簿の提出とか)ことが書いてあって、いろいろムズイ。

「奨学金……留学希望締め切り……他にもいろいろあるんだねえ」

 

 おい、そこ、さっさといくぞ!

 

 熱中してたら、ソニーの怖い声が飛んできた。

 そう、今日の午後は授業は無いけど、大掃除。

 堺の中学校でノホホンと過ごしてきた感覚では、どうせやるんやったら前日の23日にやったらと思うんやけど。

「外回りの掃除もあるから……ほら、雨天順延と書いてある」

「それに、先生たちの会議もいろいろあるみたいだよ。これは、先生も責任をもって監督しますってことだね……うん、指揮官先頭の心得だね!」

 お父さんが幹部自衛官のメグリンは、こういうところで感心する。

 

 こら! 何をしとるかっ!!

 

 国に帰ったら現役陸軍伍長、気合いの入り方がちゃいます。

 

 うちらの担当は玄関前から正門までの通路というか広場というか……植え込みとか入れたら500坪ぐらいはありそうな、通称玄関前のとこ。

「ああ、あんたらか。そこに道具一式出したあるから、チャッチャとやんなさい。終わったら報告!」

 めちゃ簡単な指示をして、監督の長瀬先生は玄関ホールに行ってしまう。

「先生、忙しいみたいだね」

 留美ちゃんが目を向けた先、事務所の前でIDカードぶら下げた人らとお話しにかかってはる。

 なるほど、うちらへの指示がおざなりやったんは、そういうわけか。

 長瀬先生は体育科の古株で、学年はじめに校内探検に夢中になってて怒られた(297『校内探検・玄関から真理愛館へ』)。怖い先生やけど、きっちりしたとこはさすがやと思てます。

「では、わたしが指揮を執る」

 ソニーが箒を構えてうちらの前に立つ。

「「「はい!」」」

 思わず気を付けしたのは、長瀬先生の余熱か、現役陸軍伍長の迫力か。

 うちらは、シャキンとして玄関前の大掃除にかかったのでありました。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら     この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌       さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観      さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念      さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一      さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)  さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保      さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美      さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子      さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー        ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか      さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下       頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首  

 

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・60『元日のマドハル放送』

2022-12-21 07:13:46 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

60『元日のマドハル放送』 

 

 

 

「ねえ、テレビに出たって、なんで言ってくれなかったのよ!?」

 そこから話しは再開されて、互いの近況やら、小規模演劇部の稽古の仕方などについてハッピートーキングは炸裂した!

 年明け早々、第二回目のマドハル放送。

 二人だけのビデオチャットを『ハルマド放送』『マドハル放送』どっちにしようってジャンケンしたら勝ったんだ(^▽^)!

 兄貴は、その後タキさんのアドバイスを元に、香里さんに連絡をとってイソイソと出かけていった。

 新宿にある名画座(料金が安いが選りすぐりの名作が観られる)で『結婚適齢期』を観たあと、同区内のあまり肩の凝らないフランス料理屋へ。コースも三種類ほど書かれている。あとは……十八禁の内容なので省略させていただきます。

 なんでこんなに詳しく分かっちゃったか言うと、兄貴は筆圧が高い(この時は、さらに気合いが入ってた)ので、メモ帳の下の紙にクッキリ残っちゃってんのよ。

 ジュディーガーランドが気になったので調べてみた。

 ライザミネリと親子だってことが分かった。『オズの魔法使い』の彼女、カワユイんだけど、一つ気になる……このツンとした鼻は、わたしの(数少ない)コンプレックスのひとつなのだ。

 ……で、思い出しちゃった。中学に入ったころ、髪をお下げにしてたら、はるかちゃんのお父さんが、こう言ったのよね。

「まどかちゃんて、ジュディー……いや、なんでもない」

 あれって、わたしのコンプレックスと知って、言い淀んだ……まあ、あまり深く考えないことにいたします。

 そして、はるかちゃんに最後にお願いした。

「女子三人、照明、道具に凝らないお芝居ないかしら?」

『すみれの花さくころ』を紹介してくれたけど、このお芝居は歌芝居なので歌がね……上手じゃないと。

 里沙も、夏鈴もね……だれよ、おまえも人のこと言えないって!

 大晦日は、シキタリ通りの年越し蕎麦をみんなで頂きました。香里さんもいっしょだったよ、タキさんのアドバイスはすごい!


 元日は大晦日ほどにはシキタリにはうるさくない。


 昔は、家族そろって、荒川区で一番の神社に初詣に行ったものだけど、兄貴やわたしが年寄りの時間に合わせられなくなってから(つまり朝寝坊)は、各自の時間に合わせて初詣。

 だれが一番早いと思う?

 おじいちゃん……いいえ兄貴なのよね。紅白歌合戦の最終組のころに出かけちゃった。むろん香里さんといっしょ。朝は、この兄貴の大鼾で目が覚めた。

 茶の間に降りて、兄貴を除く家族でアケオメ。

 ガキンチョのころは、振り袖なんか着たこともあったけど、今はジーパンにセーター。お雑煮をおかわりして二階の自分の部屋へ、


 パソコンを開くと、すでにはるかちゃんが待機してくれていた。


「ごめん、待たせた?」

「ううん、わたしも今落ち着いたとこ」

 元日のはるかちゃんはリビングに居た。

 ここから、お雑煮の実況中継。はるかちゃんちはタキさんに習ったレシピで関西風にチャレンジ。

「へえ、白みそに丸餅なんだ……お餅焼いてないんだね」

「へへ、では、はるかの関西風お雑煮の初体験……」

 実においしそうに食べる……こっちも負けずにおいしそうにいただく。

 ……視線を感じる。

「何やってんだ、おまえら」

 兄貴がパジャマの寝癖頭のまま覗き込んでいる。

「これが元日の現実の(韻を踏んでます)兄ちゃんで~す!」

「や、やめろって!」

 カメラで追いかけ回すと居なくなっちゃった。

 中継のあと、はるかちゃんは嬉しい約束をしてくれた。

 何かって? それは、まだナイショ。


『年賀状が来てるわよ!』

 お母さんの声で茶の間に降りる。


 わたしたちって、たいがいメールでアケオメしちゃうんだけど、二十通ほどはやってくる。

 アナログだけど、手書きの年賀状っていいものね。メールのアケオメで一見して一斉送信だったりすると、ダイレクトメールよりガックリくる。

 年賀状は、たとえパソコンでプリントしたのでも――今年もよろしく!――なんて手書きで書いてあったりっしてね、

「これは、この人が、わたしのためだけに書いてくれたんだ」

 と思えて、ホンワカするんだ。

 何通かは、演劇部を辞めてった人たちのがあった。

 ほら、テニス部に行ったA子からも来てた。覚えてる? 倉庫跡の更地で発声練習してたら、テニス部のボ-ルが飛んできて、投げ返したら、ムスっとして、態度わる~って感じの子。

―― クラブ逃げ出したみたいで、ごめんなさい。マリ先生のいないクラブが不安で……まどか達に押しつけたみたいだけど、陰ながら応援してます ――という内容。

 少し救われた気持ちになった。

 紀香さん、潤香先輩のお姉さんからも来ていた。

 先輩は相変わらずの様子……新学期が始まったら、またお見舞いに行こう。

 マリ先生は、あいかわらず正体不明。

―― クラブがんばってる? わたしは、わたしの道でがんばってます。乃木坂ダッシュの新記録はまだ? ――

 忠クンからも来ていた。最初から気づいていたんだけど、一番最後にまわした。

―― 謹賀新年。まどかに負けないよう頑張ります。大久保忠友 ――

 と、カナクギ流で書いてあった……よく見ると、下の方に虫が這ったような追伸。

―― 薮先生のところで感銘を受けて出しました。元日に間に合わなかったらごめん ――

 トキメキとガックリがいっぺんに来た……そして、しばらく眺めていたら心配になってきた。

 去年の忠クンは、あの火事の中からわたしを助けてくれたことも含めてなんだか突飛すぎるような気がする。

 なんだかアンバランス……気のせいかなあ?

―― まどかも人のこと言える? ――

 そんな声が、自分の中から聞こえてきて、うろたえた元日の朝でした。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母
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