〔無題(鉛の葉 桐)〕
葉が朽ち落ちても鉛に還元されることはなく、形を留めることすらない。
しかし、命ある往時を偲ぶ・・・作家の計らいである。
三枚の葉の形は酷似しているが三枚ともみんな異なる個性を持っている。
物言わぬ言葉を持たない葉、沈黙に生き沈黙のまま消えて行く。この寂寥に共感し、一枚一枚にその証を刻んでいる。
光合成で酸素を供給してくれる偉大な存在である《葉》にたいする拝謝・敬愛の念。
飛葉・・・空気の振動は秘かにも奏でられ、美しい音色を放つ。
この世界(地球)の歴史を支えてきた陰の立役者は無名・無冠のまま姿を消していく定めを黙って肯定する。
若林奮は一枚一枚に哀悼の意を捧げ、地球の緑(森林)を想い、秘かにもその時間を費やし謝意の墓碑を刻んだのではないか。
《飛葉》この命名に深く礼讃の念を抱くものである。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館