がらくた、役に立たず、葬り去って何とも思わない物、むしろ無いほうがスッキリする物の集合である。
これらを差し出したデュシャンの胸の底に在ったもの・・・深い悲しみと自己主張、怒りも少しあったかもしれない。
イカの甲(死骸)と一緒にされた小さな鳥かごに押し込められた数多の角砂糖型大理石は、似た者同士を擬人化したのではないか。しかし体温計が差し込んである、つまり生きていることを示唆しているのである。
LGBTトランスジェンダー…性に違和感を持ち、生まれたときとは異なる性別で生きる人、生きて行こうとする人を、シスジェンダーは理解できないが圧倒的多数のため、普通だと思い込んでいる。
世間から外された少数派の悲しみ、理解の外に置かれている人であることの主張・・・寡黙であるがゆえにあまりにも切実なこの提示(作品)を理解するのにずいぶん時間がかかったしまった。
《平等であるべき生の主張》である。
写真は『DUCHAMP』より www.taschen.com